無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第2回 | イエロージャーナル

花田庚彦氏(以下、花田) それで、いくらで2ちゃんねるを売ったの?(笑)

西村博之氏(以下、西村) 売ってはいないんです。シンガポールに作った会社に譲渡したという形にしただけです。

花田 となると、今の収入源は?

西村 データを使う権利をホットリンクという会社に契約していて、そこから収入を得ています。

花田 結構な額なの?

西村 まあ、結構というほどでもないですけど、そこそこです。

花田 アクセスが、かなりの数だろうからね。

西村 でも、2ちゃんねるは乗っ取られているので、どれぐらいのアクセスなのか、僕は分からないんですけどね。

※編集部註  2014年4月1日、西村氏は『昨今の2ちゃんねるの現状に関して。』との文書を発表し、2ちゃんねるが「乗っ取り」の被害に遭ったことを明かした。

 その後、15年9月に西村氏が、2ちゃんねるの管理人、ジム・ワトキンス氏に対して訴訟を起こすことを表明するも、16年8月にWIPO(世界知的所有権機関)に対する西村氏の申し立ては却下されたとの報道が行われた。

西村 WIPOの審理は、まだ続いています。商標などの問題です。そもそもWIPOとは例えば、トヨタが「toyota」というドメインだったとして、「toyota.mx」がメキシコで取られましたというときに簡易的な判断をする機関です。

 こちらの申し立てに対し、WIPOは「もともと関係があった相手が『乗っ取り』を行ったという主張で、事実関係も複雑なので、訴訟を起こして裁判所で争うべき」という結論に至ったんです。

本堂まさや氏(以下、本堂) 色々ありましたよね。ところで、昔はサンダルを愛用していたのに、今はクロックスに変わっています。出世しましたね(笑)

西村 はい、おしゃれになりました(笑) 先日、ラトビアに行ったんですが、その時にサンダルが必要になって、購入したんです。僕は今、ラトビアの住民権を持っているんです。

花田 そうなの!? 国籍は日本だよね? 

西村 国籍は日本です。ラトビアで発行してもらっているのは、住民許可証になります。ですから労働もできるんです。

花田 労働する気、ないでしょ?(笑)

西村 ラトビアはEU加盟国なので、住民権を持っていると、EU域内なら、どこにいてもいいんです。だから非常に便利ですね。

花田 難民みたいだね(笑)

西村 難民は住民許可証を持っていませんよ(笑)

編集部(以下、編) いつ頃、取得されたんですか?

西村 4年前ぐらいです。

編 きっかけは何かあったんですか?

西村 ネットで探して、面白そうだと思ったんです。

 例えばスペインにも同じようなシステムがあるんですが、基本的には滞在のための許可証ですから、半年など一定期間いなければならない、というルールがあります。ところがキプロスとラトビアは滞在しなくてもいいという珍しいものなんです。

 両国とも取得の条件は定期預金の口座作成なんですが、キプロスは銀行封鎖の危険性があったので、怖いと思ってラトビアにしました。

編 いくらぐらいを定期預金にしなければならないんですか?

西村 僕がやった時は20万ユーロでした。

本堂 20万ユーロは結構高いですよね。

花田 1ユーロって、円でいくらだっけ?

本堂 今なら110円から120円ぐらいですから、2000万円は越えますね。

西村 でも僕が定期預金を作った時の利息は4%でしたからね。

編 4%ですか!?

本堂 凄いですね。不動産投資よりリターンが大きい。

西村 ですから、とりあえず預けましたが、それだけで何か物凄く得をしているという、謎な状態になっています。

花田 遊んで暮らせる(笑)

西村 いいえ、ただの庶民ですよ(笑)

編 EUを自由に移動できて、なおかつ働くことも可能なんですね。

西村 働けるのはラトビアだけです。とはいえ、ラトビア住民として働くので、仮に他国で仕事をしたとしても、そんなに問題は発生しない、というのがEUの仕組みなんですね。

(第3回につづく)