『イノサンルージュ』9巻 64話のあらすじとネタバレと感想!試し読みはコチラ♪

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あらすじとネタバレ

1793年1月21日の朝、革命裁判によって王位を追われ、ルイ・カペーと呼ばれるようになった男が革命広場のギロチンに送られる朝がきました。

美しい妻マリー・アントワネット、そして可愛い王子と王女、未婚の妹という家族をタンプル塔の幽閉所に残して、自ら威厳のある姿で処刑に臨んだルイ・オーギュスト(ルイ16世)でしたが…彼を敬愛していたシャルル・アンリ・サンソンは『王』を手にかける恐ろしさに萎える心を律してその最期を見届け、そして首を落とし『王が存在しなくなった新しいフランス』を亡きルイに見せようと、彼の美しい首を高く持ち上げるのです。

その時、彼らを取り巻く群衆から沸き起こる『共和国万歳』の声は止まらず、しかし醜悪なことに『国王の血が市民に幸福をもたらす』というデマに踊らされた人々が処刑台に殺到するなか、元国王の首とその遺骸を守り抜こうとして、シャルルたちは馬車で狂気に満ちたパリの街を疾走していくのでした。

ルイ・カペーは自らを『優柔不断な王だった』と振り返り、そんな自らの人生を振り返って、押しとどめられない革命を息子ルイ・シャルルの時代に先送りすることを快しとせず、殉じるかのように処刑台に上がることを決意し、その身をサンソンたちに委ねたのでした。
その行為が、ルイ・シャルルを『身分』から解き放ち、自由に新しい時代を生きていけることを信じていたのです。

しかし、そんな志も、国民を思う彼の気持ちも、全てが踏みにじられるように、群衆は処刑台に群がり、滴り落ちる王の血を、服を、髪を、ボタンのひとかけらを『今日しか手に入らないお宝』としてむしり取ろうと殺到してきたのです。

そんな『王』の姿とあまりに対照的な市民らの暴走___『王』の死を境に繰り広げられる狂態に、シャルルは絶望し、ギロチンの鋭い歯で切り落とされてしまった美しい首を抱きしめるしかありませんでした。

大きなうねりとなって流れている歌は『ラ・マルセイエーズ』___のちのフランス国歌(現在も)です。
その歌詞に込められた生々しいエネルギーの源は、この猛り狂う市民たちの姿そのものだったのかもしれません。

その恐ろしい光景を眺めて、革命家マクシミリアン・ロベスピエールとルイ・アントワーヌ・サン=ジュストはその醜悪な様子にため息をつき、『あれはまだ生まれたばかりの幼子』というのです。
それは人であったのか、国そのもののことであったのか。フランス共和国は混迷の真っ只中にあったのです。

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感想

美麗で緻密・細密な絵で知られている坂本眞一さんが、フランス文学者の安達正勝さんの『死刑執行人サンソン』をもとに描いている『イノサン』シリーズ最新刊…とうとうフランス革命の大きな節目がやってきました。

シャルル・アンリ・サンソンの一族は代々“王の処刑人”を務める家柄であり、その当主は“ムッシュー・ド・パリ”を名乗り、国王のために罪人を処刑することを生業としてきたのです。

貴族・平民の身分によらず、殆どの人々に忌み嫌われてきたその仕事ではありましたが、彼とその身内は皆その存在意義を噛み締めて、国王のために、と首を斬り、体を裂くようにして様々な方法を用い、苦痛を伴いながらも抑止力にも用いようとするかのように、罪人たちを公開処刑してきたのです。

不穏な時代にギヨタン博士が作り出したギロチンを用いるようになり、誰でも“簡単に”首を落とすことができるようになったのですが。

日本人には理解しがたいことながら、その残酷なシステムは『誰でも簡単に対象に苦痛を与えることなく瞬時に首を落とすことができる』として、むしろ『人道的』として歓迎され、その形状を検討している間には、まだ自らがそれにかけられることになるとは予想もしていなかった当時の国王ルイ16世が助言まで行っていた、というのです。

往年の名作である『ベルサイユのばら』の影響から、日本におけるフランス革命のクライマックスのイメージは、1789年のバスティーユ事件を強く思い出しますが、実際にはそれ以降の流れの方がより一層暗黒の歴史として恐怖政治の時代となっていくのです。

長い間虐げられてきた国民(平民=市民階級)が怒りに燃えて理性を失い、しかし国家としてゆるぎない議会や裁判というシステムを確立していったことから“革命”のうねりは押し戻せるものではなくなり、国王とその一家は地位も権力も失って、とうとう処刑されることになってしまったのです。

実在のルイ16世は、どちらかというと愚鈍な王というキャラクターに書かれることが多いのですが、坂本さんが描く彼は容姿の美しさだけでなく、その心映えも素晴らしい人物として構築されていました。

その彼への崇敬を胸に秘めて生きてきたサンソンは自らの手で彼を処刑することになった哀しみと、変わりゆく国の姿を見届けようとする心に揺れていたのです。

しかし、悲劇はまだ始まったばかりでした。
処刑人としてシャルルがそれまでに断罪してきたのは生涯かけて200名。
ここから展開していく恐怖政治の中で彼とその一族がギロチンにかけていくのは3000名を超えていたとも言われています。

そして、王を追うように処刑されたその妻マリー・アントワネットがこの作中では大変繊細なキャラに描かれており、その子供たち、ルイ・シャルルとマリー・テレーズのかわいらしさは特筆されるべきものです。

史実としても良く知られている彼らの悲劇、ことに王子ルイ・シャルルに向けられる市民と革命家らの憎悪の片鱗が見え始め、後の彼の哀しい最期に思いをはせていくのです。

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