【無料記事】東芝「会見&広報契約社員募集」の異様 | イエロージャーナル

 創業以来最大の危機に直面する東芝。危機を乗り切るため東芝は本社で記者会見を年末の12月27日と2月14日に開いた。しかしその評判が余りに悪い。メディア関係者は「とにかく異様な会見だった」と口を揃えるのだ。

■―――――――――――――――――――― 【写真】東芝公式サイトより

(http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm)

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 2016年12月27日未明、NHKが「東芝の米国子会社が巨額減損」と報じた。それを受け同日夕方、東芝の綱川智社長の会見は開かれた。

 東京・浜松町の東芝ビル39階の最上階。大会議室の会見場に着いた記者は不思議な光景を目撃した。

「あれ? 何で1番前の席が空いているの?」

 綱川社長や経営陣が着席する目の前の席である。訝しく思いながら後方の席に座る。会見直前、ある人物が東芝の広報担当に付き添われ一番前に着席した。全てを悟った記者は思わず「はあ」と溜息を漏らした。

 会見終了後「この会見は記者以外にも証券アナリストが出席していた」ことを知る。そして前列の席はその証券アナリストたちのためだったとも理解した。

 あろうことか東芝は、重大な会見だというのに、経営陣へ優しい質問をするアナリストたちを前に座らせ、記者たちと、厳しい質問を行うアナリストは後ろに追いやったのだ。当然、記者たちは抗議した。

「アナリストを同じ会見に呼ぶのまでは許せる。しかし席を用意するのはおかしくないか」
「先着順にすべきだ」

 東芝はこの時点で、米国の原発の減損額を4000億円弱と見積もっていた。この金額なら17年3月期決算の債務超過の転落はないからだ。

 しかし年が明けた1月8日と19日に内部告発が届く。「経営陣による『不適切なプレッシャー』があった」と。ここで事態は急展開。「一気に膿を出さなければ持たない」となり、7100億円の減損に追い込まれ債務超過転落が避けられなくなった。

 その内容を公表予定だった2月14日、東芝は決算発表を延期する。しかし集まった記者からの突き上げもあり同日18時30分に東芝ビルでの会見を設定した。そして会場に到着すると、

「おいおい、また前の席が空いている」

 そう。再びアナリスト向けに一番前の席を用意していたのだ。会社存亡の危機に立っていながら、経営陣への配慮を忘れない。これがビジネスマンの鏡なのか。

 前列に陣取るアナリストたちは一切質問をしない。ただパソコンを打ち、ノートにペンを走らせるのみ。質問は後列の記者とアナリストだけだった。

 会見が終了した2日後、転職情報サイト「DODA」に東芝が広報職の契約社員を募集したことが話題になった。「メディアコントロールできる人材」が欲しいというものだ。この募集を見た記者は会見の異常性を心から理解することができた。結局のところ、東芝は心底、メディアが怖いのだ。

 だから東芝は、この後に及んでもメディアを管理したいと考えている。しかしながら、こういう態度こそが、かえって記者の怒りを買うのだ。広報としての能力はゼロどころかマイナスと言っていいだろう。

 会見に出席した記者は「正直、屈辱を受けた印象だ」と口を揃える。仕切り直しとなった3月14日の決算会見はどうなるのか。興味津々で記者たちは待っている。

(無料記事・了)