【無料記事】ソニーの平井一夫社長が日経幹部に「FT買収」は失敗と「看破」

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 日本経済新聞社の中で、秘かに話題になっているエピソードがある。

 2016年秋、ニューヨークで安倍晋三首相も参加した会合でのこと。ソニーの平井一夫社長が日経の幹部に、英フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収したことを酷評したというのが、その内容だ。

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【写真】日経公式サイトより
http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/
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 日経は15年、FTを約1600億円で取得したが、ソニーも1989年にコロンビア映画(現・を約5000億円で買収したという〝共通点〟がある。

 日経の関係者によると、ソニーがコロンビア映画を買収した際、日経が「戦略性がない」などと批判する記事を相次いで掲載していたことを、平井氏が言及したらしい。

 売りに出されていたほどだから、当時のコロンビア映画は多額の負債を抱えていた。買収総額は想定を超え、48億ドルに膨れ上がったという経緯がある。80〜90年代にソニーを率いた大賀典雄氏も、日経新聞の『私の履歴書』で次のように振り返っている。

<コロンビアの買収はもともと社内でも否定的意見が多かった。私は映像資産の将来価値を確信していたが、買収額と後の評価額との格差を埋めるため、1994年9月中間決算で暖簾代の一時償却など3000億円の連結赤字を計上することにした>

 買収の苦労を率直に綴っているが、それでも最終的には旧コロンビア経営陣を追い出し、立直しに成功している。

 平井社長から「日経には『戦略性がない』と書かれましたが、今、あなたたちに、そっくりそのまま、その言葉を返します」と言われた日経幹部は「返す言葉もなかった」(関係者)という。

 平井社長の大人げない意趣返し──と思う方もおられようが、当の日経社員が指摘は正しいと認める。

「平井さんに言われるまでもなく、社内でも、『いったい何のためにFTを買収したのか』という疑問が充満しています」

 日経はFTグループの株式を取得し、合計発行部数は米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの2倍強になると強調し、「世界的な新聞グループになった」と胸を張った。

 しかしFT関係者によると、日経はFTの記者が買収に反発して会社を去ることを警戒してか、FT紙面にはまったく口出ししてこないという。社員の交流はたまに行われているが、一部の英語のできる記者に限られている。FT関係者はこう指摘する。

 「日経記者とFT記者が連名で1つの記事を書くとの試みもありましたが、長続きしていません。どうも日経には、FTに対する遠慮があるようです。このままでは日経は、FTを手放すことになるだろうとの見方が出ています」

 日経関係者も「平井さん、いいことを言ってくれたと思っている社員は少なくない。経営陣が変わらないと、荒療治はできないでしょうね」とぼやくのだ。

(無料記事・了)