【無料記事】春画は〝口実〟『週刊文春』編集長「更迭バトル」の真相──キレた上層部と擁護した現場

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 ご存じの方も多いだろうが、『週刊文春』の新谷学編集長が職場に復帰し、さっそく立て続けにスクープを連発している。「ベッキー&ゲス」は現在でも多くのメディアが取り上げ、「センテンス・スプリング」は〝裏流行語大賞〟確実と見られている。
 更に口利き疑惑で甘利明・前経済再生相のクビも取り、こちらは現在進行形のニュースとして動いている。編集長が替われば、こうも誌面が違うのかと驚かされる。昨年、「3カ月の休養処分」が下されたことなど、既に忘れられているのかもしれない。

 週刊文春は日本ABC協会(雑誌販売部数公査機構)の調査で、週刊文春の発行部数は週で約42万部。総合週刊誌部門で断トツのトップだ。
 そんな絶好調週刊誌のトップが処分されただけでも驚きなのに、その内容も極めて意外、いや不可解なものだったため、更に大きな関心を集めてしまったわけだ。
 改めて振りかえれば、週刊文春は10月8日号の巻末グラビアで、『空前のブーム到来! 春画入門』の特集記事を掲載。葛飾北斎らの春画3点を見開きで計6ページにわたって紹介した。
 ところが10月8日、文藝春秋社は「配慮を欠いた」として新谷編集長を3ヶ月間、休養させたことを明らかにした。ニュースを聞いた人の中には、唐突という印象を受けた向きも少なくなかったのではないか。
 何しろ、このグラビア特集は永青文庫(東京都文京区)で開催された春画展と連動したものであり、「パブ記事」と言ってもおかしくない軽い内容。しかも、この展覧会にクレームが寄せられたという報道は一切なかったのだ。
 実際、文春側は各社の取材に対して「外部からの要請ではなく、あくまで社内判断」だと回答している。とはいえ、処分の理由だとする

<読者の信頼を裏切ることになったと判断した。3カ月の間休養し、読者の視線に立って週刊文春を見直し、今後の編集に活かしてもらうこととした>

 この発表を信じられる社会人は皆無だろう。特に「読者の視線に立って」の文言は、こんなものをわざわざ挿入しなくとも……と違和感を覚えた方も多かったのではないか。

■興味深い「編集長ブログ」

 一方で、産経新聞などが既に報じているが、インターネットに掲載された編集長ブログに、興味深い記事があったのは事実だ。新谷編集長の名前で「電車内の中吊り広告にクレームが入った。詳細はあえて触れないが、一部路線では広告の春画の部分が黒く塗りつぶされている」などと記されていた。
 古い話ではあるが、かつて週刊文春は94年、JR東日本の革マル派問題を追及するキャンペーン記事の連載をスタートさせたところ、JR側から中吊り広告の掲示拒否と、キヨスクでの販売拒否という〝禁じ手〟の報復を受けたことがある。
 公共交通機関を担う企業が言論封殺を行ったと、文春に限らず広範な批判が巻き起こったものの、その効果は凄まじかった。何しろ当時はネットもない時代だ。中吊り広告と駅売りは週刊誌の生命線。たちまち週刊文春の部数は減少し、JRにおける革マル派問題は当時の「マスコミタブー」の筆頭に挙げられるまでになった。
 こうした一連の逆境が、文春では未だに〝古傷〟として残っており、それが今回の過剰反応の原因になったのではないか──こんな仮説を出版関係者に当ててみたが、「今の時代、中吊り広告を見て、週刊誌を駅売りで買う読者がどれほどいると思っている。新谷さんへの処分とは全く関係ないよ」と完全否定されてしまった。

■春画が原因ではないと断言する関係者

 それでは、やはり春画が問題なのだろうか。あのグラビア特集で本当に、文春の品位が汚されたのだろうか。
 掲載された歌川国貞の『艶紫娯拾余帖』は男女の結合部が露になり、葛飾北斎の『喜能会之故真通』は、全裸になった海女の局部に大ダコが吸い付く官能作品であった。
 とはいっても、回収騒ぎになったわけではない。2年前には『週刊ポスト』(小学館)『週刊現代』(講談社)が競って春画を特集したことがあったが、このときも別に当局のお咎めはなかった。
 おまけに、警視庁は10月下旬、春画を掲載した『週刊ポスト』『週刊現代』『週刊大衆』(双葉社)『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)の4誌に対して口頭で指導を行ったが、文春は含まれていない。そもそも、この指導に対しても、かなりの異論がメディアで報じられた。とてもではないが、新谷編集長に処分を下すだけの不祥事とは考えにくい。
 当時、文春の内情をよく知る関係者は次のように打ち明けていた。
「春画の特集に対し、読者からのクレームさえ一切ない。要は、新谷体制を快く思わない経営幹部が、春画を口実に新谷を追い詰めた、という話なんだよ。編集長を更迭されたんだから、今でも誰も信じていないだろうけれど、3か月後に新谷が編集長に復帰する可能性は正真正銘のゼロだ」
 可能性は0%──これを跳ね返して、新谷編集長は復帰したというわけだ。

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【写真】文藝春秋の本社
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