【無料記事】小池都政の「アキレス腱」か「上山信一・半田晴久」両氏 | イエロージャーナル

 6月23日告示、7月2日の投開票が予定されている東京都議会選挙。台風の目は言うまでもなく、小池百合子知事の「都民ファーストの会」だ。報道によると、全選挙区に候補者を60〜70人程度、擁立するとされている。

 都知事当選後、豊洲新市場移転問題、東京五輪会場問題、そして都議会の「ドン」らとのバトル、百条委員会……と、「小池劇場」は連日、メディアで大きく報道された。

 今は若干、過日の勢いを失ったようにも見えるが、それは一時的なものだろう。都議選が近づくにつれ、劇場は再び活況を呈するのは疑いようもない。

 高い支持率を維持し、小池都政は磐石のように思える。果して、本当に「アキレス腱」や「弁慶の泣き所」すら存在しない、ロボット的な強さを実現しているのだろうか。

 確かに、小池知事自身は、それだけの〝豪腕性〟を持っているかもしれない。しかしながら、政治は1人では行えない。小池知事の周囲には、ブレーンなど様々な関係者が蝟集している。そうした人々も都知事と同じように「無敵」であるはずもない。

「安倍一強」と言われていた国政でも、安倍首相本人ではなく、昭恵夫人が原因で、思わぬ躓きが生じてしまった。類似の可能性が、小池都政にも存在する。まず1人目は、小池知事が結成した「都政改革本部」のうち、まとめ役たる特別顧問に就いた上山信一・慶応大教授だ。

 上山氏の存在は、関係者の間で憶測を呼び続けている。なぜか。実は上山氏、橋下徹・前大阪市長の「ブレーン」をしていたことで知られる人物なのである。

■―――――――――――――――――――― 【写真】たちばな出版公式サイトより (http://www.tachibana-inc.co.jp/index.jsp)

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 関係筋が解説する。

「上山さんが橋下さんをけしかけて運動を開始させたにもかかわらず、結局は橋下劇場の幕引きにもつながってしまったのが、皆さんご存じの大阪都構想です。府と市を統合し、市内を東京23区のように特別区で再編成しようとしたわけですが、狙いは二重行政の解消と、東京一極集中によって地盤沈下が激しい大阪の都市力の再興、道州制導入の入口などと言われていました」

 しかし2015年の住民投票により、大阪都構想は僅差の末に否決されてしまう。この上山氏が今度は東京都に乗り込んできたわけだ。

「上山さんが小池知事と組んだのは、ずばり大阪リベンジだと言われています。小池新党の政策に道州制の導入を加えさせ、大阪で果たせなかった『明治以来の中央集権打破』を実現させようというわけです」(関係者)

 1980年に当時の運輸省に入省した上山氏は6年後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして活躍を始めた。地方行政に経営コンサルタントとしてのノウハウを導入し、福岡市や神奈川県逗子市などで行政改革に手腕をふるった過去を持つ。別の関係者が言う。

「小池知事が立ち上げた都政改革本部には、上山さん以外にも、橋下さんの政策立案ブレーンだった鈴木亘・学習院大教授もメンバーに入っています。大阪では、貧困地域対策など次々と斬新な策を打ち出しました。このほかにも都政改革本部には、大阪維新勢力と近い経営コンサルタントなども入っています。つまり、大阪では成就しなかった〝夢〟を、今度は東京でやろうとしているのではないのでしょうか」

 ちなみに橋下氏の小池知事に対する態度は固く、厳しい。かつてのブレーンの本音が見えるからなのだろうか。

半田晴久=深見東州氏も小池知事の「ブレーン」

 更に半田晴久氏ともなると、更に馴染は少ないだろう。

 例えば都内私鉄の車内で「深見東州」なる人物の書籍を紹介する「たちばな出版」の広告をご覧になったことはないだろうか。この深見東州氏は「芸術活動」や「宗教活動」を行う際の〝通名〟だとされ、その本名が半田晴久氏なのだ。

 たちばな出版は、実質的に半田氏がオーナー。更に新興宗教・ワールドメイトの総裁や、予備校・みすず学苑の代表も務めている。

 ここまでなら、相当な「好事家」ならご存じかもしれない。

 だが、そんな「深見東州マニア」でも、氏が福岡にある在福岡カンボジア王国名誉領事館の名誉領事という〝公職〟の持ち主だとは知らないのではないだろうか。

 更に、この半田氏のもとには、大きな集金力を見込んでか、与党、野党の有力政治家らが集い、たちばな出版の顧問職を引き受けている。

 そのなかの1人が、小池劇場への飛び入り参加で、にわかに復活の狼煙をあげんとする、元東京都知事の猪瀬直樹氏だ。

 猪瀬氏と言えば先頃も、小池塾の講師に呼ばれ、「敵は誰か」など、小池知事への援護射撃とも取れる発言で、メディアで話題になったのは記憶に新しい。

 とはいえ、テレビ出演でギャラを得たとしても、それだけで生計を立てるのは難しい。これまでは80〜100万円とされる講演料があったが、今は昔の話だ。では現在、猪瀬氏の「懐事情」はどうなっているのだろうか。

 猪瀬氏は現在、半田氏がオーナーの、たちばな出版と関係を密にしている。半田氏は安倍首相とも近しいとされ、自民党議員だけでも、十指に余る人数を顧問に採用している。

 つまり「政界の新しいタニマチ」として頭角を現しつつあるのだ。新興宗教のワールドメイトではなく、たちばな出版という出版社を選ぶところも、政治家に対する配慮が行き届いている。政治家からすれば、新興宗教とは係わり合いになりたくないだろうが、出版社なら何の心配もない。

 自民党は与党ながらも、政治資金パーティーの収入は目減りしている。党本部への大口献金があっても、代議士の懐が潤うわけではない。景気改善が謳われても庶民の足下までは好況感が巡ってこないアベノミクスの実態さながらだが、だからこそ、個人で潤沢な資金を差配できる「ワールドメイト総裁」にもすがらざるをえないのだろう。

 与党、野党の代議士らが群がる半田の新たな軍門にくだった猪瀬直樹の目下の野望は、「来夏の都議選以降の都政顧問」への復帰であると囁かれている。

 いまだ徳州会の5000万円借用で公民権が停止しており、副知事など公職就任がかなわないが、大坂府同様に「顧問職」に就くことで復活の礎を着実に積み重ねたいというのが猪瀬の本音だという。

 ご存じの通り、小池知事は少なくとも現時点で、国政レベルでの「自民党決別」は行っていない。全面的な敵対関係にあるとされる都政とは対照的だ。

 となれば、「右手に上山氏=維新、左手に猪瀬氏=自民」という両面作戦は、非常に効果的だろう。どれほど都議選で圧勝しても、左手を離さなければ、時期首相候補として名が挙がり続ける。実際に総理総裁を目指さなくとも、候補者にカウントされることは小池知事にとって計り知れないプラスになっている。

 しかしながら、上山氏にも、猪瀬氏にも「アキレス腱」が存在するのは、これまでに見て頂いた通りだ。そもそも、新党を立ち上げながら、自民党とも関係を保つという小池知事のウルトラCも、いつまで続くのかは分からない。

 小池知事の「未来」は、思われているほどに明るくなく、茨の道というのが事実だ。知事は信じられないバランス感覚で平均台の上に立って歩き続けているが、本人ではなくブレーンのせいで転落する可能性は常に存在する。

(無料記事・了)