【完全無料記事】第106回きのうの1面〈舛添辞任の前日〉6月14日(火)の一般紙から

1men2016-06-15 12.24.44

 私たちは6月15日(水)に舛添都知事が辞任したことを知っている。そんな観点から6月14日(火)朝刊のテレビ欄を見てみよう。具体的には、この日の午後に舛添氏は辞任勧告を拒否し、とうとう不信任案は提出されなかったという1日だったのだが、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。

▽あさイチ(NHK)
・①肩こり 腰痛・むくみも改善! 驚き! 簡単ストレッチ かけっこも速くなる!?
・②極上! 〝ふりかけ〟最前線

▽スッキリ!!(日本テレビ)
・優香結婚 公造が調査! お相手の36歳個性派俳優の素顔
・疑惑追及! 舛添知事VS議員
 ①記憶にない…連発で深まる謎
 ②辞任避けられず? 
・被災地 石原軍団&木村拓哉ら子どもと交流で母親が涙

▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日)
・舛添知事
 ①美術品また新疑惑が!! 集中審議で報告書に矛盾も
 ②潮目変わった…不信任案に与野党は?
・みそ汁に薬物!! 夫死亡で妻逮捕

▽白熱ライブ・ビビッド(TBS)
・舛添知事…深まるナゾ〝ラストチャンス〟の集中審議を徹底検証! 危機管理は
・優香結婚 相手はアノ実力派俳優
・田丸麻紀プチプラ服

▽なないろ日和!(テレビ東京)
・快適生活 今選ぶべきマンション
 ①気分は高級マンション!! 大浴場&カラオケ完備
 ②バリアフリー最前線 シニアも安心!!

▽とくダネ!(フジテレビ)
・①舛添氏「全て給料を辞退…」自民都議〝追求〟甘く〝進退〟各党の思惑は
・②小林麻央33歳再入院 海老蔵〝家族への愛〟乳がん闘い…応援の声

 では新聞はどうだったのか。2016年6月14日付(火曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。

■――――――――――――――――――――
【写真】日本共産党都議団のビラより
■――――――――――――――――――――

【1面見出し】
▽読売新聞(約926万部)
「舛添氏辞職論強まる 不信任案 公明も提出検討 野党きょう提出 舛添氏「リオまで猶予を」」
▽朝日新聞(約710万部)
「舛添知事 辞職不可避 自公、不信任案提出も 集中審議 本人は「時期猶予を」」
▽毎日新聞(約329万部)
「自民、辞職要求へ 舛添氏「進退、リオ後に」都議会集中審議」
▽日経新聞(約275万部)
「世界株安・円高が進行 英離脱警戒 マネー萎縮 テロ・政治リスク意識」
▽産経新聞(約161万部)
「舛添知事 辞職不可避 公明、不信任案提出へ 自民、自発的な決断促す 死亡の出版社社長 面会か」
▽東京新聞(約51万部)
「舛添知事 従来説明繰り返す 5会派 辞職要求 集中審議 自民は言及せず 給与全額返上の意向 「不信任案 リオ五輪後まで猶予を」 ホテル面会者名語らず」

 日経以外の5紙は舛添問題となった。
 その5紙の中で、見出しを事実の伝達に留めたのが東京と毎日で、最も無難と言える。
 他の3紙は辞職について踏み込んだが、最も巧妙な手を使った、もしくは誤報を恐れて真っ向勝負を避けたのが読売だろうか。
 たとえ、この段階で舛添都知事が議会を解散させても、「辞任『論』」が強まっていたのは間違いないからだ。週刊誌や東スポの見出しと似たテクニックだろう。
 朝日と産経は「辞職不可避」と直球をど真ん中に投げた。昨日の夜あたりには誤報だったかと焦った関係者はいなかったのだろうか。
 日経ブロックが前回に発動したのは4月28日の紙面。他5紙が三菱自動車の燃費不正問題を取り上げた中、IHIの記事を載せて以来となる。

【コラム】
▽読売・編集手帳
(舛添都知事政治資金問題)

「夏目漱石『草枕』で髪結いの親方が言う。<もしもの事があった日にゃ、法返しがつかねえ訳になりまさあ>法返しは漱石得意の当て字で正しくは「頬返し」、口に入れた食べ物を舌で転がして噛むことである。◆「頬返しがつかない」とは頬張りすぎて噛みも呑みもならぬ様子を言い、転じて、手に負えない事態を指す。政治資金のつまみ食いが過ぎると頬返しはおろか、弁舌もままならぬらしい」
「つまみ食いで頬返しがつかず、目を白黒させた人が首都の顔とは情けない。この文章を書きながら、困った。都知事という役職の頭に、わが指先は「前」の一字を付けたがる」

▽朝日・天声人語
(舛添都知事政治資金問題)

「先月来しばしばテレビに「龍宮城」が映る。といっても浦島太郎が過ごした城ではない。舛添要一東京都知事が政治資金で泊まったスパホテルだ。千葉県木更津市にある」
「言葉で相手をねじふせるのは舛添氏がもっとも得意としてきたことだ。それが今回はことごとく裏目に出る。問題とされた支出の釈明には、およそ誠実さが感じられなかった。能弁でならした知事はすでに龍宮の海でおぼれている。政治の言葉の「信義」を見失ったせいだろう」

▽毎日・余録
(オーランド乱射事件)
(http://mainichi.jp/articles/20160614/ddm/001/070/192000c)

「人が他人に対し攻撃的になるのは欲求不満や不快な感情の表れだが、それだけで実際に攻撃に踏み切るのではない。攻撃行動はその手がかりとなる刺激によって起こるという「攻撃手がかり説」を唱えたのは米心理学者バーコビッツだった▲バーコビッツが行った実験では、欲求不満状況に置かれた人の攻撃性を明らかに高めたのは目の前に銃が置かれた環境だった。銃はそれが目に入るだけで攻撃を押しとどめてきた心の歯止めを取り払い、人を暴力の迷路へと誘い込むあやしいオーラを放つものらしい▲そういうことは十分すぎるほど知り、経験してきた米国社会のはずである。4人以上が死傷した銃発砲事件は今年だけで136件にのぼる。その国にあって、「史上最悪」という乱射事件が起こってしまった。フロリダ州オーランドでのナイトクラブ襲撃事件である▲射殺された容疑者は犯行声明のあった過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を示していた。またクラブは同性愛者が集まる店だったことから、米国内のヘイトクライム(憎悪犯罪)としての性格もあろう。一匹オオカミ型テロとしてもかつてないパターンである▲鬱屈した憎悪を犯行へ駆り立てた「手がかり」は一つに銃社会という環境、もう一つはISによるテロ扇動という刺激だろう。この事件でオバマ大統領は改めて銃規制を訴えたが、一方でトランプ氏のようにイスラム教徒への差別を正当化しようという反応も現れた▲平和な日常に突然口を開けて人命をのみ込む暴力の「手がかり」を減らすのか、それとも増やすのか。事件が照らし出したのは分かれ道に立つ米国社会だ」

▽日経・春秋
(オーランド乱射事件/イギリスEU離脱問題)

「人の体から摘出された、という銃弾を見たことがある。殺傷力が高いタイプと説明を受けた。間近で見ると、細身のたばこのフィルターほどの大きさで、意外にもきゃしゃな印象なのだった。引き金の操作だけで、瞬時に人命を奪う武器の怖さが、じわりと迫ってきた」
「トランプ氏は「イスラム教徒の入国規制」を改めて訴えた。銃規制に反対の立場だ。2億7000万丁を市民が所持する国は巨大な火薬庫同然にみえる。事件は英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で「移民に仕事を奪われる」と訴える離脱派を勢いづかせる可能性がある。銃口が世を動かすとは何とも心が重い」

▽産経・産経抄
(オーランド乱射事件)
(http://www.sankei.com/column/news/160614/clm1606140003-n1.html)

「米議会で1934年に制定された連邦銃器法のきっかけとなったのは、当時のギャング団の存在である。マシンガンをぶっ放し、血なまぐさい抗争を繰り広げていた。
 ▼クリントン政権下では、新たな銃の規制法「ブレイディ法」が生まれる。81年のレーガン大統領暗殺未遂事件で重傷を負った、報道官の名前が付けられた。しかしその後、「銃なき社会」への動きは止まってしまう。
 ▼銃の所持は、憲法で認められている。自分の身を自分で守る。憲法と文化が、銃規制の必要性を訴えるオバマ大統領の前に立ちふさがった。皮肉なことに、深刻な銃犯罪が発生するたびに、銃の売り上げが伸びている。先週末、とうとう最悪の事態を迎えた。フロリダ州オーランドのナイトクラブで起きた銃乱射事件で、死者は49人に達した。犯人の男は、警察特殊部隊によって射殺された。
 ▼事件は、大統領選にも大きな影響を与えそうだ。とりわけ共和党のトランプ氏の鼻息が荒い。「イスラム教徒の米国への入国を一時的に禁止する」。かつて物議を醸した自分の発言の正しさが、裏付けられたと主張する。米国生まれの犯人は、アフガニスタン出身の両親のもとで育った。警察にかけた電話には、過激組織「イスラム国」(IS)への忠誠を誓う発言があった。ISも事実上の犯行声明を出している。
 ▼昨年12月にカリフォルニア州で14人が亡くなった銃乱射事件も、ISに関連していた。「人を殺すのは人であって、銃ではない」。トランプ氏を支持する、全米ライフル協会のスローガンも後押しする。
 ▼いや、テロを招いているのは、簡単に銃が手に入る社会の構造である。世界をリードしてきた国で、なぜこんな単純な理屈が通用しないのか。」

▽東京・筆洗
(オーランド乱射事件)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061402000124.html)

「「荒野の用心棒」などの映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネさんの元に一本の仕事が舞い込んだ▼当時、大物女優に頼まれていた仕事があったので、断ると脚本を読んでくれとしつこい。一応読んだ。断ることにした。断ったのは大物の仕事の方だった。こうしてイタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(一九八八年)の音楽を担当することになった▼脚本を読んだだけで作品の良さが分かったという。<素晴らしいのはキスを通して映画の歴史を語ろうというアイデアだった>。筋は明かさないが、ラストは過去の映画作品のあまたのキスシーンによって編集されている。キスに次ぐキス。またキス。見ているだけで温かい物のおすそ分けにあずかり、人間の営みとは必ずしも悪いことばかりではないと信じたくなる▼キスシーンが引き金になった可能性があると聞き、沈黙する。四十九人が死亡した米フロリダ州の乱射事件である。同性愛者に人気のクラブが標的になった▼容疑者は数カ月前、男性同士がキスをする光景を見て激怒していたという証言がある。「偏見」という歪んだ眼鏡で見れば、情愛あふれる光景にさえ憎悪をかき立てられるのか▼銃を置く。当然とはいえ、その前にできるのはその眼鏡を捨てることであろう。人がキスしている。そのまま見る。尊く、温かく、切ない姿しか映らぬはずである」

 真っ二つの競作になったのは極めて珍しい。
 舛添問題を読売と朝日が選び、オーランド乱射事件を毎日、日経、産経、東京が書いた。
ただ内容は総じて低調で、いかにも新聞的なコラムの枠内を出ない。
 印象に残ったのは産経のストレートな怒りと、読売の「前」という不気味な予言(?)だろうか。特に後者は積極的に舛添批判を繰り広げており、首を取ったという印象さえ受ける。