無料連載『不惑のインターネット・関係者インタビュー』①西村博之氏・第10回

2017-08-10 13.39.27

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第10回は、「ヨーロッパと日本における、若者の共通点」を、西村氏が間近で体験した「パリ同時多発テロ事件」をベースに語ってもらう。

◇第9回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000520/
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【写真】フランス内務省公式サイトより
https://www.interieur.gouv.fr/
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編集部(以下、編) 他に、住んでみたい候補地というのはありますか?

西村博之氏(以下、西村) 取りあえずフランスは永住権を申請できるぐらいまではいようと思っています。

花田庚彦氏(以下、花田) あと何年?

西村 あと4年です。そうすると永住権が申請できます。

編 グリーンカードのようなものが取得できるという理解でよろしいのですか?

西村 そんな感じですね。

本堂まさや氏(以下、本堂) フランスの場合、傭兵部隊に入っても、同じものを申請できますよね?

西村 そうです、同じものをもらえます。

花田 激裏情報だ(笑)

西村 日本人でも、フランスの傭兵部隊に入った人がいますからね。

花田 ひろゆきには、赤羽台団地のイメージしかないんだけどなあ(笑)

西村 出身ですから(笑)

編 西村さんをお待ちしている間、花田さんと本堂さんが「赤羽からパリはサクセスストーリーだよな」と話しておられるのが印象的でした。

西村 でも、アニメが好きでフランスから日本へ来る人もいるでしょう。それはサクセスではなく、単なる移動だと思います。

編 でも「赤羽からパリへ」という言葉は、単なる移動を超えたイメージの広がりがあるのは事実ではないでしょうか。

西村 フランスを選んだ理由の1つに、みんなフランスに価値があると思い込んでいる、というのはありました。

花田 確かに、日本だけじゃなくて世界的に、フランスは格好いいというイメージはあるね。

西村 僕はそこまで思ってはいないんですが、勝手に誤解をされて得をすることはないかなと考えていたんです。すると、本当に2日前なんですが、初めてフランスに住んで得をしたことがありました。

 2日前、あの美輪明宏さんとテレビ番組でご一緒したんです。その時、「こちらは2ちゃんねるを作られたひろゆきさんです」と紹介されると、美輪さんが「ああ、あの残念な方ね」というようなことをおっしゃったんですよ(笑)

編 いきなりですか(笑)

西村 美輪さんは2ちゃんねるが嫌いですから、僕のことも嫌いなんです。

 ところが、美輪さんはフランスが大好きでしょう。だから僕がフランスに住んでいるということが分かった途端、親しげに話をしてくれました(笑) 

 フランスに住んで得をした、人生で得をすることがあるのだと思いましたね。

本堂 パリ同時多発テロ事件の時、テレビに出演しましたよね?

花田 出てたっけ?

本堂 見た記憶があるんですよ。

編 コメントをされたんですか?

本堂 いや、津田大介さんの電話取材を受けていませんでした?

西村 テレビではなく、ニコニコチャンネルではないでしょうか?

本堂 そういえば、そうだったかもしれません。改めて、あの時は、どんな感じだったんですか?

西村 それが、気がつかなかったんです(笑)

編 現場から離れていたんですか?

西村 東京23区で言うと、テロの現場が銀座だとすれば、そのころに僕が住んでいたのは世田谷、というぐらいの距離ですね。「何かあったらしいぞ」という情報ぐらいしかなかったのですが、戒厳令は敷かれました。自宅近くは普段なら車も人も交通量の多い場所なんですが、全く跡形もなく消えてしまって、それが面白かったですね。あちこちうろうろと散歩してしまいました。

編 パリ同時多発テロ事件は15年11月に起きましたが、そもそも同じ年の1月、諷刺週刊誌『シャルリー・エブド』本社が襲撃されましたよね。その後、パリでは自動小銃を手にした警官の姿がクローズアップされましたが、そんなパリに暮らされて、どんな感想を持たれましたか?

西村 住民の実感としては、厳しい警備のおかげで、非常に治安がいいんです。夜中に歩いても、何の危険も感じません。

花田 それだと逆に面白くないんじゃないの?

西村 いいえ、別に強盗にあいたいわけじゃないですから(笑)

 夜中に歩いても、全然危険な感じがしないので、本当に楽です。それだけ、犯罪者は射殺を恐れているようですね。日本人で外人部隊に所属している人がTwitterで報告してくれましたが、彼はパリ所属ではないのですが、応援で呼ばれたそうなんです。

 パリの警備に当たる際、射撃訓練を受けたそうなんですが、不審人物を発見した場合は「ムッシュ、止まって下さい」と3回警告する。しかも3回目は引き金を引きながら呼びかけろという訓練だったと言います。日本の場合は、撃つ訓練まではできないじゃないですか。

花田 できないよね。

西村 呼びかけながら撃てという訓練をしていると知って、さすがだなと思いました。普通の犯罪者なら、悪いことはできないですよ。

編 東京でも、サミットの時なんかに特別警戒を行うと結構、泥棒の逮捕者が増えたり、手配の容疑者が見つかったりすると聞いたことがあります。

花田 でも東京でもパリでも、そこまでの警戒になると、反対に地方が手薄になるから、そっちの泥棒なんかは増えるだろうね。

西村 そうですね。

編 今後の目標とか、何かお持ちですか?

西村 フランス語は、きちんと喋れるようになりたいと思っています。今は日本の中学生が卒業したときの英語ぐらいです。基本的な文法構造と単語は分かるけれども、アメリカ人が何を言っているかは全然分からないというようなレベルなのです。ですから、もうちょっとしゃべれるようにはなりたいですね。

花田 ひろゆきは、今の日本の政治について、どう思っているの?

本堂 すごいところを斬り込んできますね(笑)

花田 もう、まとめに入ってるから(笑)

西村 何だかんだ言っても、日本は自力がありますから、何とかなっているなという感じで見ています。

花田 そういう今の態勢は、ずっと続いていく?

西村 長期的なスパン、例えば30年後だと続いていないかもしれないと思います。でも10年ぐらいだったら大丈夫じゃないでしょうか。

花田 その長期的なスパンの問題が、それこそひろゆきが日本にいたら先はないと海外に出た理由の1つだよね?

西村 この国は危ないという感じはあります。ただ、今はヨーロッパの方が難民問題などで問題だらけですけど(笑)ヨーロッパの将来が本当に危険になれば、日本に戻ればいいだけの話です。ただ、日本だけが常に安全かと言うと、そんな気はしません。

編 外国にいると、日本のことがよく見えると聞きますが、どうですか?

西村 いや、よく見られるのは日本国内にいる時です。フランスにいると、日本とフランスを比較することができるので、そういう意味で「見える」ことはあります。

 例えば、ヨーロッパは若者の失業率が非常に高いです。そして日本も多分、同じようになるだろうと見ているわけです。実際、若者の非正規雇用は増え続けていて、ヨーロッパでも日本でも若者の鬱憤がたまっています。

 フランスで若者のデモは日常的ですが、日本でも例えばSEALDsのデモが話題になりました。どちらも解決を求めているのではなく、若い人たちが暇をぶつける対象が必要でやっているんです。本質的には一緒ですね。

 ヨーロッパでは過激なグループが出現し、車を燃やしたり、警察署を焼き討ちしたりしました。日本では見られない現象ですが、僕は時間の問題だと考えています。

編 昔は日本でも、若い人たちが燃やしていました。

花田 全共闘世代とかね。でも、あの時は反対することが格好いいという風潮があったでしょう。

本堂 一種のファッションですよね。

西村 日本で、またファッションで始まったら、また広がっていきます。

本堂 ひろゆきが、その先陣に立つわけですね(笑)

花田 だね(笑)

西村 僕がやる必要ないじゃないですか(笑)

花田 充分に資格があるよ。「やるぞ」と言えば、みんなついてくる。

西村 まさか(笑)

編 冗談はさておき、日本でも再び若者が暴れますか?

西村 あまり報道されませんでしたが、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島に若者が車で入って、色んなものを盗んで帰ったんですよね。それと同種の動きが出る可能性はあるんじゃないでしょうか。例えばデモを銀座でやるんだけど、その中の1人でも宝石を盗むことに成功した奴が出ると、次のデモからは泥棒目的の参加者が増えていく、というイメージですよね。今は「さいしょのきっかけは誰だ」ということであって、起きるのは時間の問題ではないでしょうか。

(第11回につづく)