【無料記事】北九州市の中学剣道部が示す「ブラック部活」の実態 | イエロージャーナル

 3年間で3回の懲戒処分を受けた中学教師と聞けば、人はどう思うだろうか。  福岡県北九州市の教育委員会は12月21日、教員に対する懲戒処分を発表した。対象者は7人。そのうち34歳の男性教諭は合計で3回目の懲戒となっていた。しかも理由は全て体罰だ。  教育委員会も「3回の処分は前代未聞」と言う。保護者からは「教師失格」との声が上がったとしても不思議はないだろう。  しかもこの教師には、もう1件別の体罰と、それを学校側が隠蔽しようとした疑惑も囁かれている。教諭に加え、校長と教頭にも刑事告発が行われたが、福岡地検は不起訴と決定。もし起訴、公判となれば体罰の有無は法廷で明らかになっただろう。当然、裁判で認定されていれば、この教師は3年間で4回の体罰をふるったことになる。  

■剣道部の顧問教諭だけでなく、校長も処分

   まず北九州市教委の発表を見てみよう。3回目の処分は2015年の12月21日付だ。  八幡西区の永犬丸中学校に勤務する男性教諭(35)は同年8月、自身が顧問を務める剣道部で「足さばきがうまくできない」1年生の男子部員4人に対し、防具の上から竹刀で太ももを打つなどの〝指導〟を行っていた。  生徒はアザができるなどの軽症を負った。この体罰で、教師には停職1か月の処分が下された。  時系列を遡る。2回目の処分対象となった体罰は同じ15年の3月19日に起きた。  教諭は1年生男子の保健の授業で服装検査を実施。5人の男子生徒にボタンやベルトの違反を発見し、5人全員の乳首をつねった。生徒にケガはなかった。  最初の処分が下されたのは13年7月。12年度中の部活指導で、剣道部員2人に対して胸を押す、平手で頬を叩く、物を使って頭部を叩くなどの体罰を行っていた。また部活動以外でも生徒に暴言を吐いたり、体罰をふるっていたりしたという。  驚かされるのは、この教師に対して保護者などから「非常に熱心な先生です」と擁護する声が上がっていたのだという。市教委が取材に答える。 「擁護のご意見が市教委に届いたのは事実です。しかし体罰は絶対にやってはならない行為であることは論を俟ちません。児童や生徒の心身に深刻な悪影響を与えます」  市教委は体罰を繰り返させないため、特別プログラムを整備するという。 「さすがに3回の処分が下されたのは男性教諭1人だけですが、2回の処分となった教員は複数勤務しています。プログラムは2回以上の処分者を対象とし、来年度から実施できるよう急いでいます」(同)  更に市教委の関係者は、永犬丸中の校長にも処分が下されたと明かす。 「3回の処分が下った13年7月から現在まで、永犬丸中は同じ校長が勤務しています。最初の処分から始まり、責任者として教諭の体罰を改めさせることができなかったことを意味します。そのため市教委が文書で訓告を行いました」  罪を憎んで人を憎まずとも言う。教諭や校長が真摯に反省したのなら、また教育の現場で全力を尽くしてほしい──。  そう願う保護者は一体、どれほどいるのだろうか。  擁護の声もあったのは事実だ。しかし「二度あることは三度ある」を実践してしまった教師でもある。「4度目がないとは絶対に言い切れない」と厳しい視線が向けられる可能性は極めて高い。  しかも極めて重要なことだが、この教諭にはもう1つ別の体罰と、校長にはそれを隠蔽した疑惑が持ちあがっていたのだ。  

■「もう1つの体罰」ではないかと囁かれる「鼓膜損傷事件」

   問題の〝事故〟が起きたのは13年7月9日。最初の処分が下ったのは同年同月の25日だ。  ただし、対象は12年度中の指導だとされ、この件は既に〝不問〟となっている。そうした対応が3件の処分という異常事態を招いた可能性も高いのだが、それは先に進みすぎだろう。  まず〝事故〟の内容と、学校側の対応などの経緯を振り返ってみよう。   ■―――――――――――――――――――― 【購読記事の文字数】約5600字 【写真】北九州市の教育委員会が発表した処分のプレスリリース

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