2016年12月16日

【連載】加藤ジャンプの「こんなところで呑んでみた」第2回「吉◯家」

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 ファストフード店が〝ちょい呑み〟を推奨している。牛丼屋、天丼屋、立ち食い蕎麦から、あの『セイレーン印』コーヒー店まで酒が呑めるようになっている。

 どうしてファストフード店で呑みたいのか。コーヒーをのぞいて、牛丼やら天丼は、極力人とのコミュニケーションを避けて、さっさとエネルギーを補充する場所なのだと思い込んでいた。ガソリンスタンドとかF1のピットみたいなもので、早いが正義で、あとは二の次三の次なのではないのか。忙しいサラリーマンが、

「とりあえず昼飯食っとくか」

 と駆けこんで、かきこんで、駆け出していく場所なのではないか。実際、そんな多忙丸出しな背広姿が牛丼を食べている様子は、なかなか格好のいいものだったりする。かくいうこちらは、出社も退社もない糸の切れた低空飛行の凧みたいなもので、昼ご飯を定期的に摂取する必要もない。ゆえに、早いが正義の場にはほとんど用が無いし、そこで呑もうなどとは努々考えたこともなかった。

 酒なんて呑み出したら長い。そもそも、ちょっとだけ呑みたいなどと思ったことはない。いつだってたくさん呑みたいのである。

 だからなのか、ファストフード店の展開する『ちょい呑み』の概念がどうにも理解できないのである。

 もちろん、世界には『ちょい』に馴染む行為は数多ある。ちょい界の元祖『ちょいわるおやじ』、これはよくわかる。悪ぶりたい、あるいは本当に悪いことしたい、でも捕まらない程度にちょいとだけ振る舞いたい。イタリアっぽい(明確な根拠はないのだが、こういう時はイタリアだ)ジャケットにスウェットパンツに高価なスニーカー。葉巻好きで、モテる(ような気になっている)とか、勝手にやってくれればいいし、ギャングとか堅気ではない雰囲気を出しつつもちゃんとした人、という『ちょいわるおやじ』は、仲良くなりたいかどうかは別として成立することは容易く理解できる。

 ざっと雑誌なんか通覧しただけでも、『ちょいパチ』(ちょっとパチンコする)『ちょいモテ』(ちょっとモテる感じの服装?)『ちょいモレ』(ちょっと尿漏れ)などが目に入ってきた。世の中を見渡せば『ちょいバカ』とか『ちょいブス』とか、たしかに、ほんの少しとか幽かとかいったニュアンスに『ちょい』は実に便利で的を射ていることが多い。

 しかるに、なぜ、ファストフードで『ちょい呑み』なのか。牛丼をかき込むように、ビールを呑むのか? だったら、立ち飲み屋、スタンディングバーでいいではないか。なにをもとめてファストフードで呑むのか。

 そういう疑問を胸にむかった場所は、神田の吉◯家である。よくあるカウンターではない。路面店の2階にあるテーブル席にいる。そこで、店が店名を冠したキャンペーンを展開する『ちょい呑み』をためした結果、言葉を失った。
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【記事の文字数】4100字
【写真】吉○屋の赤提灯
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2016年7月8日

【連載・初回無料】加藤ジャンプの「こんなところで呑んでみた」第1回「こだま酒」

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 電車で呑む酒は旨い。ほんとうに旨い。吉田健一は列車でビールを呑むときにはガラスのコップを持参した。昔は紙コップの出来もそれほどじゃなかったから、何杯が呑んでいるうちに紙コップが紙臭くなる。それがいやだったからお店から借りて持ち込んだそうだ。優雅。
 実際にコップなんてわざわざ持ち込むなんて面倒このうえないが、列車で呑む酒が格別だから、コップ持参の厄介くらいどうってことなかったのだと、私は断定している。
 ところで、落語の有名なまくらに、死ぬまでにツユをいっぱいつけて食いたかった、と蕎麦通が言うものがある。

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【購読記事の文字数】6400字
【写真】10時56分の東京発新大阪行のこだま649号
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2016年5月2日

【無料記事】コの字酒場マンガ『今夜はコの字で』原作「加藤ジャンプ氏」インタビュー

konoji2016-04-28 14.02.01

 君は「コの字酒場」を知っているか──?
 こんな書き出しは大仰に違いない。それほどに、この魅力的な「酒場分類ジャンル」は、あっという間に人口に膾炙した。
 何しろNHKにもとりあげられたほどである。ならば、コの字酒場がマンガ化されても何の不思議もないだろう。
 おまけに原作者は「コの字酒場」の命名者ご本人なのだ。期待は否が応でも高まる。
 その加藤ジャンプ氏は単行本『コの字酒場はワンダーランド』『コの字酒場案内』(共に六曜社)の著者であり、今回は漫画原作者として、『今夜はコの字で』(集英社インターナショナル)を手がけた。
 タッグを組んだ漫画家は、「グルメコミック」そして「飯劇画」の巨匠、土山しげる氏だ。
 この組み合わせだけで1合は呑める(by 加藤ジャンプ氏)という人もいるに違いない。
 WEB連載時から大きな反響があったといい、満を持した格好で1冊のコミックとして発売された。
 さっそく弊社は加藤ジャンプ氏にインタビューを依頼。名居酒屋を舞台にした珠玉のコミックが、どのように誕生したのか、舞台裏などを伺った。

──まず原点とも言える『コの字酒場はワンダーランド』の方からお聞きしたいんですが、どういう経緯で出版に到ったんですか?

加藤ジャンプ氏(以下、加藤) 編集者に酒場で会うと必ず、「コの字酒場の本を出しましょうよ」と声をかけ続けていたんです。
 自分でも「しつこいなあ」って思うほど、ずっと言い続けていましたね(笑)こんなになにかを継続して主張したことはないんじゃないかと思うほどです(笑)

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【購読記事の文字数】5200字
【写真】集英社インターナショナル公式サイトより
(http://shueisha-int.co.jp/konoji/)
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