2017年4月14日

プロ野球B級ニュース2016㉒大乱戦&大量得点

baseball2017-04-14 13.47.47

 野球において、最も面白いスコアは何対何か──。

 こんなアンケート調査を行えば、たちまち百家争鳴、収拾がつかなくなるのは言うまでもないだろう。

 シーソーゲームですら前提にはならない。1対0を至上とする者もいるからだ。8対7は「ルーズヴェルト・ゲーム」として有名だが、9対8、もしくは7対6を主張するファンも相当な数にのぼる。

 いや、1点差でさえ、否定されるかもしれない。愛するチームが12対0で勝つのが最も面白い、という意見も、ファン心理としては理解できる。

 とにもかくにも、息づまる投手戦も野球なら、呆れるほど打者が活躍する乱打戦も、同じ野球に間違いない。そして16年のシーズンでも、歴史に残る乱打戦・大量得点の試合が行われた。様々な野球の魅力のうち、1つの究極をお読み頂こう。

「プロ野球B級ニュース事件簿2016」の第22回は「乱打戦・大量得点篇」とし、

①ミスター・ルーズヴェルト・ゲーム!
 川本良平(楽天)
②大量得点でも憮然
 伊東勤監督(ロッテ)
③先発全員「打点」の凄まじい打線
 長谷川勇也(ソフトバンク)
④荒れたのはスコアだけでなく、1試合2乱闘
 T-岡田(オリックス)

の3選手、1監督のエピソードをご紹介したい。

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【著者】久保田龍雄
【購読記事の文字数】4600字
【写真】福岡ソフトバンクホークス公式サイト「長谷川選手グッズ」「選手下敷」より
http://dugout.softbankhawks.co.jp/shop/genre/genre.aspx?genre=1036&_ga=1.257450691.994093721.1492145243
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2017年4月13日

【無料記事】中国「ガス・油田」盗掘で「日本最新技術」使用の皮肉

2017-04-10 15.04.05

 安全保障上の問題と聞けば、軍事力と国境線を思い浮かべる人間があまりにも多すぎる。安倍晋三首相をはじめとする自民党も変わらない。

 だが、それは19世紀の概念と断言していいだろう。21世紀の安全保障における最大の焦点は、技術と資源だ。

 そして政府=自民党の無為無策に怒り心頭のキャリア官僚が、ここにもいる。

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【写真】外務省『中国による東シナ海での一方的資源開発の現状』より
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/higashi_shina/tachiba.html
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 日中における最大懸案事項の1つ、東シナ海のガス田・油田開発問題で、かつて中国側は共同開発を約束したことがある。

 さる経産省幹部は、その〝猿芝居〟に怒りをあらわにするのだが、次第に矛先は母国へと向けられる。「それもこれも、日本政府の見て見ぬ振りに、全ての原因がある!」と悲憤慷慨するのだが、それも当然だろう。

「俺は4年前、中川さんが大臣(経済産業大臣)だったとき(編集部註:故・中川昭一氏は2003年から05年まで経産相を務めた)間違いない情報として(中川大臣に)上げたんだ。それがまったく無駄になったんだよ。4年前何があったのか!」

 場所は帝国ホテルのオールド・インペリアル・バー。キャリア官僚氏は人目も憚らず、何もかもぶちまけていく。

 キャリア氏の話をまとめると、事態はこんな状況だったようだ。

 2004年春、東シナ海で中国がヤグラを完成させ、本格的なガス田と油田の開発に乗り出しているという情報を掴んだ経産省は、沖縄県とも調整したうえで、航空機で状況を視察。この情報はすぐに、当時の小泉総理のもと、内閣の共有事項となる。

 だが、問題はそこからだった。内閣はこの情報が日中の外交問題に発展するとの判断から、小泉政権下ですでに悪化していた日中関係を懸念する外務省の意向も踏まえて〝情報封鎖〟に踏み切る。しかしその間にも、中国側は着々と試掘を進め、油田の所有を既成事実化してしまった……。

 キャリア氏は「その段階で、すでに話はワッセナー・アレンジメントでの扱いにまで及んでいたんだ」と漏らす。

 ワッセナー・アレンジメントとは何か。冷戦崩壊後の96年7月、かつてのココム(対共産圏輸出統制委員会)の後に設けられた輸出規制の枠組みである。非友好国への、軍事材料となりうる資材の輸出を禁止するもので、現在、日本やアメリカなど40カ国が加盟する。

「ワッセナーでなんとかならないかという話が持ち上がったのは、中国側が油田の試掘で使っているのが、高精度の日本製シームレス管や、バルブだとわかったからだ」

 大手ゼネコン関係者によれば、こうした日本製の建設資材は、海底油田の掘削には不可欠なのだという。

「シームレスというのは、継ぎ目のないパイプのことで、これは深海や高圧下での資源搬送には欠かせないもの。バルブも同様で、日本製のものでなければ、やはり高負荷のタスクには耐えられないです」

 世界に誇る日本の国産技術によって、日本が守るべき国産資源が〝盗掘〟されてしまう。確かに、これでは冗談にもならない。キャリア氏の苦悩も理解できる。

「ところが、シームレス管もバルブも、ワッセナーでは輸出規制の対象になっていない。それに、今はもう、役所の規制行政が流行る時代でもないから、輸出入は企業による自由裁量と自主性に任せる以外にない」(同・キャリア氏)

 規制はない。指導もできない。ないないずくしの日本を見越したように、今日も中国は日本の油田から資源を調達しているのだ。

「まったく悔しい。中国側ではこの間もずっと採掘が継続・拡大していて、煙突から火が出てるんだよ」(同)

 で、無駄とは知りながら、当の経産省に取材をお願いしてみよう。

「当課のホームページをご覧ください。ワッセナーの輸出規制で規制されているものは業者さま自身でホームページをご覧いただいております。それで、疑問などがあれば、ご相談には応じておりますが……」(安全保障貿易管理課)

 つまり、〝自主申告〟というわけだ。悪意を持った輸出業者や輸入国があれば防ぎようがない。

 さて、当のメーカーだが、自社製品が使われていることについて訊いてみた。

「数年前に把握しております。かといって行政当局からは特にそれについては何も指摘はないように記憶しております。当社の技術が世界的にもトップのものだという自負はあるのですが…」

 と、複雑な心境をのぞかせる。キャリア氏の囁きが甦る。

「かつてな、山陽特殊鋼の事件があったんだよ。一見、なんのことはない太いパイプが建設用資材として輸出されててな、それがある国で戦車の砲身に転用されてたんだ。いつかまた同じようなことが起きると、俺は思ってるよ」

 歴史は繰り返す。

 とはいえ、今回はわが国の資源が盗まれるという直接的な被害を被っている。これで何も対策を打たないのなら、我々は1人1人が亡国の徒だ。

(無料記事・了)

2017年4月12日

【無料記事】沖縄で「ハブ&コブラ」の「琉球コブラ」誕生の恐怖

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 熱帯の楽園・沖縄で、初めてその恐怖の報告がもたらされたのは1992年。場所は本島北部──。

「沖縄島の本部半島東部では、1992年から1994年にコブラ属Najaのヘビが出没し、地域住民に恐怖をもたらしている。」(沖縄生物学界誌98年)

 沖縄県衛生環境研究所ハブ研究室を中心とした大規模な、しかし密やかな捕獲調査の結果、実際にタイコブラ(Naja kaouthia)が捕獲されたことで、沖縄県でも北部の、とりわけ山間部の住民たちは、やはり、と恐怖に震えたのである。

 その危険性を、観光を主要産業に据える沖縄県が大きく訴えることはなかった。

「県はいわんさー。観光客が怖がるからねー。ただでさえ観光客が減ってるのに、怖がることはいわんさー。でも、ハブなんかは怖くないさー。怖いのはコブラとか、台湾ハブとか。血清がないのさー。それに、どうも混血がおるのよー」(地元関係者)

 コブラの生息が確認されてから25年が経ち、沖縄北部の山中では、沖縄産のハブと、台湾産コブラの自然交配が懸念され、ついに新種の琉球コブラが誕生したというのだ。別の関係者が言う。

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【写真】沖縄県公式サイト「ハブ対策の方法」より
http://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/hoken-chubu/eisei/kankyoeisei/33habu/habu.html
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「あれは、ハブではないよ、絶対に。わしらはハブは見間違えんからさ。沖縄のハブは奄美と比べても大きくて、緑が強いんさ。それで、緑色で大型で、それでクビをあげとるんよ。卵みたいに広がった襟みたいなのに、白っぽい模様もあったからさ」

 ハブの展示やコブラのショーなどを行う沖縄ワールドの担当者によれば、通常、ハブの攻撃範囲は体長の1・5倍。ただ、トグロを巻いていない状態では飛びかかれないため、攻撃態勢にないハブは、首さえ押さえてしまえば扱いやすい。

 だが、かま首をもたげたコブラは「ハブと違って、視覚を使って攻撃してくる」ので、素人では捕獲が難しいのだ。

 ハブとマングースの戦いは、現在、動物愛護法の改正で禁止され、沖縄本島では、ハブの最大生息地とされる北部の山間部で、蛇の駆徐目的で持ち込まれたマングースそのものが大量に繁殖しているとされる。

 ところが、マングースは、天敵であるべきハブや、そしてもっともその対抗効果が期待されるコブラに対して、自然界ではまったく向かっていかないのだという。

 現地でタクシー運転手をしながら、2年近くに亘って、このハブラの行方を追い続けている人物が話す。

「住民らも、4月の田芋を植える季節になると、あったかい気候で活発になったハブを相当目撃するんさ。でもそれに紛れて、首の立ったハブとコブラのあいの子見たいなのを目撃しとるんさ。北部ではハブラみたいな混血が相当、数が増えとるのは常識さ。でも、沖縄のひとは蛇には慣れとるからね。訊かれなければなんもいわんさー」

 地元住民のA子さんに連れられ、琉球コブラと遭遇した場所まで案内してもらうことにした。

 場所は、沖縄県による過去の調査でも、もっともコブラの目撃例が多かった、本部半島伊豆見地区。かつて日本軍と、上陸してきた米軍との激しい戦闘に見舞われたその山中で、今は人知れず、血清のない琉球コブラが繁殖しているというのだ。

 咬まれたときのダメージを防ぐため、新聞紙をまるめて、すねに巻きつけ、その上にGパンを履いた。そのためか、足取りは重い。

 目撃したというガマ(洞窟)は、すでに夏場に差し掛かり、背丈ほどに伸びた下草にその行く手を阻まれ、容易に近づくことができない。

 その草の合間、どこから台湾産のコブラ、そして2メートルにも達する沖縄産の巨大ハブ、そしてその2種が混合した、生物兵器さながらの猛毒蛇がこちらを睨んでいるともしれない。

 あと100メートル……50メートル……斜面の脇には小さな水の流れがあり、下草はその湿潤な環境で、さらに丈を伸ばしている。

 先導する地元住民のA子さんは「咬まれても血清はないさー」と呪文のように小さな声で呟きながら、黙々と先へと進む。

 からだ全体を覆う緑色の草の下には、陽は届かない。直射日光を嫌う蛇にとっては、日差しの強い沖縄の日中を過ごすには最適の場所だ。そして、川沿いのじめっとした空気があごをなでる。

 いつ咬まれてもおかしくない──片道30分。目撃の地点まで、これまでの人生でもっとも時間の流れが遅く感じられたのだった。

 捕獲に向け、北谷の大型釣り具店「シーランド」へと向かった。

 数々の網を物色し、もっともヘビ捕獲に適していると目をつけたのが、大型のアナゴ捕獲用の網だった。

 そこに、豚肉など餌を入れて設置しておけば、おそらくコブラが活動するといわれる夜間に捕獲できるに違いない。いまだかつて多くの目撃例はあれども、誰も捕獲に成功したことのない琉球コブラである。

 猛毒性であることは間違いないが、しかし、その牙や体の形状など、不明なことばかりだ。

 かつての県のコブラ捕獲調査でも、従来のハブ捕獲用の器具では対応できないという指摘もあった。網の設置そのものにも恐怖が募る。

 それに、あの高い草が生い茂る恐怖の湿地帯に再び踏み込むのはどうしても避けたい。長い10メートルロープの束をいくつか抱えてきた。

「これに結んで、草むらに入らずに、放ればええねんな」

 かくして、夕方、日暮れときに、作戦は決行されたのだった。どんな餌を好むのか、それさえ不明だった。川べりでティラピアの腐肉を呑みこんでいたという情報もあった。
 
 魚の肉を好むのかもしれない。できるだけ臭いの強いものをと、小間切れの豚肉と、そしてサンマのぶつ切りを網に放り込み、そして、ロープをくくりつけて、川岸沿いの湿潤な場所に放り込んだ。

 翌朝、おそるおそるロープを引き上げてみると、網には何も入っていない。2日目、成果なし。3日目、成果なし。

 結局、捕獲どころか、対面さえ叶わなかった。それにしても、いったい、このコブラの繁殖と、そして、コブラとハブの合体を許した原因は何なのか。ある研究者の次の言葉が背筋を凍らせる。

「80年代から90年代にかけて、観光客のためにマングースと闘わせようと持ち込まれたコブラが、観光業者のところから逃げだしたのが原因だと言われています。業者のところではコブラ同士の繁殖も行われていて、それで、輸入された個体数以外に逃げだした個体数が把握できないんです」

 地元ホームセンターでは、住民たちの命を守るための兵器、ハブノックなる商品が棚に並んでいるが、このハブノック、5メートル先まで直線で殺蛇成分が噴霧されるツワモノだ。しかしながら、人類にとっての〝最終兵器〟さえ、琉球コブラに効果があるのかは未だ不明である。

(無料記事・了)

2017年4月11日

【無料記事】小池都政の「アキレス腱」か「上山信一・半田晴久」両氏

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 6月23日告示、7月2日の投開票が予定されている東京都議会選挙。台風の目は言うまでもなく、小池百合子知事の「都民ファーストの会」だ。報道によると、全選挙区に候補者を60〜70人程度、擁立するとされている。

 都知事当選後、豊洲新市場移転問題、東京五輪会場問題、そして都議会の「ドン」らとのバトル、百条委員会……と、「小池劇場」は連日、メディアで大きく報道された。

 今は若干、過日の勢いを失ったようにも見えるが、それは一時的なものだろう。都議選が近づくにつれ、劇場は再び活況を呈するのは疑いようもない。

 高い支持率を維持し、小池都政は磐石のように思える。果して、本当に「アキレス腱」や「弁慶の泣き所」すら存在しない、ロボット的な強さを実現しているのだろうか。

 確かに、小池知事自身は、それだけの〝豪腕性〟を持っているかもしれない。しかしながら、政治は1人では行えない。小池知事の周囲には、ブレーンなど様々な関係者が蝟集している。そうした人々も都知事と同じように「無敵」であるはずもない。

「安倍一強」と言われていた国政でも、安倍首相本人ではなく、昭恵夫人が原因で、思わぬ躓きが生じてしまった。類似の可能性が、小池都政にも存在する。まず1人目は、小池知事が結成した「都政改革本部」のうち、まとめ役たる特別顧問に就いた上山信一・慶応大教授だ。

 上山氏の存在は、関係者の間で憶測を呼び続けている。なぜか。実は上山氏、橋下徹・前大阪市長の「ブレーン」をしていたことで知られる人物なのである。

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【写真】たちばな出版公式サイトより
(http://www.tachibana-inc.co.jp/index.jsp)
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 関係筋が解説する。

「上山さんが橋下さんをけしかけて運動を開始させたにもかかわらず、結局は橋下劇場の幕引きにもつながってしまったのが、皆さんご存じの大阪都構想です。府と市を統合し、市内を東京23区のように特別区で再編成しようとしたわけですが、狙いは二重行政の解消と、東京一極集中によって地盤沈下が激しい大阪の都市力の再興、道州制導入の入口などと言われていました」

 しかし2015年の住民投票により、大阪都構想は僅差の末に否決されてしまう。この上山氏が今度は東京都に乗り込んできたわけだ。

「上山さんが小池知事と組んだのは、ずばり大阪リベンジだと言われています。小池新党の政策に道州制の導入を加えさせ、大阪で果たせなかった『明治以来の中央集権打破』を実現させようというわけです」(関係者)

 1980年に当時の運輸省に入省した上山氏は6年後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして活躍を始めた。地方行政に経営コンサルタントとしてのノウハウを導入し、福岡市や神奈川県逗子市などで行政改革に手腕をふるった過去を持つ。別の関係者が言う。

「小池知事が立ち上げた都政改革本部には、上山さん以外にも、橋下さんの政策立案ブレーンだった鈴木亘・学習院大教授もメンバーに入っています。大阪では、貧困地域対策など次々と斬新な策を打ち出しました。このほかにも都政改革本部には、大阪維新勢力と近い経営コンサルタントなども入っています。つまり、大阪では成就しなかった〝夢〟を、今度は東京でやろうとしているのではないのでしょうか」

 ちなみに橋下氏の小池知事に対する態度は固く、厳しい。かつてのブレーンの本音が見えるからなのだろうか。

半田晴久=深見東州氏も小池知事の「ブレーン」

 更に半田晴久氏ともなると、更に馴染は少ないだろう。

 例えば都内私鉄の車内で「深見東州」なる人物の書籍を紹介する「たちばな出版」の広告をご覧になったことはないだろうか。この深見東州氏は「芸術活動」や「宗教活動」を行う際の〝通名〟だとされ、その本名が半田晴久氏なのだ。

 たちばな出版は、実質的に半田氏がオーナー。更に新興宗教・ワールドメイトの総裁や、予備校・みすず学苑の代表も務めている。

 ここまでなら、相当な「好事家」ならご存じかもしれない。

 だが、そんな「深見東州マニア」でも、氏が福岡にある在福岡カンボジア王国名誉領事館の名誉領事という〝公職〟の持ち主だとは知らないのではないだろうか。

 更に、この半田氏のもとには、大きな集金力を見込んでか、与党、野党の有力政治家らが集い、たちばな出版の顧問職を引き受けている。

 そのなかの1人が、小池劇場への飛び入り参加で、にわかに復活の狼煙をあげんとする、元東京都知事の猪瀬直樹氏だ。

 猪瀬氏と言えば先頃も、小池塾の講師に呼ばれ、「敵は誰か」など、小池知事への援護射撃とも取れる発言で、メディアで話題になったのは記憶に新しい。

 とはいえ、テレビ出演でギャラを得たとしても、それだけで生計を立てるのは難しい。これまでは80〜100万円とされる講演料があったが、今は昔の話だ。では現在、猪瀬氏の「懐事情」はどうなっているのだろうか。

 猪瀬氏は現在、半田氏がオーナーの、たちばな出版と関係を密にしている。半田氏は安倍首相とも近しいとされ、自民党議員だけでも、十指に余る人数を顧問に採用している。

 つまり「政界の新しいタニマチ」として頭角を現しつつあるのだ。新興宗教のワールドメイトではなく、たちばな出版という出版社を選ぶところも、政治家に対する配慮が行き届いている。政治家からすれば、新興宗教とは係わり合いになりたくないだろうが、出版社なら何の心配もない。

 自民党は与党ながらも、政治資金パーティーの収入は目減りしている。党本部への大口献金があっても、代議士の懐が潤うわけではない。景気改善が謳われても庶民の足下までは好況感が巡ってこないアベノミクスの実態さながらだが、だからこそ、個人で潤沢な資金を差配できる「ワールドメイト総裁」にもすがらざるをえないのだろう。

 与党、野党の代議士らが群がる半田の新たな軍門にくだった猪瀬直樹の目下の野望は、「来夏の都議選以降の都政顧問」への復帰であると囁かれている。

 いまだ徳州会の5000万円借用で公民権が停止しており、副知事など公職就任がかなわないが、大坂府同様に「顧問職」に就くことで復活の礎を着実に積み重ねたいというのが猪瀬の本音だという。

 ご存じの通り、小池知事は少なくとも現時点で、国政レベルでの「自民党決別」は行っていない。全面的な敵対関係にあるとされる都政とは対照的だ。

 となれば、「右手に上山氏=維新、左手に猪瀬氏=自民」という両面作戦は、非常に効果的だろう。どれほど都議選で圧勝しても、左手を離さなければ、時期首相候補として名が挙がり続ける。実際に総理総裁を目指さなくとも、候補者にカウントされることは小池知事にとって計り知れないプラスになっている。

 しかしながら、上山氏にも、猪瀬氏にも「アキレス腱」が存在するのは、これまでに見て頂いた通りだ。そもそも、新党を立ち上げながら、自民党とも関係を保つという小池知事のウルトラCも、いつまで続くのかは分からない。

 小池知事の「未来」は、思われているほどに明るくなく、茨の道というのが事実だ。知事は信じられないバランス感覚で平均台の上に立って歩き続けているが、本人ではなくブレーンのせいで転落する可能性は常に存在する。

(無料記事・了)

2017年4月10日

【無料記事】本業減益「ぐるなび」が旅行業に参入

17年4月10日GURUNAVI2017-04-05 16.39.49

 てるみクラブの破産問題が少しは冷水を浴びせたかもしれないが、旅行業界が活況を呈しているのは紛れもない事実だ。訪日外国人(インバウンド)の消費や国内シニア層の旅行熱を狙って、既存の事業会社が旅行業へ続々参入している。

 フジ・メディア・ホールディングスは16年11月に訪日旅行向けサイト・ジャパンインフォを傘下に治めた。2017年2月10日には三越伊勢丹ホールディングスがシニア向け海外旅行代理店・ニッコウトラベルの買収を決めている。そしてグルメサイト運営の、ぐるなびもインバウンド需要を取り込もうと戦略を転換した。

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【写真】ぐるなび公式サイト「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」(中国語=簡体字版)より
https://livejapan.com/ja/
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 これまで同社はグルメサイトから顧客を飲食店に誘導するビジネスを柱にしていた。新規加盟店は増加し、16年12月末で有料加盟店数は60,816店まで拡大。月間ユニークユーザー数も6,100万人にまで増えた。しかし業績は営業利益が減益になるなど苦戦を続けているのだ。

 そこでインバウンド(訪日外国人旅行/訪日旅行)に目をつけた。訪日外国人は16年に2,400万人に達し、さらに今年も増えると見られている。昨夏「ぐるなび」は海外旅行サイト大手の「トリップアドバイザー」と連携した。トリップアドバイザーの外国版サイトからぐるなびの外国版サイトへ誘導する仕組みを開発。日本を訪れた外国人客が飲食店を見つけることをできるようにした。

 背景にはインバウンドの需要の変化がある。15年ごろまでは、外国人客は家電や化粧品など商品という「モノ」を購入していた。しかし昨年春から様相は一変。「爆買い」は消失し、特別な時間や体験など目に見えない価値である「コト」を消費する方向に変わった。そこでぐるなびは考えた。

「『爆買い』は終わった。しかしインバウンドは増えている。モノは買わなくても飲食はする。まだまだ市場はある」

 その結果、トリップアドバイザーとの連携に踏み切った。トリップアドバイザーの外国語版サイトから「ぐるなび」外国語版サイトに誘導。そこに外国語で日本国内の飲食店情報を載せ、訪日外国人を店に送客する流れだ。

 ぐるなびのインバウンド対策はそれだけではない。

 飲食店のメニューにも手を入れた。訪日した中国人や韓国人が店に訪れてもメニューが中国語や韓国語に対応していなければ客は困惑する。そこで中国語や韓国語、英語などのメニュー開発を加盟店営業や巡回スタッフが支援。外国語メニュー作成し提供できるようにした。

 これにより店側も「いま食べて欲しい料理」を勧めることができ単価も上げることが可能になった。また外国人に受ける料理の開発もサポート。インバウンドからの利益の最大化を図ろうとしている。

 今春からは中国の旅行サイト「Ctrip」、台湾の旅行サイト「Kkday」とも連携する。ここでは「無断キャンセル」のリスク軽減で「事前決済型予約サービス」を導入し、「スキッパー(踏み倒し)」防止を進める。これにより店側のキャンセルリスクは減るうえに、ぐるなび側は決済手数料が入るという「一石二鳥」が実現する。

 ぐるなびではメニュー情報を外国語に一元変換するシステムも導入しており、利用する店舗は23,000店を超えた。

 何とかインバウンド需要を取り込もうとする飲食店の期待は大きい。その声に応えることができるか。正念場だ。

(無料記事・了)

2017年4月7日

プロ野球B級ニュース2016㉑長いトンネル

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 プロ野球選手の「長いトンネル」と聞いて、思わず自分の人生と重ね合わせてしまう人も少なくないだろう。

 今年もプロ野球は開幕した。こうなると、選手と自分を同一視する余裕など失ってしまうのがファンというもの。

 ひいきのチームだけでなく、応援する選手が「長いトンネル」に入ってしまえば、心配したり、怒ったり、神を呪ったり、テレビの前で悪態をついたり……と、ありとあらゆる狂態を演じるのがファンだ。

 連載第21回は「長いトンネル」に捕まってしまった4選手のエピソードをお届けする。今年もきっと、同じような罠に落ちる選手が出現するはずだが、その「復習」をみんなで済ませておこうではないか。

①日本一MVP投手が1112日ぶり本拠地勝利
 美馬学(楽天)
②71打席ぶり弾も15連勝でストップ 
 中田翔(日本ハム)
③高卒新人ワーストのデビュー6連敗寸前から奇跡が
 小笠原慎之介(中日)
④シーズン2勝目は遠かった 
 東明大貴(オリックス)

 今回は以上、4選手のエピソードをご紹介したい。また、そのうち、美馬学選手の部分は全文、無料記事としてお届けする。

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【著者】久保田龍雄
【購読記事の文字数】約4900字
【写真】小笠原慎之介選手Instagramより
https://www.instagram.com/dshinnosuke11/
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2017年4月6日

【無料記事】記者会見でPC叩く「ぱちぱち記者」の愚

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 東京・大阪証券取引所が経営統合を行い、2013年に発足した日本取引所グループ(JPX=東京都中央区日本橋兜町)は毎月、清田瞭・グループCEOの記者会見を開く。出席者は東京株式市場を担当する記者クラブの記者たちだ。

 例えば2月の定例会見は27日に行われた。清田CEOが当月の取締役会の決定事項を伝え、そのあと各記者による質疑応答。話題の中心は当然、東芝問題だったという。だが、Q&Aの内容よりも、JPXの関係者には気になることがあった。

 それは記者会見の間、ひたすらパソコンを「ぱちぱち」打つ記者たちの存在だ。「ぱちぱち君」と呼ばれることもある。

 会見に出席しながら質問もせず、話し手の顔や動作も見ず、ただパソコンの画面を睨みながらキーボードを打つ。文字通りのマシーンだ。とはいえ、「ぱちぱち君」の姿は意外に多い。10人近くいるときもある。

 質疑応答が白熱しても、「ぱちぱち」という音は聞こえ耳触りこのうえないが、彼らの手は止まらない。その異様な光景を「どうにかしたい」とJPX関係者は考えた。そして、ある日、朝日、読売、日経、共同のキャップたちに聞いて回ったのだという。

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【写真】ぱちぱち君が叩くPCのキーボード
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「ぱちぱち君、どうにかなりませんか?」

 各社とも「何とかしたいですねぇ」と苦笑。だが、しばらくすると、そのうちの1人が「でも……」と呟いた。

「私は、あんなのいらないと思っています。でも本社のデスクが記者会見の会見録を欲しがるんですよ。それもすぐに」

 別の社のキャップも同意する。

「我が社なんか編集委員も会見録を欲しがりますよ。『早くメールで送れ』と催促してくるぐらいです」

 結局、4社のキャップは全員、同じ意見だった。「だから私たちの一存で止めさせることができないのです」──JPX側は、ため息をつくばかりだったという。

 それにしても、会見にパソコンを持ち込み、質問を一切行わず、ひらすら質疑応答を入力する記者が出現したのは、いつの頃だっただろうか。

 さる記者も疑問に感じ、周囲に訊いてみたという。「東日本大震災の頃から目立ってきたかなあ」との回答が多かったという。

 震災以前はICレコーダーを会見者の前に置き、記者は椅子に座って会見の内容をノートにメモ。そして時には会見者の身振り手振りを見て質問を発していた。レコーダーに録音した内容は、会見が終了するとメモにおこし、自らが保存した。

 ところが東日本大震災が発生すると、政治部デスクが記者会見の会見録を欲しがるようになった。更にメール回覧が普及。勢いづいて社会部、経済部と広がり、今ではほぼ全ての会見で「ぱちぱち君」が出没するようになった。

 メディアの最重要事項は、事件や事故といった「突発的ニュース」を報道することにある。当り前のことだ。だからこそ現場には、全世界のどこにであっても、必ず記者が派遣される。

 現場記者は事件や事故を最も知る記者だ。情報が集約する「本社デスク」が逆立ちしても敵わない。某人気刑事ドラマの映画版では「事件は会議室で起きているんじゃない! 現場で起きているんだ!」の台詞が話題になったが、全く同じなのだ。

 現場記者が取材し、デスクに報告・相談して記事化していく。デスクは現場記者に全幅の信頼を置く。それが普通だろう。

 だが、現場の会見録がメールで早急に送られるようになり、記者とデスクの関係に変化が生じてきた、という意見の記者は少なくない。デスクが「まるで現場にいるかのように」指示を出してくるようになったのだ。

 細かい話をすれば、特に新聞社は「新人の現場記者」→「現場をまとめる中堅のキャップ」→「本社や支局にいるデスク」という報告経路を通じ、記事化が行われていく。

 ところが「ぱちぱち君」のメールを見たデスクは、キャップの頭越しに現場記者へ指示を出すようにもなっていく。一見すると合理的に見えるが、「キャップが成長する機会」を奪っているという問題がある。

 更に「ぱちぱち君のメール」を心待ちにする上層部もいる。編集委員や解説委員だ。なぜなら、日ごろ付き合っている政治家や経営者にまるでそこにいるように話ができるからだ。「東芝ではこうだった」、「首相はこういった」……などなど。

 あるキャップは、皮肉たっぷりに付け加える。

「ぱちぱち君の彼らも喜んでいるんですよ。『デスクに喜ばれる』とね」

 会見者の真意を読み取り、読者に代わって質問し、回答を聞き切り返す。そんな記者の基本動作である取材を行わず、速記マシーンに徹することに喜びを感じる記者が少なくないのだ。大抵の「ぱちぱち君」は「支局上がりの3~4年目が多い」という。それは今から本社で油が乗る年代のはずなのに、「上司に気に入られることが喜び」とは、サラリーマン・ジャーナリズムが基本の日本らしい話である。

 記者に限らず、新人を育てるのは畑で作物を育てるのと同じだ。必要なときに水や肥料を与え、ときには添え木する。誰がやっても大変の一言に尽きる。しかし今、各社のデスクは現場の会見録を見る喜びを優先させ、記者を育てることを止めた。かくて「ぱちぱち君」は今日も会見場を跋扈し、メディアは「マスゴミ」と馬鹿にされ、どんどん読者が離れていく。

(無料記事・了)

2017年4月5日

【無料記事】「全柔連会長」定岡正二氏の「爆弾コラム」は「講道館廃止」

jyudo2017-04-04 14.51.09

 2016年12月、日本経済新聞・夕刊の1面コラムに、新日鉄住金と、全日本柔道連盟の会長を務める宗岡正二氏が「日本柔道の課題」と題する提言を書いた。掲載から数か月が経過しているが、「あの中身は爆弾級だ」と、じわじわ波紋を広げているという。

 宗岡氏は、ロンドン五輪の翌年に噴出した暴力問題や不正経理などの不祥事を受け、日本柔道界の再建のために全柔連会長に就任。以来、組織改革を急ぎ、リオ五輪でも一定の成果をおさめた。

 このことに宗岡氏は自信を深めたのだろう。件のコラムで柔道界の「最後の課題」として掲げたのが、全柔連と講道館の関係だった。

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【写真】講道館公式サイトより
http://kodokanjudoinstitute.org/
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<最後の課題は、日本の柔道界に併存する、柔道競技全般を担う全柔連と段位認定権を持つ講道館という二つの公益財団法人のあり方の追求であろう。剣道では全日本剣道連盟が段位認定も担う等、日本の他の競技ではこのような形での二つの組織は併存しないし、諸外国の柔道団体もしかりである。組織運営上さまざまな問題が生じるからであろう>

 講道館の持つ「段位認定権」に疑問を投げかけた上で、更に「日本の柔道界に詳しい外国の友人」に、こう語らせた。

<「日本の柔道界に業務が重複するような二つの団体が存在するのは問題ではないか。講道館を柔道のレガシー(遺産)として全柔連の付属機関とし、早稲田大学大隈記念講堂のように『全柔連嘉納記念講道館』とすれば多くの問題が解消されるのではないか」>

 新聞記事だけあって、文体は品のいい優等生スタイルだ。なおかつ外国人に語らせたため、婉曲の効果も生まれている。

 とはいえ、確かに内容は強烈だ。要するに講道館が「家元」として〝既得権益〟を独占していることを批判し、解体を提案しているのだ。

 講道館が発行する段位については、1981年にも国際柔道連盟(IJF)が独自の段位を発行するとして、講道館と全面対決したことがある。同時に、全日本学生柔道連盟も正力杯主催の読売新聞を後ろ盾に講道館と衝突、全柔連からの脱退を表明した。

 当時、IJF会長とともに学柔連会長を務めていたのは、東海大総長の松前重義氏(故人)であった。さまざまな仲介を経て、対立は「講道館=全柔連」側の勝利に終わったものの、無傷というわけにはいかなかった。IJF内において、特に全柔連の立場は弱体化の一途をたどっている。

 宗岡氏のコラムは、そうした対立の再燃を予感させるものだ。しかも、その根が深い。

 宗岡氏は東京大学柔道部の出身。講道館柔道とはルールも違う「高専=七帝柔道」で鍛えられた。寝技、絞め技を中心とする高専柔道は、精神的にも講道館と一線を画しているのだ。

 松前氏も、読売の正力松太郎氏も高専柔道の出身である。現在の全柔連専務理事の元警察官僚、近石康宏氏(67)も東大柔道部で宗岡氏の後輩だ。一方、副会長の山下泰裕氏(59)は松前氏の東海大組である。

 極論を承知で言えば、気がつけば全柔連幹部は「講道館色」を失いつつあり、「高専柔道色」が濃くなっているのだ。当然ながら講道館側の危機感は強い。

 図式としては、講道館にとって段位認定権こそが、最後の牙城であることは間違いない。もし宗岡コラムの提案が実現し、認定権を失ってしまえば、講道館は経済的にも無力化していくことは間違いない。

(無料記事・了)

2017年4月4日

【無料記事】ソニー平井社長が日経幹部に「FT買収」は失敗と断言

nikkei-ft2017-04-04 13.04.40

 日本経済新聞社の中で、秘かに話題になっているエピソードがある。

 2016年秋、ニューヨークで安倍晋三首相も参加した会合でのこと。ソニーの平井一夫社長が日経の幹部に、英フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収したことを酷評したというのが、その内容だ。

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【写真】日経公式サイトより
http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/
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 日経は15年、FTを約1600億円で取得したが、ソニーも1989年にコロンビア映画(現・を約5000億円で買収したという〝共通点〟がある。

 日経の関係者によると、ソニーがコロンビア映画を買収した際、日経が「戦略性がない」などと批判する記事を相次いで掲載していたことを、平井氏が言及したらしい。

 売りに出されていたほどだから、当時のコロンビア映画は多額の負債を抱えていた。買収総額は想定を超え、48億ドルに膨れ上がったという経緯がある。80〜90年代にソニーを率いた大賀典雄氏も、日経新聞の『私の履歴書』で次のように振り返っている。

<コロンビアの買収はもともと社内でも否定的意見が多かった。私は映像資産の将来価値を確信していたが、買収額と後の評価額との格差を埋めるため、1994年9月中間決算で暖簾代の一時償却など3000億円の連結赤字を計上することにした>

 買収の苦労を率直に綴っているが、それでも最終的には旧コロンビア経営陣を追い出し、立直しに成功している。

 平井社長から「日経には『戦略性がない』と書かれましたが、今、あなたたちに、そっくりそのまま、その言葉を返します」と言われた日経幹部は「返す言葉もなかった」(関係者)という。

 平井社長の大人げない意趣返し──と思う方もおられようが、当の日経社員が指摘は正しいと認める。

「平井さんに言われるまでもなく、社内でも、『いったい何のためにFTを買収したのか』という疑問が充満しています」

 日経はFTグループの株式を取得し、合計発行部数は米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの2倍強になると強調し、「世界的な新聞グループになった」と胸を張った。

 しかしFT関係者によると、日経はFTの記者が買収に反発して会社を去ることを警戒してか、FT紙面にはまったく口出ししてこないという。社員の交流はたまに行われているが、一部の英語のできる記者に限られている。FT関係者はこう指摘する。

 「日経記者とFT記者が連名で1つの記事を書くとの試みもありましたが、長続きしていません。どうも日経には、FTに対する遠慮があるようです。このままでは日経は、FTを手放すことになるだろうとの見方が出ています」

 日経関係者も「平井さん、いいことを言ってくれたと思っている社員は少なくない。経営陣が変わらないと、荒療治はできないでしょうね」とぼやくのだ。

(無料記事・了)

2017年4月3日

【無料記事】猪瀬都政「陰の腹心」が解説する「前川燿男証人喚問」

maekawa2017-04-03 14.51.58

 弊誌は16年7月28日、

『猪瀬直樹氏の「元腹心」が解説する「猪瀬VS内田茂〝ドン〟都議」バトルの真相──「紀尾井町ヒルズ計画」を知らぬ〝田舎の猪〟と〝ゼネコンに担がれた神輿〟の近親憎悪』

の記事を掲載した。
http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000287/

 ここでインタビューに応じて頂いた「腹心氏」に今回、目前に迫った前川燿男・練馬区町、元知事局長の百条委員会における証人喚問について、話を伺った。

 3月3日に石原慎太郎氏は会見で、「用地買収の交渉役」と前川氏を名指ししたが、後に「誤りだった」と撤回するという騒動を引き起こした。そんな前川氏が百条委員会に出るとあって、当日の騒ぎは必至だろう。

 腹心氏は都政における前川氏の役割を解説することから始め、最終的には石原都政の本質論に迫っていく。では、一問一答をお届けしよう。

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【写真】前川燿男・練馬区町公式サイトより
(http://maekawa-akio.net/)
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──まずは、3月3日に行われた石原慎太郎・元都知事の会見について印象を教えて下さい。

腹心氏 石原氏と同じように、質問者の顔ぶれまで旧態依然としていたのには、苦笑を禁じえなかったですね。

 元朝日新聞編集委員、毎日新聞元政治部長……などなど、完全に退職したのか、嘱託扱いなのかは知りませんが、要するにOB記者が勢揃いし、丁寧な口調ではありましたが、糾弾ありきの質問を繰り広げていました。

 これがフリーランスのジャーナリストとなると、石原氏を会場で粛清せんと気合を入れていたのか、単に幼稚な精神構造の持ち主だったのか、とにもかくにも、ひたすら雄叫びを上げるだけでした。

 率直に言って、日本ジャーナリズムの質問力など、あの程度です。残りはテレビ局がお決まりの質問をこなし、石原氏が「とぼけ」たり「逃げ」たりする画を撮影しただけでしたね。

 少なくとも日本の記者会見では、メディア側が「とっておきのネタ」を隠し持っている場合、会見で質問することはありません。自分たちのスクープネタを、みすみす他社にくれてやることになってしまうからです。

 会見では沈黙するか、そ知らぬ顔で平凡な質問に留めておきます。その後、本人に直接、1対1の「サシ」で取材を行う。その一問一答を記事化の際に掲載する、これが基本的な流れになります。

 では石原氏の会見で、そうしたネタを隠し持っていた社はあったでしょうか? 私はリアルタイムで試聴していた時から、そういう印象は皆無でした。

 今となっては、どの社も何もネタを持っていなかったのだと断言できます。なぜなら、3月4日以降、石原氏に関するスクープは全く報じられていないからです。

 会見に集まった報道陣は手持ち無沙汰。石原氏を詰問する姿さえアピールできればいいという、いつもの体たらくを、たっぷり堪能させてもらいました。 

 別にスクープを準備できなくてもいいんです。会見では建前の回答を引き出しておいて、小さなネタでもいいから、何とかしてサシの取材に持ち込む。そして、石原氏の会見は徹頭徹尾、隠蔽を企図していたことをあぶり出す──こんな手腕を持った記者は、今や皆無だと分かりましたね。

──この会見で、前川燿男氏の名前や、知事本局という部署名が飛び出したわけです。後で訂正する騒ぎになったのは記憶に新しいですが、4月4日には再び焦点が当たると考えられます。どう捉えておられますか?

腹心氏 知事本局は石原都政時代に肝いりでつくられた総合調整部局で、いわば大臣官房のような位置づけです。もちろん、他部局の決定を覆す権限など与えられていませんが、総合調整部局としての裁量の網は、都政最大を誇ります。ありとあらゆるところに及ぶと表現しても過言ではないでしょう。

 知事と直結し、知事の意向を下方に伝える。同時に、各部局の水平方向の伝達も担当します。そのため権限などなくとも、知事との距離感という点だけでも、他部局は知事本局の意向を常に伺うようになっていきます。いわば心理面で拘束されるわけです。

──石原氏は「誰かが判子を押した」と、あくまでもボトムアップでの認可を行っただけと逃げの姿勢を強くしていますが、このあたりはいかがでしょうか。

 そもそも週に1回、金曜日の昼前後に現れるだけの石原さんが都政の詳細を把握するのは無理です。

 正午から午後3時までの数時間のうち、都庁の各部局は知事会見に向けて、絞りに絞り込んだ内容だけをレクチャーします。必然的に、決定事項の伝達と背景解説を手際よく行わなければなりません。そこに至るまでのプロセスを報告する余裕はなく、石原知事も全く把握しない、というわけです。

 石原さん本人がおっしゃったように、都トップとしての形式的な責任はあります。しかし、政策決定プロセスに対する実質的な責任まで押し付けられるのは敵わない、というのは本音ですね。虚言とか、弁解というのとは違うと思います。

 確かに、あれだけ広大な土地の売買で、瑕疵担保責任を問われない契約というのは、売り手側にとっては大変なものです。また、あの当時、東京ガスの跡地は相当に汚染されているという情報は、国政サイドに至るまで、実は広範囲に知られていたんです。

──え、そうなんですか!?

腹心氏 私自身、とある代議士筋から、さるタニマチ業者を土壌浄化事業に参入させてほしいという陳情めいた話を受けたことがあります。

 少なくとも当時、土地浄化の先端事例は、何と言ってもアメリカでした。広大な軍事基地の土壌浄化を何度も実施しているため、ノウハウや技術が民間企業の間にも広く浸透しているんです。

 結局、豊洲の浄化事業を国内ゼネコンが請け負うのは当然として、事例の乏しい国産技術だけでやるか、アメリカの特許技術を導入するかという大問題が存在したんです。

 つまり盛り土という方法を選択しようとしたのは、アメリカほどの特許を取得できていないことが大きな背景だったんです。対処療法的にやろうとしたとも言えます。

 専門家が提言したように、盛り土でも科学的に充分な効果があるなら、それでいいのかもしれません。とはいえ、土地浄化の方法をアメリカ特許にするか、日本技術にするのかというせめぎあいだけでなく、どこの会社が請け負うのか、参入できるのかというバトルも凄まじいものがありました。そんな水面下の騒動が、代議士サイドの陳情にまで発展していたわけです。

 そうした蠢きの1つ1つを、知事に報告するようなことを、現場がするはずがありません。仮に、石原さんが毎日登庁していて、豊洲移転を最重要課題として位置付けていたのなら話は別です。

 ですが当時、石原都政は新銀行東京の処理を筆頭に、政治の重要案件が目白押しでした。石原さんの中で、市場問題は既に豊洲移転で決まりだという認識は、噓偽りのない事実だと思います。

──当時の知事本局長だった前川燿男・練馬区長の関与が取りざたされています。

腹心氏 石原さんの発言は、誰が責任を負うのかという観点から見れば、事実ではないでしょう。ただし、実態としては当たらずとも遠からずというところがあります。

 つまり、不作為の連鎖なんです。前川さんが知事本局長だった時期でも、前川さんが全ての決裁権限を持っているわけではないのは、先に見た通りです。

 各部局が決裁を積み重ねていき、最後の最後に前川氏が目を通すわけです。となると、例えば瑕疵担保責任の問題は、どの段階で決定されたのか、前川氏が決定したのかというのは組織図のレベルでは何とも言いようがありません。それこそ百条委員会が解明を迫られているわけです。

 当時は副知事だった、浜渦武生氏が決着をつけるべく、東京ガスと大まかに合意。細部の詰めを〝事務レベル折衝〟として部局員と東京ガスの社員が積み上げていく。そうした中で、組織としての意志も責任者も存在しないまま、「上は決着させようとしているのだから」と「顧慮」という不作為の連続で──現在の流行語なら「忖度」ですか──知事本局まで辿り着いた可能性も否定できません。

 今回の騒動を、前川さんは「とばっちり」だと怒っているようですが、彼のキャラクターを考えれば理解できなくもないんです。

 前川さんは神輿に載せられて、祭り上げられるのは大好きです。ですが、細かな作業は決して得意ではありません。前川さんは東大法出身ですが、同期には他にも何人か東大卒がいました。彼らの誰もがキャリア官僚になれなかったコンプレックスを持ち、都庁内での出世欲は著しく強く、それ故に職員から慕われることはなかったんです。

 前川さんの同期は反石原派も多かった。ですから、同期の中で前川さんはうまく泳いでいた方ですよ。本人としてはいよいよ副知事を狙うか、というところで外に出ることになったので大変に不本意だったようですがね。

──つまり、前川氏には責任はないということでしょうか。

腹心氏 責任者は誰かという問いに対しては、やはり「稟議書に判子を押した人間、もしくは稟議書を上げた部署全体」が答えになるはずです。石原さんだって、会見では、そういうニュアンスのことを言おうとしていたように見えました。

 石原会見の最後に、毎日新聞の元政治部長が、なぜ浜渦武生氏に問い質さないのか、それが石原さんの責務だ、というようなことを言って、迫っていましたね。しかし、石原都政の内実は極めて複雑で、決して一枚岩ではなかったんですよ。

 何しろ、お殿様は週に1度しか出勤しません。となれば、家老たちが実務を処理するために蠢かざるをえないわけですが、どれほどリーダーシップに富んだ大名であったとしても、家老の思惑とは複数存在するものでしょう。表面的には「親分が白を黒と言えば、黒と同意する」ように見える部下でも、実は面従腹背だというのは、決して珍しいことではありません。

 当時の石原知事が、「ここは浜渦に確認が必要だ」と考え、実際に会って問い質す場面もあったでしょう。しかしながら、石原さんとしては腹の底で熟知しているわけですよ。「訊くのは簡単だ。だが果して浜渦は、何もかも全て正直に、自分へ報告するだろうか」と。

 石原陣営というのは、側近の1人1人が、有力代議士クラスの権力と差配力を有していましたからね。 そんな部下を、石原さんがトップダウン式に何もかも指示していたかといえば、そんなことはないですし、そんなことをする必要もありません。

 石原都政の原動力は、実は石原大名と家老側近たちとの、ある種の拮抗関係に存在したんです。側近が石原さんを利用している部分も多かったですよ。大名は大名を続けたいし、家老も同じです。「お家存続」のため、互いをWin-Winの関係に持っていく。阿吽の呼吸の中で、「問い質さない」「報告しない」「誰にも言わない」といった様々なことを抱えて、現在に至っているんです。

 難しいことを言わなくとも、政治家と秘書の関係を思い出してくれれば分かってもらえると思います。そうした綾を石原さんは熟知していますし、浜渦さんも同じです。つかず離れず。互いに絶妙な距離感で動いているんです。

 同じ関係は、知事本局と他部局の間にも存在します。そこには「顧慮」「忖度」という不作為が生じ、その積み重ねが「瑕疵担保責任」の問題を担当していた職員は誰だっけ……? という話になってしまう。

 前川さんが東京ガスに天下ったというのは、いかにもな構図なので、疑惑の目が向きやすいのは言うまでもありません。しかしながら、役人とは臆病なものです。特に前川氏のように神輿に乗せられるのが好きなタイプほど、疑心暗鬼もまた強烈です。パターン通りの贈収賄的関係には応じないはずなんですよ。

 しかしながら、前川さんが例外ではないという保証も、同じようにありません。確かに、あの人は権力欲と名誉欲が強烈で、それは公務員の世界では例外的な感覚です。

 以上、私の解説や推測が、正鵠を射ているのかは分かりません。しかしながら、今回の百条委員会を見る際、前知識としてなら少しは役に立つのではないでしょうか。

(無料記事・了)

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