2017年8月24日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・最終回

2017-08-24 11.21.30

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の最終回は、西村氏の「本質」解明に花田・本堂両氏が挑む。

◇第11回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000523/
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【写真】『無敵の思考 ――誰でもトクする人になれるコスパ最強のルール21』(大和書房)カバー写真
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b286965.html
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花田庚彦氏(以下、花田) そろそろ、まとめに入りましょうか。

編集部(以下、編) 西村さんはPCやネットが大好きで、大好きで、というタイプではなかったわけですよね。

西村博之氏(以下、西村) まあ多分、そうですね。

編 それがどうして、今のお仕事のような世界が視野に入ってこられたのですか?

西村 便利だからというのが1つです。それともう1つは、さすがに今は無理だと思うのですが、僕が手を出した当時というのはまだ企業が本気で大金を突っ込んでサイトを作る時代ではなかったので、個人が太刀打ちできる状況だったんですね。

 現在は個人サイトが話題を集めるというような話は、アプリならまだありますけど、ネットではほとんど聞きません。ですから僕が入った頃は、まだまだ広大なフロンティアが存在していた、かなり楽な時代だったと思います。

編 個人的な話で恐縮ですが、私は1996年に初めてインターネットにアクセスしたんですが、確かに個人サイトばかりでしたね。そもそもYahoo!で検索すると、結果がフォルダで表記されていました。

西村 サーファーと呼ばれる人たちが、人力で検索結果を整理していた頃ですね。

編 そうです、人力がYahoo!の売りでした。

本堂まさや氏(以下、本堂) ディレクトリ型ですか。

編 僕は「どこが楽しいんだろう」と全く理解できなかったんです。あの頃に可能性を見出されたというのは、やはり只者ではないという印象を受けるのですが。

西村 僕が2ちゃんねるを作った時はアメリカにいました。海外でも日本の情報が手に入る場所というのは便利だろうなという考えがあったんです。

 また電話を筆頭に、1対1で人がコミュニケーションを行うメディアはたくさんありましたが、n対nで大勢の人が話をするメディアというのはインターネット以外に存在しなかったんですね。

 昔なら雑誌の読者欄が、それに最も近いものの1つだと思いますが、あれは編集側がピックアップしたものだけが掲載されていたわけです。何もかもがオープンに書けて読めるというものはネットしかできないし、それは面白いはずだと思ってやってみると、実際に面白い。面白いと思って続けていたら、それなりに回るようになって、次第に会社としても大きくなっていったという感じですね。

編 Niftyの会議室とは異なるのですか?

西村 そういう意味では、パソコン通信の延長線ですね。

編 パソコン通信は、やっておられたのですか?

西村 やっていました。ですから割と、そうした文化に、すんなりと入っていけたのかもしれないですね。

編 自分にとって面白いもの、というのが基本だったということですか?

西村 いえ、違います。「自分にとって面白いもの」ではないですね。

編 となると、どう表現して下さいますか?

西村 編み物の掲示板は、僕にとっては何の興味もありません。でも、2ちゃんねるには、そういう掲示板があります。人が話す場所をつくったら、それでどういう話をするのだろうというような、人がどう動くのかを見たいという観察したいほうが先で、それが僕個人にとって役に立つかどうかというのはそんなに重要視していなかったのです。

編 2000年に東北地方で、相当な高齢者の方が、2ちゃんねるを使って保険の情報を熱心に見ていたんですね。あれには感動しました。

西村 地方の方が、情報が欲しいとネットしかないという状況が、早く訪れました。アメリカも似たようなものです。

花田 じゃあ本当に、まとめの質問をしよう。結局、2ちゃんねるで最高、どれくらい儲けたの?(笑)

西村 最高ですか?(笑)

花田 最高月収にしようか。

西村 月収でカウントしたことはないですね。でも、一番儲かっていたのは、『電車男』が売れていた時で間違いないと思います。

花田 最盛期のアクセス数って、どれぐらいあったの?

西村 アクセス数は、すぐにカウントしなくなったんですよ。

花田 面倒なの?

西村 一応、出そうと思えば出せるんですけど、あまり出すことに意味を感じないんですよね。

本堂 ひろゆきの面白さは、数えきれないほど取材を受けているはずなのに、将来のビジョンといった「決め台詞」を持っていないところです。飄飄とした、という言葉は、ひろゆきのためにあるものでしょう。

西村 そんなに皆さん、決め台詞を用意しているんですか?(笑)

本堂 僕はないですけどね(笑)

西村 決め台詞がある人の方が少ないですよ。

本堂 でも、「将来のビジョン」といったことは必ず訊かれるはずですよね。それに答えを用意していないわけでしょ?(笑)

花田 政治家になる気が絶対にないじゃない。

西村 ないですね。

編 そこが堀江貴文さんとの最大の違いという説は根強いものがあります。

西村 堀江さんは本当に社会をよくしようと考えて出馬したんですから、偉いですよ。

花田 ひろゆきは思っていないの?

西村 無理でしょう(笑)

編 でも以前、かなり辛辣なことを仰っておられましたよね。「堀江さんは、お金が入ってこないと自己承認されない人なのでしょう」と指摘しています。

西村 経営者というのは大体、そういうものではないでしょうか。会社を大きくして、上場させて、それで自己承認をなし遂げる。

編 西村さんは、そういう自己承認を必要としていないですよね?

西村 そういう意味で、僕は経営者ではないですね。

本堂 経営者ではなく、管理人だと?

花田 なるほど。

編 それ、まとめに使わせてもらえると助かります(笑)

西村 いや、管理人でもないです。何でしょうね。例えば孫正義さんや三木谷浩史さんというのは、やはりちょっと、どこか壊れていると思うんです。

 自分が使うお金のために働いているわけではないですよね。あのライバルに勝ちたい、会社を大きくしたいという方に力点を置いているわけですけど、それは結局のところ抽象的な、実態のない目標という気がするんです。僕は、もっと寝たいとか、ゲームをやりたい、という方に力点を置きます。

編 楽をするために、どうやって収入を得るかが大事と、先ほどから仰っています。

西村 ゲームと仕事は、僕の中でランクは一緒です。仕事もゲームもパズル。だからやるという感じですね。

編 ワーカホリックですか?

西村 ゲームと仕事がごっちゃですからね。仕事が面白いと思うと、結果として長い時間を投下するので、ワーカホリックに見られる場合もあります。

編 逆に、「この人はいつ働いているんだろう?」と不思議がられる時間帯もあるということですね?

西村 まあ、大体そうですね(笑)

編 ゲームから仕事へのモードが変わるのは、どういう時なんですか? 降ってくるんですか、それとも探すんですか?

西村 探している時もありますし、続けていると面白くなる時もあります。

編 最近、ワーカホリックモードになられたことはありますか?

西村 4chanを引き継いだときは、割と面白いと思っていました。やはり外国人のほうが狂っていますからね。日本人というのはある程度モラルのラインがあるのですけれども、もう英語圏の人たちは全然ないので面白いなと思いました。

花田 これで、ひろゆきが、いい人に仕立て上げられるかな?(笑) 適当な人間というのを全面に出した方が面白いけどね。

西村 別に、いい人ではないと思いますよ(笑)

花田 じゃあ、平成の植木等ということにしておこう。

西村 まさか(笑)

編 それこそ、ご自身を形容する表現などは、お持ちなんですか?

花田 だから平成の植木等だって(笑)

西村 自分に優しい、ですかね。

編 他人には?

西村 時と場合によります。

編 厳しい時もある?

西村 どうでしょうか。ただ、自分ができないのが分かっていますから、他人に強要はできません。だから僕は人を怒れないんです。遅刻する人を怒れませんよね。僕が遅刻するんですから。

編 怒れないという性格は、どれぐらいまで遡れるんですか?

西村 昔から、人の失敗や欠点を指摘することはできました。ただ、怒るというのは……。あまり僕は人に怒ってこなかったですね。

編 「それは問題だ」とは言えるが、「問題じゃないか!」と怒りは爆発させられないということですね。

西村 怒鳴りたいという状況にはなりません。

花田 じゃあ、最近怒ったことは何?

西村 さっきから考えていますけど、思い付かないですね。

編 奥さまにも?

西村 ないです。怒られることはいっぱいありますけど(笑) 他人を怒って物事がうまくいったという経験が、多分人生でないんでしょうね。

編 怒られたことはありますか?

西村 それは小さい時から、いっぱいあります。

編 ご自身も怒られて、物事はうまくかなかったですか?

西村 そうですね。遅刻を怒られて遅刻癖が治ったらよかったですが、やはり変わっていないですからね。本堂さんは怒ります?

本堂 私も怒ることはないですね。怒って物事がうまくいかないということではなく、単純に怒るタイプではないという感じです。もしくは、周りが私に気を使ってくれているのかもしれません。

花田 後者です(笑)

西村 何をされるか分からないから(笑)

本堂 ひろゆきと一緒で、僕も嫁にはすごく怒られます(笑)

編 最後に1つだけ、お願いします。ゼロ年代の象徴という感じで取り上げられることが少なくないですが、どのようなお考えをお持ちですか?

西村 ゼロ年代の象徴という取り上げられ方をされましたか? 76世代ということで名前が挙げられたことはあると思いますけど。

編 76世代でも大丈夫なのですが、そう言われても好きも嫌いもなく、特等席から眺めている感じですか?

西村 76年生れでネットをやっている人間、ということで僕がピックアップされただけですからね。それに特別な意味はないと思っています。

編 事実は事実だが、その他には何の意味もない、という感じですか?

西村 76世代は全員が性欲強いとか言われたら反論しますけど、76年生れですが、それで何かありますか、ということですね。

編 世代論の象徴的人物として名前が挙げられたことはあると思うのですが。

西村 氷河期世代としてくくられている部分はあるなと思います。社会に対して、それほど期待をしていないんですよ。バブル世代の人は全てにおいてとてもやる気があるじゃないですか。

編 確かに西村さんの頃は、最も酷い氷河期でしたね。

西村 僕らより年下になると、ネットはビジネスをする場です、というようにビジネスに重きを置きます。でも僕はビジネスをするためにやっていたわけではなく、面白いからやっていただけという派閥ですから、そういう意味では、ある種の世代の象徴として取り上げられるかもしれないとは思います。

編 本当に、ありがとうございました。

西村 ありがとうございました。

(了)

2017年8月18日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第11回

2017-08-17 12.25.38

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第11回は、書き込み削除要請に関する、極めて実戦的な法律論が盛り上がった。

◇第10回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000522/

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【写真】政府広報オンライン「インターネットを悪用した人権侵害に注意!」の「法務省:不当な書き込みの防止に向けたポスター」より
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200808/3.html
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編集部(以下、編) 「日本人の若者はデモをしない」「日本人はデモをしても暴徒化することはない」などという常識を信じていますが、崩れないという保証は全くないというわけですね。

西村博之氏(以下、西村) 経済、景気がよくなれば常識が維持されるかもしれませんが、少なくとも今のところ、経済状態の好転は望めません。そういう意味では、常識の崩壊は時間の問題という気がします。

 デフレから脱却しないですからね。

西村 デフレと不景気を、ごっちゃにしていませんか?

 少なくとも現時点では、イコールではないのですか? バブル崩壊後、日本経済は一貫してデフレであり、だからこそ不景気である、というわけですよね。

西村 僕はデフレのおかげで、そこまでの不景気にはなっていないと考えています。

 物価が安くなることで、購買力が確保されているというわけですか?

西村 モノが買えなくなると、それこそ死ぬしかありません。物価が安くなっているから、何とか買える。それで何とか収まっていると思います。

 デフレ経済下で業績を伸ばした会社には、例えばユニクロやサイゼリヤがあります。

西村 でも値段を上げたユニクロは売れなくなり、更に下げたしまむらは業績を伸ばしています。本当に安いモノしか、誰も買わなくなりました。

花田庚彦氏(以下、花田) (本堂まさや氏を見ながら)普通ではない人は、こうして高価なスーツを着ていますけどね(笑)

西村 (笑)

本堂まさや氏(以下、本堂) 確かに普通ではないかもしれません(笑) そもそも、まだ弁当(註:執行猶予)が2年、残っていますから。

花田 残っていたっけ!?

西村 残ってたんですか!?

※編集部註
 本堂氏は2013年、有料放送を無料で視聴できるよう「B-CASカード」を書き換える不正プログラムをインターネット上で販売するなどしたとして、不正競争防止法違反や不正作出私電磁的記録供用罪などの容疑で逮捕。同年、京都地裁は懲役2年6月、執行猶予5年を言い渡した。

本堂 執行猶予5年ですから。

花田 5年かあ。めちゃくちゃに付いたんだね。

西村 結構、長かったんですね。

本堂 長いですよ。裁判官も最後に「まだやるんだろう」と、「再犯の恐れがある」と言っていましたから(笑)

花田 今もB-CASのことは記事にしてるの?

本堂 たまにはやってますね。

花田 たまにって(笑)

本堂 もう作り方は配信していません(笑) 実のところB-CASの問題は、有料放送を運営する会社が対応版をアップデートするんですが、そうすると違法側も更に対応するんですよ。本当は運営側が放置しておけばいいんです。ところが変に対応してしまうから、逆に儲けさせてしまっているということがあるんですよ。

 皮肉なことに、ビジネスチャンスを作ってしまっているわけですか。

本堂 そうなんです。どうせ対応版が出てしまうんだから、結局は放っておくのが一番なんです。

西村 面白いですね。こういう悪い話を聞いたのは久しぶりです(笑)

花田 最近のひろゆきは、メディアの善人だもんね。

西村 こういう話をする人は、もう周りにいなくなってしまいました(笑)

本堂 様々な会社で役員を歴任しているわけですから、コンプライアンス問題が厳しいから、花田さんなんかとは付き合えないでしょう?(笑)

花田 僕には何の問題もないぞ(笑)

編 コンプライアンス問題は置いておきますが(笑)西村さんにも様々な変化があったにもかかわらず、体形や雰囲気、ファッションセンスは変わらないという鼎談前半の話を思い出しました。

西村 僕はパリだと大体、自転車で移動します。だから、そんなに太らないのかもしれませんね。35ユーロぐらい払うと、パリ中に20万台ぐらいあるというレンタル自転車を45分間、使えるんです。

 マンハッタンは山手線の内側ぐらいの広さ、と言われますが、パリの広さは、どんな感じなんですか?

西村 パリも同じです。山手線の内側ぐらいですね。端から端まで自転車でも30分かからないぐらいですから、便利ですよ。

 それだと自転車が本当に便利ですね。

花田 昔に比べると、カネも名誉も手にした。

西村 根本的には、あまり変わっていないと思うのですけれど。

花田 それは生き方のことを言ってるんだよね?

西村 はい。

花田 ひろゆきのことで強い印象に残っているのが、昔、部落解放同盟が抗議に来たことがあったよね。その時に「何も知りません、分かりません」と言い続けて、相手も諦めてしまったというね。あのスタイルが、すごく印象に残っている。

 いつ頃の話ですか?

花田 2ちゃんねるを立ち上げて、すぐの頃だよね?

西村 最初の頃ですね。毎日、部落解放同盟から葉書が1通、届くんです。それだけなので、全くの謎でした。たまに筆跡も変わるので、1人の行為ではなかったと思います。

 掲示板に何か載ったのですか?

西村 どこの地域が部落だという書き込みがあったんです。削除要請を受けて、「法律に触れるのであれば削除します。根拠を教えて下さい」と質問すると、「法律に触れる問題は特にない」という回答が来ました。「それではどうしようもないですね」と削除要請を拒否すると、ずっと葉書が送られてくるようになったんです。

 その後、では1回話し合いをしましょうということになって、もう場所は覚えていないのですが、岡山の方と僕と、そして法務省の人と話したんです。その時に、花田さんが言ったように「何も知りません」と答えたわけです。

花田 基本、ひろゆきは、そういうスタンスですよね。

西村 知らないものは知らないので。

花田 それでずっと、20年メシを食っている。削除しようと思えば、できるんでしょ?

西村 そうですね。ただ、削除を行うには根拠が必要です。今の2ちゃんねるは、もう僕の手を離れてしまいましたけど。

 表現の自由という言葉が出てこないのも、興味深いです。

西村 表現の自由というのは結局のところ、感情論じゃないかと思うんです。「これは表現の自由で守らなければならない」「これは守らなくてもいい」という価値判断は究極的に正しい、間違っているという判断がつけられないものでしょう。犬と猫のどっちが好きかという問題と変わりません。

 感情論という表現も面白いですね。

西村 そうですか?

編 表現の自由は憲法で保障されている、とハードに論駁することもできるはずですよね。

西村 しかし、部落差別が禁止されているのは、憲法が理由であるのも事実です。ただ、具体的な落し所を探るには、今度は法律が必要になってくる。今の日本に「部落差別を行う書き込みは削除しなさい」と命じる法律は存在しません。必要なら作るしかないわけで、そうした法律ができたら従います。しかし、法整備が行われてないということは、必要のない法律だからとも言えます。そういう意味において、僕は自分のことを遵法主義者だと考えています。

花田 民事訴訟は結構、来てるでしょ?

西村 もうないですね。

花田 もうないんだ。

 未払いの慰謝料が億単位という話もありましたが?

西村 10年で時効ですから、今はゼロですね。

 もう時効を迎えたのが、そんなにあるんですか?

花田 判決が出て、慰謝料が支払われないと、内容証明を送れば時効が延長されるんじゃなかったっけ?

西村 そうです。延びます。

花田 内容証明、来てないの?

西村 基本、みんな送ってきませんよ。

花田 そうなんだ。

 意外に諦めてしまうものなんですね。

西村 延ばしても意味がないんですよ。結局、僕からはお金が取れないし。

 「お金が取れない」というのは半分は事実だと思います。しかし、ありとあらゆる法的な技術を駆使したら、違う結果になるような気がしますが?

西村 可能な場合もあります。ただ、そこまで努力して、それに見合うのかという話ですね。

花田 前に『電車男』を発行した時、版元の新潮社から印税を押さえた人がいたんじゃなかったっけ?

西村 そうですね。そういう方法で、頑張る人はいます。ただ、あれも新潮社が拒絶しようと思えば、法的には可能でした。新潮社は面倒くさいから払ったのだと理解しています。

本堂 DHCが、物凄い金額になりましたよね?

西村 最終的に、いくらになったのか……。400万円で、1日5万円の制裁金が付いていたはず……。いや、1日じゃなかったかな……? とにかく、何年も積み重なったので、物凄い額になったのは事実です。

本堂 ひろゆきが以前、インタビューに答えて「慰謝料を取れる権利を得ただけだ」と言っていて、確かに正論だと思いました。

西村 取るのが大変なんですよ。

本堂 回収の方が大変ですよね。

花田 回収は大変だよ。

(最終回につづく)

2017年8月10日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第10回

2017-08-10 13.39.27

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第10回は、「ヨーロッパと日本における、若者の共通点」を、西村氏が間近で体験した「パリ同時多発テロ事件」をベースに語ってもらう。

◇第9回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000520/
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【写真】フランス内務省公式サイトより
https://www.interieur.gouv.fr/
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編集部(以下、編) 他に、住んでみたい候補地というのはありますか?

西村博之氏(以下、西村) 取りあえずフランスは永住権を申請できるぐらいまではいようと思っています。

花田庚彦氏(以下、花田) あと何年?

西村 あと4年です。そうすると永住権が申請できます。

編 グリーンカードのようなものが取得できるという理解でよろしいのですか?

西村 そんな感じですね。

本堂まさや氏(以下、本堂) フランスの場合、傭兵部隊に入っても、同じものを申請できますよね?

西村 そうです、同じものをもらえます。

花田 激裏情報だ(笑)

西村 日本人でも、フランスの傭兵部隊に入った人がいますからね。

花田 ひろゆきには、赤羽台団地のイメージしかないんだけどなあ(笑)

西村 出身ですから(笑)

編 西村さんをお待ちしている間、花田さんと本堂さんが「赤羽からパリはサクセスストーリーだよな」と話しておられるのが印象的でした。

西村 でも、アニメが好きでフランスから日本へ来る人もいるでしょう。それはサクセスではなく、単なる移動だと思います。

編 でも「赤羽からパリへ」という言葉は、単なる移動を超えたイメージの広がりがあるのは事実ではないでしょうか。

西村 フランスを選んだ理由の1つに、みんなフランスに価値があると思い込んでいる、というのはありました。

花田 確かに、日本だけじゃなくて世界的に、フランスは格好いいというイメージはあるね。

西村 僕はそこまで思ってはいないんですが、勝手に誤解をされて得をすることはないかなと考えていたんです。すると、本当に2日前なんですが、初めてフランスに住んで得をしたことがありました。

 2日前、あの美輪明宏さんとテレビ番組でご一緒したんです。その時、「こちらは2ちゃんねるを作られたひろゆきさんです」と紹介されると、美輪さんが「ああ、あの残念な方ね」というようなことをおっしゃったんですよ(笑)

編 いきなりですか(笑)

西村 美輪さんは2ちゃんねるが嫌いですから、僕のことも嫌いなんです。

 ところが、美輪さんはフランスが大好きでしょう。だから僕がフランスに住んでいるということが分かった途端、親しげに話をしてくれました(笑) 

 フランスに住んで得をした、人生で得をすることがあるのだと思いましたね。

本堂 パリ同時多発テロ事件の時、テレビに出演しましたよね?

花田 出てたっけ?

本堂 見た記憶があるんですよ。

編 コメントをされたんですか?

本堂 いや、津田大介さんの電話取材を受けていませんでした?

西村 テレビではなく、ニコニコチャンネルではないでしょうか?

本堂 そういえば、そうだったかもしれません。改めて、あの時は、どんな感じだったんですか?

西村 それが、気がつかなかったんです(笑)

編 現場から離れていたんですか?

西村 東京23区で言うと、テロの現場が銀座だとすれば、そのころに僕が住んでいたのは世田谷、というぐらいの距離ですね。「何かあったらしいぞ」という情報ぐらいしかなかったのですが、戒厳令は敷かれました。自宅近くは普段なら車も人も交通量の多い場所なんですが、全く跡形もなく消えてしまって、それが面白かったですね。あちこちうろうろと散歩してしまいました。

編 パリ同時多発テロ事件は15年11月に起きましたが、そもそも同じ年の1月、諷刺週刊誌『シャルリー・エブド』本社が襲撃されましたよね。その後、パリでは自動小銃を手にした警官の姿がクローズアップされましたが、そんなパリに暮らされて、どんな感想を持たれましたか?

西村 住民の実感としては、厳しい警備のおかげで、非常に治安がいいんです。夜中に歩いても、何の危険も感じません。

花田 それだと逆に面白くないんじゃないの?

西村 いいえ、別に強盗にあいたいわけじゃないですから(笑)

 夜中に歩いても、全然危険な感じがしないので、本当に楽です。それだけ、犯罪者は射殺を恐れているようですね。日本人で外人部隊に所属している人がTwitterで報告してくれましたが、彼はパリ所属ではないのですが、応援で呼ばれたそうなんです。

 パリの警備に当たる際、射撃訓練を受けたそうなんですが、不審人物を発見した場合は「ムッシュ、止まって下さい」と3回警告する。しかも3回目は引き金を引きながら呼びかけろという訓練だったと言います。日本の場合は、撃つ訓練まではできないじゃないですか。

花田 できないよね。

西村 呼びかけながら撃てという訓練をしていると知って、さすがだなと思いました。普通の犯罪者なら、悪いことはできないですよ。

編 東京でも、サミットの時なんかに特別警戒を行うと結構、泥棒の逮捕者が増えたり、手配の容疑者が見つかったりすると聞いたことがあります。

花田 でも東京でもパリでも、そこまでの警戒になると、反対に地方が手薄になるから、そっちの泥棒なんかは増えるだろうね。

西村 そうですね。

編 今後の目標とか、何かお持ちですか?

西村 フランス語は、きちんと喋れるようになりたいと思っています。今は日本の中学生が卒業したときの英語ぐらいです。基本的な文法構造と単語は分かるけれども、アメリカ人が何を言っているかは全然分からないというようなレベルなのです。ですから、もうちょっとしゃべれるようにはなりたいですね。

花田 ひろゆきは、今の日本の政治について、どう思っているの?

本堂 すごいところを斬り込んできますね(笑)

花田 もう、まとめに入ってるから(笑)

西村 何だかんだ言っても、日本は自力がありますから、何とかなっているなという感じで見ています。

花田 そういう今の態勢は、ずっと続いていく?

西村 長期的なスパン、例えば30年後だと続いていないかもしれないと思います。でも10年ぐらいだったら大丈夫じゃないでしょうか。

花田 その長期的なスパンの問題が、それこそひろゆきが日本にいたら先はないと海外に出た理由の1つだよね?

西村 この国は危ないという感じはあります。ただ、今はヨーロッパの方が難民問題などで問題だらけですけど(笑)ヨーロッパの将来が本当に危険になれば、日本に戻ればいいだけの話です。ただ、日本だけが常に安全かと言うと、そんな気はしません。

編 外国にいると、日本のことがよく見えると聞きますが、どうですか?

西村 いや、よく見られるのは日本国内にいる時です。フランスにいると、日本とフランスを比較することができるので、そういう意味で「見える」ことはあります。

 例えば、ヨーロッパは若者の失業率が非常に高いです。そして日本も多分、同じようになるだろうと見ているわけです。実際、若者の非正規雇用は増え続けていて、ヨーロッパでも日本でも若者の鬱憤がたまっています。

 フランスで若者のデモは日常的ですが、日本でも例えばSEALDsのデモが話題になりました。どちらも解決を求めているのではなく、若い人たちが暇をぶつける対象が必要でやっているんです。本質的には一緒ですね。

 ヨーロッパでは過激なグループが出現し、車を燃やしたり、警察署を焼き討ちしたりしました。日本では見られない現象ですが、僕は時間の問題だと考えています。

編 昔は日本でも、若い人たちが燃やしていました。

花田 全共闘世代とかね。でも、あの時は反対することが格好いいという風潮があったでしょう。

本堂 一種のファッションですよね。

西村 日本で、またファッションで始まったら、また広がっていきます。

本堂 ひろゆきが、その先陣に立つわけですね(笑)

花田 だね(笑)

西村 僕がやる必要ないじゃないですか(笑)

花田 充分に資格があるよ。「やるぞ」と言えば、みんなついてくる。

西村 まさか(笑)

編 冗談はさておき、日本でも再び若者が暴れますか?

西村 あまり報道されませんでしたが、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島に若者が車で入って、色んなものを盗んで帰ったんですよね。それと同種の動きが出る可能性はあるんじゃないでしょうか。例えばデモを銀座でやるんだけど、その中の1人でも宝石を盗むことに成功した奴が出ると、次のデモからは泥棒目的の参加者が増えていく、というイメージですよね。今は「さいしょのきっかけは誰だ」ということであって、起きるのは時間の問題ではないでしょうか。

(第11回につづく)

2017年8月4日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー③

2017-08-04 14.57.05

 詐欺の疑いが濃厚な「シナジーブックス」という異業種交流会の被害者インタビュー。第3回は、いよいよ被害者が現金を用意し、詐取される場面だ。

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【写真】国税庁公式サイトより、源泉徴収票
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/23100051.htm
■――――――――――――――――――――
(承前)
──次のステップは、向こうは何をしてくるのですか?

被害者男性(以下、被害者) 銀行から借り入れようということになって、「いくら借りましょうか」という相談と、「借り入れを行うためには源泉徴収票が必要なので用意して下さい」という説明がありました。

 そのため年末調整で会社から送られてくる源泉徴収票が自宅にあったので、それを写メで撮影し、無料通話アプリのLINEで送りました。

 すると、私はサラリーマン時代の給与が低かったので、源泉徴収票を見た向う側が「これだと、あまり借り入れられませんね。大きく運用できないですね」と言ってきたんです。

 そのため、最終的には向こうが源泉徴収票を偽造して、私の給与を増やしました。

──これは立派な有印私文書偽造罪ですよね?

被害者 私は詳しいことは分かりません。

──源泉徴収票を偽造するための費用を、何かの理屈で請求されませんでしたか?

被害者 いえ、びた一文、要求されていないですね。

──偽造した源泉徴収票を持って、どこに行くように言われましたか?

被害者 メガバンク2行です。いつの時点か記憶はありませんが、向う側が「消費者金融も使えるけど、あなたの信用情報は綺麗だし、先々のビジネスを考えると銀行の方がいいだろう」と言っていました。

──結局、審査は通った?

被害者 通りました。1行で200万円、1行で100万円の借り入れを依頼したんですが、私の口座に振り込まれました。

──偽造された源泉徴収票は今、どこにありますか?

被害者 済んだら返して下さいと言われて、返しました。

──振り込まれたお金は、どうしたんですか?

被害者 口座から出金して、現金を椿屋珈琲店に持っていきました。

──これまでに投資をされたことはありますか?

被害者 証券会社を通じて株を買ったことがあります。3、4年前だと思います。

──もともと、投資に興味があったんですか?

被害者 興味はありました。投資についての知識を多少は持っていると思っています。

──知識があったなら、向う側の説明に疑問を感じたりしなかったんですか?

被害者 完全に信じていたわけではないんです。引っかかった場面も、何回かありました。向う側も強引に説き伏せてきたわけではありません。それでも騙されてしまったというのは、やはり独立の不安から、「定期的に現金が入ってくるなら、それは助かるな」と期待してしまったというのは大きいと思います。

──今のような冷静な精神状態だったら、詐欺だと気づきましたか?

被害者 だと思います。

(第4回につづく)

2017年8月3日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第9回

Instagram 2017-08-03 13.11.41

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第9回は、Twitterの「大問題」と、〝利子生活者〟たる西村氏の「生活哲学」を浮き彫りにする。

◇第8回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000518/
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【写真】Instagram公式サイトより
https://www.instagram.com/
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編集部(以下、編) 自分が運営している掲示板で、様々な人が蠢いている。その中には違法な書き込みも含まれているが、それを含めて〝特等席〟で見ている、というわけですね?

西村博之氏(以下、西村) Twitterで何かやらかした人が出ると、それを見て面白いと思うのと、本質的には変わらないと思います。

編 私が以前、勤務していた雑誌が廃刊になり、その話題が2ちゃんねるのスレッドになったんです。半分はデタラメな書き込みなんですけど、残りの半分は恐ろしく正確でした。完全に内部情報でしたね。特等席という表現は、分かるような気がします。

花田庚彦氏(以下、花田) 2ちゃんねるの書き込みは、当事者に近い人たちが書いているものは少なくないだろうね。

西村 へえ。

花田 相変わらず、他人事だね(笑)

西村 基本的には他人事ですから(笑)

編 2ちゃんねるの終わり、ということを想像されることはありますか?

西村 2ちゃんねるでなくとも、TwitterやFacebookでも同じことが行われているわけですから、終わらないのではないでしょうか。

編 掲示板という形式の強さがあると思うのですが?

西村 使い勝手とユーザーインターフェースの問題で、今は文字で意思疎通を行うのが基本ではあります。ですが、Instagramのように画像でコミュニケーションを行ったり、YouTubeでも動画で会話をしたりする人もいます。

 そういうことを考えると、文字をツールとして使う場が減少していく可能性はあると思いますね。ただ、消滅する可能性は低いと考えています。新聞や雑誌も、文字のまま残り続けていますしね。

花田 Facebookは廃れてきているイメージだけど、実際にはどうなの?

編 若い女性が、Facebookも高齢者が使うようになって落胆したので、インスタには来ないで下さい、といったことをネット上に書いて話題になりましたよね。

西村 InstagramもイコールFacebookですから、Facebookの閉じた中でFacebookユーザーがインスタに移動するというのはあるでしょう。だからFacebook自体は、ブームは過ぎたけれども、衰退というほどでもない気はします。

 衰退はむしろTwitterです。これは日本ではなくて世界の話ですが、Twitterのほうが今はまずいのではないでしょうか。世界中の会社が、ディズニー、Facebook、Googleも「Twitterは要らない」と言っています。

編 背景はどのようなところにあるのですか。

西村 コストが高過ぎる割に、広告の出しようがなかなかないのです。Twitterが出た当時にTwitter的なものを作ろうとしたことがあるのですけれども、これは投資を受けた金でやれるからやれるのであって自分でシステムを作ったら無理だなと思いました。

 メールで喩えてみるとTwitterの仕組みというのは、例えばフォロワーが100万人いた場合は1つ書き込むたびに、100万人にメールを送っているのと同じ仕組みなのです。

 僕がログインした瞬間に自分がフォローしている人のデータを集める仕組みだったら、ログインするまでは一切データを動かさなくていいからまだ楽なのですけれども、Twitterというのはログインした瞬間にバッと出るでしょう。

 ログインしないような人というのは100万人の中で多分、半分ぐらいはログインしないと思うのですけれども、見もしないデータをずっと送らなければいけないのです。これはコストが悪すぎますね。

 早晩つぶれるか、めちゃくちゃに金を払い続けるかどちらかだろうと思ったら金を払い続けるというモデルで何とかここまで来ました。ですが、やはり利益は出ないモデルですから誰も引き受けません。

編 2倍以上のフル生産をずっとしている工場のような感じなのですか?

西村 工場の比喩なら、Twitterという製造ラインは造っては捨て、造っては捨てを繰り返しているわけです。これは無駄すぎますよね。

西村氏「楽隠居願望」の原点

編 「利子生活者」という言葉なのか「楽隠居」という言い方なのか、いろいろな言い方はできると思うのですけれども、一生遊んで、しかも月3万円の範囲内で金に困らないぐらいの貯金があればいい、と思われたのは、どれぐらいの時期に遡ることができるんですか?

西村 高校ぐらいでしょうか。

編 これから一生、死ぬまで「楽隠居」できそうですか?

西村 よほどのインフレや戦争などがなければ可能かもしれませんが、僕は不可能となる可能性の方が高いと考えています。

編 とはいえ、月3万円ですからね……。

西村 だらだらと暮らせるかどうかというぐらいでしょうか。

編 利子生活が可能になると、明日、明後日、来年、5年後、10年後の行動やビジョンというものは変わりますか?

西村 変わらないと思います。ただ、日本が危なくなったら、ヨーロッパへ行こうというような、逃げ道を作っておくのが好きなんですね。

 別にヨーロッパに行かなくてもいいはずなんです。日本で月3万円で暮らす方法もあるはずなんですが、あえてそういうことをしてしまう。そういうことを考えると、貯金があるかないかというのは、あまり僕に影響を与えないのかもしれません。

 貯金の話なら、例えば銀行が閉鎖されたり、金融社会が完全に消滅したりする可能性もゼロではないですよね。僕は、そういう極端な未来予測も、心のどこかである程度は意識しています。

 そうすると日本だけに拠点を置くのは危険ですよね。日本を切り捨てて、英語とフランス語で暮らす準備もしておこうと考えるタイプなんです。

編 究極のリスクヘッジ、という理解でよろしいでしょうか?

西村 はい、そうですね。 

編 となると、お持ちの資産も、ドル・ユーロ・円というように、外貨も含めて分散させているんですか?

西村 貯金は日本円とユーロですね。

編 それはゲーム的な感覚で遊んでいるんですか? それともリアルに、日本崩壊や、ご自身が命を狙われるような危険性を予測しておられるんですか?

西村 僕の生命に危険が及んでいるわけではありませんし、実際のところ、僕の今の備えも万全というわけではないと思っています。ただ、問題を見つけたら、対処はしなければならないですよね。ゲームというより、パズル的なイメージでしょうか。

編 日本とパリにしっかりと生活の場を確保できている人が、「万全ではない」と考えているというのは、ちょっと珍しい気がします。

西村 確かに、ある程度の危険性は除去できてきているとも思います。日本だけに住み、日本円の資産しか持っていない人に比べれば、僕の方がリスクを減少させているのは確かでしょう。とはいえ、僕が想像するリスクヘッジというのは最終的に「宇宙人が地球に攻めてきたら、どう対処するか」というレベルに達しますので。

一同 (笑)

本堂 そんなことまで想定しているんですか!?(笑)

西村 だから単なるパズルとも言えるんです。本当に、そんな危険性が及ぶとは考えていないですからね。でも、核戦争の危険性を考えるなら、シェルターは用意した方がいいよな、という思考はありますね。

花田 そこまで考えるんだ、なるほどね。

西村 基本的に暇ですから(笑)

編 それって、ある種の勤勉さに通じるのではないですか?

西村 いいえ、単なる暇つぶしですね。

編 やっぱり、暇つぶしという言葉が出てくるんですね。

西村 例えば、完全犯罪をやるにはどうすればいいかというのを想像することって、誰でもあると思うんですよ。実際にする気はないですし、する必然性もない。でも考えて、「あ、1個方法を見つけた」というようなものに近いのではないでしょうか。

編 実際、それだけの資産を持っておられるわけですしね。

西村 余裕のあるうちにやっておいた方がいいのは間違いありません。

編 結局、パリに住むのも、ラトビアに行くのも、暇つぶしなんですか?

西村 うーん、何でしょうね……。日本に生まれて、日本に育ったことは、僕が選んだことではないですよね。ひょっとしたら僕は別の場所の方が合うのかもしれないという、ちょっとした期待感は持っているかもしれません。

 沖縄が大好きだと思っていた人が、北海道に行ってみたらそっちの方がよかったということはありますよね。それと同じことで、色々なところに暮らした方が、住みやすい街を見つけられます。その際、大勢の人が「ここはいいよ」と褒める場所は、とりあえず住んでみたいですね。

(第10回につづく)

2017年7月28日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー②

2017-07-28 9.04.21

 詐欺の疑いが濃厚な「シナジーブックス」という異業種交流会の被害者インタビュー。第2回は、被害者が「信用情報」を自分で取得させられるプロセスを詳述する。

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【写真】全国銀行個人情報センター公式サイトより
(https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/)
■――――――――――――――――――――
(承前)
──勉強会に参加するためには、入会書のようなものは必要だったんですか?

被害者男性(以下、被害者) 必要があったかは分かりませんが、私は書いていません。

──あくまでサークルだから、入会書のようなものはないという感じですか?

被害者 そうだと思います。

──向こうが要求する入会金とは、幾らだったんですか?

被害者 20万円です。

──すぐに払えと、要求されたりするんですか?

被害者 いえ、「今すぐ払わなくても、別にいいですよ」というスタンスでした。

──なるほど。では、勉強会の次は、どうなるんですか?

被害者 その勉強会の中で、「実はライフコンサルというのもやっているんです」という話が出てきたんです。

──ライフコンサル?

被害者 それが投資の話になっていくんです。

──具体的には?

被害者 シナジーブックスとして資金を運用しているというんですね。そこに現金を預ければ、運用益が支払われて、仕事や生活の援助に充てられますよ、という話だったんです。

──相手が初めてカードを切ってきた。これまでは常に人脈の紹介であって、そういう資金援助という話はなかったんですよね?

被害者 私の記憶は、それに近いですね。ライフコンサルという単語は、もっと前から出ていたのかもしれませんが、そこに焦点を合わせた説明はされていません。

──少なくとも記憶には残っていないわけですね。では、ライフコンサルという単語が出てきた時、最初にどんな印象を持たれました?

被害者 お金が定期収入として入ってくるのであれば、すごくありがたいな、というのと、実のところ「でも本当かな?」と疑ってもいました。

──シナジーブックス側は、どの程度、売り込んできましたか? これまでは全くがつがつするところがなく、淡白な関わり方で、それが彼らの信頼性を高めていたようですけれど。

被害者 淡々としていました。「興味がありますか?」「お金を預けてもらっても、預けなくてもいいですけど、どうしますか?」ぐらいの話です。面接の時も「やってもやらなくてもいいですけど、どうしますか」という感じでしたから、トーンは一定しています。パワーポイントで資料を見せられたんですけれど、ライフコンサルも、たくさんある説明の中の1つという感じで、熱心に売り込んでくるようなことはありませんでした。

──向こうは熱心に勧誘しなかったわけですが、どうしました?

被害者 結局、「興味はあります」と答えてしまったんですね。シナジーブックス側は「じゃあ、改めて別の人間にライフコンサルの話を聞いて下さい。進めていけるかどうか確認しましょう」と言うにとどめたんですが、ただ、その時に「信用情報に問題がなければ、銀行から借りたお金でも運用できますから、手持ちの現金が少なくとも大丈夫です」といった説明はされたという記憶があります。

──その「別の人間」が出てきたのは、いつぐらいですか?

被害者 いつだったかなあ……。

──面接が1月、勉強会が2月、となると、3月ぐらいですか?

被害者 まだ相当に寒かった記憶はあります。また、それほど待たされなかったという印象も残っていますね。

──ありがとうございます。では、そのライフコンサルの話が、どのように持ちかけられたか、教えて下さい。

被害者 勉強会の後、ランチ会のようなものが開かれたんです。経営者の人たちといった数人で、渋谷の居酒屋のような場所で、昼食を食べました。

──この時点では、一応は「人を紹介します」ということはしているんですね。

被害者 この段階では、そうでした。

──勘定は割り勘ですか?

被害者 この時点までは、向こうが全額、出してくれていました。

──その昼食会を挟んでから、ライフコンサルの担当者に会ったんですね?

被害者 昼食会で会った女性も、ライフコンサルの担当者に会うということで、では一緒に会いましょうということになったんです。その後、JR新宿駅の改札で待ち合わせをするように言われて、当日に出向くと、1人の男性がいました。ちょっと強面な印象の表情をしていました。

──女性はどうだったんですか?

被害者 後から来るということで、では先に私の方をやってしまいましょうということになりました。

──喫茶店かどこかで、ライフコンサルの説明を受けたのですか?

被害者 いえ、違います。新宿にはCIC(編集部註:割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)の首都圏窓口があるんです。そこに行って手数料を払うと、私が金融機関から借金をしているか、何かのローンを組んでいるか、という情報が開示されるんです。その強面の男性から、そうした説明を受けて、まずはCICに行きました。

──結果はどうだったんですか?

被害者 車のローンと、後は携帯電話の分割支払いが出てきました。

──回答を拒否されても結構ですが、消費者金融からお金を借りたことはありますか?

被害者 一度もありません。

──強面の男は、情報の開示を求めている際、一緒にいるんですか?

被害者 そもそも同席はできないんです。私が手数料を払い、情報を取ってくるのを待っていました。

──信用情報を入手して、どうしました?

被害者 場所の記憶が曖昧なんですが、新宿にあるホテルの喫茶コーナーに行った覚えがあります。そこにライフコンサルの「担当者」が待っていました。最初に改札で会った強面の男性は、この担当者の部下だったようです。

──昼食会で会った女性は、結局は来たんですか?

被害者 後に来ました。

──その女性と、ご自身は、最終的には別々にさせられたんですか?

被害者 はっきりとした記憶はありませんが、僕の話が進んでいる時も、女性は同席していたはずです。

──信用情報の開示とか、最大級の個人情報の話がされているにもかかわらず、ですか?

被害者 その女性は、色々と問題があったみたいなんです。担当者たちが「別のやり方を考えないといけないので、また改めてやりましょう」というようなことを話し合っていました。

──それに対して、こちら側は信用情報に問題がないことが分かった。向う側は、どうしてきましたか?

被害者 私の方は信用情報に問題がないので、「進められますよ」ということになりました。「金額は、どうしますか?」という具体的な話も出てきたと思います。

──女性は、いましたか?

被害者 いたと思います。

──何か引っ掛かりますね。女性は退席してもよさそうですけど……。女性の信用情報は見ていないですよね?

被害者 私は見ていないですね。

──安心感を与えるため、サクラの女性を同席させた気がするんですが……。それはともかくとして、この時点では「ライフコンサルをやります」とは言っていないんですね?

被害者 はい、そうです。

──いつの時点で、ライフコンサルに出資しようと決断したんですか?

被害者 その会合中に、最終的に「やります。お願いします」と言ってしまいました。

──振り返られて、即断即決をされたんですか? それとも向こうの粘りに根負けしてしまったとか、どんな感じだったんですか?

被害者 強引に説得された、ということはありません。私は相当に迷っていて、それを放置してくれていました。最終的に、自分で決めたんです。

──となると、自分で自分の背中を押したんですね。その理由は、今から考えると何だったと思いますか?

被害者 日銭が入ってくる、という期待は大きかったのかもしれません。

──まだ会社員でしたか?

被害者 会社員でした。

──独立のことを考えると、不安だったわけですね。幾らぐらいのリターンを保証されていたんですか?

被害者 月利5%だったと記憶しています。

──資料のようなものを提示されたんですか?

被害者 一切、ありません。私がメモを取りました。

(第3回につづく)

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第8回

2017-07-28 8.56.16

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第8回は、懐かしい『電車男』の思い出と、アメリカ「ピザゲート」事件と西村氏の〝奇縁〟という話題だ。

◇第7回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000516/

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【写真】新潮社『電車男』特設ページより
http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/471501/
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本堂まさや氏(以下、本堂) でも、そう考えると、自分の権限を他人に委譲して回していくという方針は、2ちゃんのときからきれいにそうなっていますよね。有志のボランティアなど、割と2ちゃんのポリシーに共感して対価として労働力を提供してくれている人たちというのは結構いたでしょう。

西村博之氏(以下、西村) そうですね。「この会社に入りたい」「やりたいことがあります」という人がいて、僕が「ではやってください」とお願いするのと、基本的には同じ状況でした。

編集部(以下、編) ほれぼれするような書き込みを読むたび、「才能の無駄遣い」という有名な言葉を実感しますが、そういう人たちが集まってくる場を作ったというのは、改めて凄いことだと思うのですが?

西村 今も昔も、優秀で面白い人は世の中に大勢いますよ。それがピックアップされやすくなっただけだと思います。

花田庚彦氏(以下、花田) ところで以前、2ちゃんねるの書き込みを書籍化することがブームになったけど、あの印税はどうなってたの?

西村 例えば『電車男』(新潮文庫)は、本人と僕と、まとめサイトを作った人で3分割です。

花田 本人にもいってるんだ。結構、売れたよね。

西村 売れました。100万部を超えましたから。

本堂 『電車男』いない説とかありましたよね(笑) 懐かしい。

編 当時のインタビューで、「『電車男』で成功されてよかったですね、とよく言われるが、それは違う」と喋っておられます。

西村 そうでしたか、へえ……。

花田 「へえ」じゃないよ(笑)

西村 全然、覚えていません(笑)

編 「『電車男』の前から成功していた」と仰っておられます。

西村 そうなのですか、へえ(笑)。

本堂 映画化もされて、一気にメジャーになったということでしょうかね。

花田 映画になったっけ?

本堂 なりました。

西村 映画とテレビドラマです。

編 『電車男』以降、2ちゃんねるの社会的反響が巨大化し、一部メディアの批判も強まったのは事実だと思います。例えば、あるスレッドが物議を醸し、実際に世間が騒いだとして、その時西村さんは、その騒動をどう見ておられるのですか? 意外に、世間と同じ視点を持っておられるのですか?

西村 「同じ視点」というのが、ちょっと分かりません。

編 例えば2000年、西鉄バスジャック事件が発生しました。当時17歳の犯人は、2ちゃんねるに犯行予告を書き込んでいたなど、様々なことが発覚しましたが、その時に私たちは単純に「わ、大変だ!」と驚いたわけですけど、西村さんも同じように「大変だ!」と思われるのでしょうか?

西村 何をもって大変だとするかだと思うのです。

編 どちらかといえば、大変だとは思わない?

西村 思わないですね。

編 では、どう見えているの説明をお願いするのは、難しいでしょうか?

西村 割と他人事ですね。最近の話ですと、僕は4chanというサイトの管理人をやっているのですけれど、
http://www.4chan.org/japanese
4chanのユーザーがショットガンを持ってピザ屋に乱入したのです。

 アメリカ大統領選でヒラリー候補のメールが流出しましたが、それに関連して、あるフェイクニュースがネット上で広まったことがあったんです。内容は「ワシントンDCにあるピザ屋が、子供を誘拐して販売している。それにヒラリーが関与している」ことが流出メールから判明したというんですね。「pizza」が隠語で子供を表しているとか、ものすごい陰謀論なんですよ。

 それが4chanでネタとして盛り上がっていたんですが、本当に真に受ける人がいたんですね。子供を助けようとショットガンを持って向かってしまった。少なくとも店内で1発発砲して警察に投降したんですが、大問題となってFBIなどから捜査の依頼が来るわけです。

 召喚状のようなものが来たら対応するという、いつもの手続きを行うだけなんですが、やっぱり僕にとっては他人事ですね。僕が悪いことをしたわけではないですし。

 ただ、起きた出来事に対して、僕が対応する必要のある作業が発生するわけですが、そのために特等席で事件を見られることがありますね。

 2016年の秋頃だったと思いますが、カルフォルニアの高校で殺人事件があったのです。それの殺人予告が4chanに載っているという話があったんですね。

 結論から言うと、予告を書いた人間は犯人ではありませんでした。僕も書き込みのIPアドレスがフロリダだったので、犯行時間から逆算してみると、フロリダからカルフォルニアに移動するのは不可能だと分かっていました。

 ですがFBIの捜査上、提出した情報について口外してはならないという決まりがあるので、僕は「あの予告は犯人が書いたものではない」と言えなかったんです。ところがアメリカのニュースでは「4chanに予告を書いて殺人を行った犯人がいる」と報道しているわけです。それを僕は特等席で見ていた。そういう感じの面白さは感じます。

本堂 マスコミは踊らされているなと思いますね。

西村 僕が殺人予告をしたわけではないので、別に良心の呵責を感じるわけでもありませんね。

(第9回につづく)

2017年7月21日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー①

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 交流会詐欺という悪徳詳報、いや、犯罪行為をご存じだろうか。

 異業種交流会ならば、知っている方も多いだろう。自分が働く「業界」で、自社・他社での出逢いが重要なのは言うまでもない。しかしながら、どうしても似た〝世界〟を背負っているのも事実だ。

「井の中の蛙」の喩えを使うなら、「井戸の中における出逢い」だけでなく、「井戸の外」で働く人々と知り合いになりたい。

 少なくとも刺激になるのは間違いない。場合によってはルーティーンと化した仕事に新たな発見が生まれる可能性があるし、何より人脈が広がれば最高だろう──。そのような動機から、交流会に参加する人は跡を絶たない。

 だが、見知らぬ人同士が出逢う場所は、詐欺師にとっても絶交の場所だ。真面目な異業種交流会に詐欺師が紛れている場合もあるが、詐欺グループが交流会を開いているケースもある。

 手口も多種多彩だ。例えば異業種交流会を利用するケースなら、参加して美人局を狙うグループもあれば、悪質なマルチ商法に勧誘する連中もいる。

 この連載で取り上げるのは、交流会そのものが詐欺グループによって運営されているケースだ。具体的には主に渋谷で活動する「シナジーブックス」という異業種交流会は、詐欺の疑いが濃厚なのだ。

 検索エンジンに「シナジーブックス」と入力すれば、「詐欺」の被害を訴えるサイトが多数表示されることが、深刻な被害を物語っている。

 弊誌は被害者男性の接触に成功し、詐欺がどのようにして行われるのか、その詳細な内容をインタビューすることができた。全てをノーカットでお届けしよう。

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【写真】シナジーブックス公式サイトより
(http://synergybooks.tokyo/)
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──「シナジーブックス」と接点ができたのは、どんなきっかけだったのですか?

被害者男性(以下、被害者) 私は大学を卒業してから、外食産業を中心に勤務してきました。そして数年前から独立を模索するようになったんです。

 既に独立を果たした知人もいます。そこで、最初は知人に相談したんです。「何から始めたらいいんだろう」とアドバイスを求めると、「まずは人脈を広げるべきだろう。異業種交流会が盛んなようだから、参加してみたら?」と提案してくれたんです。

 インターネットで探してみると、交流会の情報サイトを見つけました。チェックして、「ここに行ってみよう」という会を選んだんです。「カフェでこじんまりやっています」といった触れ込みでした。

 2014年の冬でしたか、カフェに行ってみると、他のメンバーの方々は参加できなくなったとかで、カフェ会の運営をしている方と、2人きりで話をさせてもらいました。

 私が独立の話をすると、その運営をしている方が「それなら会わせたい人がいる」と紹介してくれたのがMという男でした。このMがシナジーブックスのメンバーだったんです。

 翌15年に、秋葉原のカフェでMと会いました。

 Mはアパレル関係の会社を経営しているといい、年齢は30代半ばぐらいでしょうか。営業マンやフリーランスといった人脈を必要とする人に、人を紹介するのが「ライフワーク」と言っていました。

 その言葉に嘘はなかったんです。最終的には20〜30人を紹介してもらいました。

 会社の名前に頼らず、自分の力で頑張っている方々とお話をさせてもらうと、やっぱり勇気が出ます。独立に至る具体的な道筋も教えてもらいましたし、私の事業計画にアドバイスを頂くなど、非常に有益な体験がたくさんできたことは事実でした。

 次第に私も「サラリーマンを辞めて独立しても、何とかなるのではないだろうか」と考えることが増えていきました。

 当時の勤務先が、非常に閉塞感の強い職場だったことも大きかったでしょう。給与も満足できる額ではなく、何よりも将来の展望が全く描けませんでした。生きているのか死んでいるのか分からないというのが正直なところだったんです。

 ですので、「これなら失敗してもいいから、独立にチャレンジしてみよう。そうすれば、死んでいる自分の時間も、再び生き返るだろう」と気持ちを固めたんです。 

 そうすると、Mが「あなたのように頑張っている人を応援する団体というか、サークルのようなものがあるんです。そこでも相談してみてはどうですか」とシナジーブックスについて切り出してきました。

 Mは「自分は創設初期からシナジーブックスに関わっているけれど、正規メンバーではない時期もあった。今は正規メンバーだけれども」と言い、シナジーブックスはメンバーが多く、社会的に成功している人も少なくない。

 ただ、誰でも入会できるわけでもない。面接があり、それに合格する必要がある、とのことでした。そしてMは「まずは面接だけでも受けてみたらどうですか?」と誘ってきました。

──シナジーブックスに何を期待しましたか?

被害者 団体としての規模が大きく、パーティーも開催しているという話だったんです。ならば参加することで、最終的にはパーティーに自分のサービスを提供できることになったらいいな、と考えました。

──「うちに来れば儲かるよ」といったような露骨な誘導はなかったんですか?

被害者 この時点で、それはなかったです。「何かの助けになるかもしれません」という以上のことは言わなかったですね。お金についての具体的な話は、面接を受けてからですね。

──とはいえ、いきなり「面接」という単語が出てきたわけですよね。違和感はなかったですか?

被害者 ありましたし、実際に「面接ですか?」と訊きました。

──Mは何と答えたんですか?

被害者 単なるサークルだけど、あまり変な人は入れたくない。ある程度、人を見るためにやっているので、という説明でした。

──「あなたはちゃんとした人ですけれど、そうではない人もいるので、面接をしているんです」という理屈ですね?

被害者 その通りです。

──実際の面接は、どうでしたか?

被害者 シナジーブックスは伊藤大智氏が代表ということになっていますが、いきなり、その伊藤代表が出てきました。

──オフィスみたいなところがあるんですか?

被害者 私の知る限りでは、オフィスのようなものは持っていないようです。渋谷の喫茶店に居座っていて、そこをメンバーが出入りしているんです。

──喫茶店で面接になったんですね?

被害者 はい。

──伊藤代表を含めて、何人ぐらいいましたか?

被害者 10人ぐらいいたと思います。店の一角を占めているんですが、特に迷惑をかけているという印象はなかったですね。むしろ常に飲み食いしていますから、店側からすれば非常にありがたい常連客だということになると思います。

──伊藤代表の面接というのは、どんな内容でしたか?

被害者 シナジーブックスについての説明と、私に対する「何をやっている人なんですか、将来は何を目指しているんですか?」という質問ですね。

 その上で、「シナジーブックスは様々な形でメンバーを応援しています」「メンバーではビジネスで成功している人がいます」「フリーランスの人もたくさんいます」という話が続きました。

 他にも「イベントを定期的にやるので、ビジネスマッチングのように、メンバー同士がつながって発展していきます」「研修制度もあり、勉強会が開かれています」という話もありました。

──伊藤代表は、シナジーブックスを、どう説明したんですか?

被害者 基本的にはMの説明と同じでした。シナジーブックスは「これから何かを頑張りたい人を応援する団体」で、「入会金が発生するけれど、後払いでもいいし、最終的には払わなくてもいい。お互いの信頼感や相手を応援したいという気持ちだけで成り立っている団体だから、後々成功した時に払えるようになってくれればいい」などと言っていました。

──入会金は、具体的な額を言いましたか?

被害者 ちょっとうろ覚えなのですが、20万とか50万とか、それぐらいだったと思います。

──書類とか、マニュアルのようなものを見ながら、説明するんですか?

被害者 説明の時には何も見ていませんでした。後で書類のようなものを、タブレットで見せられましたけれど。パンフレットのようなもので、「入会した場合、以下のことは守ってもらいます」ということを言われました。

──守ることとは、具体的にはどういうことが書いてあったんですか?

被害者 常識的なことがずらずらと書いてあった印象です。「人を信じよう」とか「まず自分から他人を助けましょう」とか、そんな内容ですね。

──面接時間は、どれぐらいでしたか?

被害者 2時間ぐらいだったと記憶しています。

──総体としての印象は、いかがでしたか?

被害者 その時の私は、独立するなら、人脈をもっと広げなければならない、顧客を確保しなければならない、資金を回せるようにならなければ、と焦っていました。なので思い切って「とりあえず、参加させてもらいましょう」と言いました。

 シナジーブックス側も「来て下さい」とは言いませんでしたね。「参加を認めますけど、あなたはどうしますか?」というスタンスだったんです。

「あくまでも決めるのは、あなたです」という話に終始しました。ただ、それが「結果的には入るでしょ」ということを遠回しに伝えてきたのかな、とも感じましたけど。

──「ぜひ入って下さい」と言わないのは、相手側のテクニックという感じがします。

被害者 そうだと思います。話は善意のものなんだという印象が強まりました。

──20万とか50万という入会金の話も、逆に正直な印象を与えるのでしょうか?

被害者 金額的に大きいと思いましたけど、「最終的には払わなくてもいい」と言っていましたから、なら参加しようかという感じでした。とにかくシナジーブックス側は一歩引いているというか……。

──ガツガツしていない?

被害者 そうですね。ただ、団体としての力を持っているなとは思わされました。うまくいけば自分のサービスを買ってくれるかもしれないという期待や、人脈を紹介してもらえそうだという希望は大きかったですね。

──伊藤代表の喋り方というのは、どんな感じですか?

被害者 ちょっと引いた感じなんですが、自信を持っているなという印象を与えますね。あと、どちらかと言えば、聞き上手です。

──面接に合格して、「入ってもいいよ」とOKが出ました。とりあえず「入りましょう」ということになったわけですが、そうすると向う側はどんなアクションを起こしてくるんですか?

被害者 その後、「シナジーブックスに関する勉強会をやっています」と紹介されて、2月1日に出席しました。

──場所は、どこでしたか?

被害者 渋谷の椿屋珈琲店ですね。

──勉強会の内容は、どんなものだったんでしょうか?

被害者 『シナジーブックスの2年』というものもありました。こういう背景で、人を応援していくんです、と教わるわけです。創業が佐藤謙一郎氏で、「サトケンと呼ばれている人間がシナジーブックスを最初に作り、それが今はこういう形で広がっています」という話をされました。

 組織内部が色んな部門というか、グループに分かれているという説明で、広報とか、イベント開催とか、そういう仕事を担当するグループがあって、参加者の強みや弱みを勘案しながら、部署を活動させているということで、組織図のようなものも見せられました。

──組織図はiPadで見せられるんですか?

被害者 iPadですね。パワーポイントのようなものが表示されました。

──この勉強会も、伊藤氏が説明したんですか?

被害者 この時は別人です。男2人が講師役で、出席者も全員が男性でした。Mも同席したんです。

──Mも来たんですか? 久し振りの再会になりますね。

被害者 いえ、説明するのを忘れていたんですが、面接の時もMは同席していたんです。

 私に「この人が伊藤さん」とシナジーブックスの人間を紹介する役割でした。シナジー側の人間は3人いて、私を入れて4人で話をするわけです。

 そして勉強会もMと、他に新しい講師役の2人の男、そして私の4人で行われました。

──自分たちはNPOなのか、NGOなのか、株式会社なのか、そんなことは何も説明しないんですね?

被害者 はい。

──団体のメンバー数なんてことは言うんですか?

被害者 一応、「何百人が参加しています」という話はあったと思います。

──広告塔的な有名人の名前とかは出ましたか?

被害者 そういう人名は出てこなかったです。「不動産業で成功している人がいます」という話や、サクセスストーリーというわけではないんだけれど「こういう活動をしている人がいます」という内容でした。

 パルクールという、「忍者スポーツ」とも呼ばれるような運動をご存じですか? 屋根の上を走ったり、ビルから回転しながら落ちて着地したりするんです。そのパルクールに打ち込んでいる人の話が出たりしました。

──実名なんですか?

被害者 一応、「何とかさん」という名前は出ていたはずです。けれど、結局は会っていないので、どこまで本当だったのかは分かりません。

──iPadで成功者の顔写真が出たりということは?

被害者 それはありませんでした。

(第2回につづく)

2017年7月20日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第7回

2017-07-20 9.24.36

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第7回は、西村氏の「部下に権限を委譲する極意」と、バーニングマンという興味深い世界的イベントの話となった。

◇第6回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000515/
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【写真】バーニングマン公式サイトより
https://burningman.org/
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編集部(以下、編) 服装だけでなく、感性や思考も含めて、この20年間、全身が変わらなかったということですか?

西村博之氏(以下、西村) いえ、さすがに変わっているのではないでしょうか。昔はどのように考えていたのかは覚えていませんから、本当のところは分かりません。ですが、以前よりも長期的に考えるようにはなりました。

編 長期的、ですか?

西村 20代の頃は1年が非常に長いですが、30代になって1年が早いことに気づきました。ですから「3年後は、こうなっているだろう」と考えて、様々な種を植えるようにしたんです。

編 それを「大人になったね」と評されると、嫌ですか?

西村 別に嫌ではありません。ただ補足させてもらうと、自分1人で仕事をするより、チームで動くことが増えました。自分でやれば早い。他の人に任せると時間がかかります。でも長期的に見ると、自分ではなく他の人に任せた方が、結果的にはうまくいったことが多かったですね。

編 そのお話ですが、人を使う大変さとメリットが集約されている気がします。

西村 自分なら1時間で終わる仕事を、他の人に3日間かけてやってもらうわけです。それを積み重ねていくんですね。

編 それでも他の人に頼むのは、どうしてですか?

西村 怠け者だからではないでしょうか(笑) 僕が担当するとして、週に1回、1時間が必要な仕事を、誰かが担当できるようにして回した方が楽でしょう。新しい担当者を作る方が、僕は楽ができます。いかに楽をするかということに腐心しているんですよ(笑)

編 もっと楽をするために、長期的に、3年間の視野で考えるということですか?

西村 そうです。

編 となると「ひろゆきの人生哲学は、楽をすることにある」と強引にまとめたくなってしまうんですが、それは間違っていますか?

西村 どうぞどうぞ(笑)

編 大丈夫なんですか?(笑)

西村 別に大丈夫ですよ。

編 当たらずといえども遠からずということですか?

西村 人生哲学というのは間違っていますけどね。人間は楽をしたいから楽をするというだけのことです。

 旅行で、わざと辛い思いをするのは楽しいです。知的好奇心を満たす体験で、大変な目にあうのは大好きなんです。『バーニングマン』というイベントはご存じですか? ネバダ州の砂漠で開催されるんです。1週間の期間で、6万人ぐらいが集まります。

※編集部註 
 8月第4週の月曜日から9月第1週の月曜日まで開催され、貨幣や商行為が厳禁とされていることが最大の特徴。電気、上下水道、電話、ガス、ガソリンスタンドといった社会インフラが全く整備されていない砂漠で、参加者は見返りを求めない「ギフト経済」で生き延びることを求められる。

花田庚彦氏(以下、花田)・本堂まさや氏(以下、本堂) 行ってましたね。

西村 何回も行ってるんですけど、ネットどころか、電気もありませんというところで、人が集まって暮らすわけです。夜は寒く、日中は暑いので、相当にハードです。水も食物も持参しただけ、というハードな状況で生活するのは割に好きなんです。

 ですが仕事となると、いかに楽なルーティンを作って成果を出すかというのが、本来の目的だと思うんです。僕が何かしなければならないというのは、僕がボトルネックになることを意味します。ならば、なるべく僕を外す形を作ると、うまく回るんです。

編 ボトルネック=支障という部分を、もう少し詳しく教えて下さいますか?

西村 例えば、僕に決定を下す役割があったとします。チームがあって、僕がリーダーというイメージですね。「これは、どうすればいいですか?」と訊かれて、僕が決めないと進まないで止まってしまうわけです。

 そうなら、「もうあなたたちで決めて下さい、決定の規準は以下の通りです、最初は間違っても構いません」とお願いするわけです。確かに最初は間違った決定をしてしまうかもしれません。でも、人は何回か間違うと、ちゃんと学習します。そうすると、いつしか僕の手を離れて、きちんと回っていくようになるんです。

編 そういうシステムを作るということは、20代の頃から意識的に考えておられたんですか? それとも次第に学習していくような感じだったのですか?

西村 実は、僕は朝、起きないことがあって、連絡が付きにくい人間だったんです(笑)

本堂 成長しましたよね。今日は15分の遅刻で済みました(笑)

花田 凄いよ、15分の遅刻で来たんだから(笑)

西村 ありがとうございます(笑)

編 実は私を含めて3人でお待ちしていたところ、お二人が「1時間は遅刻するよ」と仰って(笑)

本堂 1時間は、たばこをゆっくり吸えると思ってました(笑)

花田 ひろゆき時間って有名だからね。昔から平気で人を待たせる(笑)

西村 いやはや、すみません。すみません(笑)

本堂 大人になりましたね。

花田 15分になった(笑)

西村 僕がいなくて、僕がいない状態で回すようになってしまったのに、「あ、これでいいじゃない」というのはよくありました(笑)

編 その成功体験を(笑)意識的に中心に据えたんですか?

西村 遅刻は意識的なものではないですが(笑)そうした方が僕も楽ですし、チーム自体も楽になります。

(第8回につづく)

2017年7月13日

無料連載『不惑のインターネット』①西村博之氏・第6回

2017-07-13 15.40.47

 西村博之氏を迎え、花田庚彦、本堂まさや両氏がインタビューを行う「ネット・ブラック鼎談」の第6回は、西村氏の昔と変わらぬ〝若さ〟に話題が弾む。

◇第5回記事(リンク)
http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000514/
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【写真】グーグルショッピングで「ゴムサンダル」を検索した結果
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本堂まさや氏(以下、本堂) でも世界でというと、フランスではなくスペインの選択肢もあったのではないですか?

西村博之氏(以下、西村) 英語圏の統計があって何語を覚えると給料が上がるかというのでフランス語・ドイツ語は上がるのですけれども、スペイン語は上がらないのです。

本堂 なるほど。

花田庚彦氏(以下、花田) そうなんだ。

西村 要するに、メキシコ人がスペイン語と英語の両方をしゃべるでしょう。そうすると、スペイン語が必要でしたらメキシコ人を雇えばいいのです。

 だから例えば、中国語を覚えるというのは、僕は無意味だと思っているのです。それでしたら、中国人で日本語をしゃべれる者を探したほうが早い。

 平均年収の高い国の言語でしたらドイツ、フランスになるのです。ラテン語系の流れで、フランス語を覚えておくとスペイン語もある程度分かるのです。昔、留学したときのフランス人の友達が「スペイン語は何となく分かるよ」と言っていたので、では同じような感じなら得をするほうのフランスにしましょうと。

編集部(以下、編) ひょっとするとポルトガル語も付いてくるかもしれないですね。

西村 でも、ポルトガル語は何か若干違うのです。

編 違うのですか?

西村 スペイン語はこういう感じだろうというのがあるのですけれども、何かポルトガル語は若干違うのです。

花田 ポルトガル語は、南米はブラジルだけだよね。

西村 そうです。ですから、ポルトガル語はあまり役に立たないです。

花田 役に立たないね。

本堂 それにしても、全然、年を取らないですね。

西村 いいえ。多分、取っていますよ。

本堂 そうでしょうか。

花田 ひろゆきは全然変わらない。

本堂 変わらないです。

西村 でも、白髪は増えました。

本堂 私も染めないと、もう真っ白ですよ。

西村 本当ですか?

本堂 真っ白です。ですから、ひげなどは本当にまずいです。

編 花田さんと初めて会われたのはいつごろなのですか?

花田 ひろゆきとは15年ぐらい前ですね。

西村 そうです。まだ髪が黒かったですから(笑)

花田 そうだね(笑)

本堂 花田さん、もっと太っていましたからね。今は激やせしてしまいましたけど。

西村 確かに、もうちょっと太っていたイメージはありますね。

本堂 いい薬を見つけたのですね。

一同 (笑)

花田 訳の分からないことを言うな(笑)

編 皆さんが面識を持たれたきっかけは、何だったんですか?

花田 きっかけは、もともと自分もアングラサイトをやっていたので、それで遊んでいたのです。それで本堂と知り合って、ネットの悪い者たちはみんな、そこからの流れです。

編 悪い者たちですか(笑)

西村 本堂さんのつながりです(笑)

花田 そうです。みんな彼が元凶ですから。

西村 本堂さんが悪い人たちを……。

花田 悪い人を引き寄せるオーラがあるのです(笑)

本堂 止めて下さい(笑) 弊社のコンプラ問題です(笑)

編 当時、西村さんの肩書というのは……?

花田 当時は、2ちゃんねる管理人だったよね。

西村 そうです。普通にホームページ制作屋さんもやりつつ、でしたね。

本堂 最初に会ったときには中央大に通っていましたね。

花田 通ってたっけ?

西村 大学生のときでしたか?

本堂 そうですよ。まだ20代の大学生で、21歳とか、22歳だったはずです。

西村 まだ卒業前ぐらいだったかもしれませんね。

花田 ロフトプラスワンでイベントをやったのは、あれは何年ぐらい? 2015年?

本堂 あれは多分2000年。

花田 2000年か……。宮台真司も来ましたね。

本堂 来ました。

西村 卒業したか、する前か、という頃ですね。

本堂 そのくらいですよね。

編 ということは、お二人から見ると、西村さんは大学生の頃から全く変わっていないんですか?

花田 服装すら変わってない(笑)

西村 服が変わっていないからでしょう。

本堂 いや、想像以上に年を取っていないですよ。久しぶりに会って、びっくりしましたから。

西村 そんなことはないです。第一、太りましたし。

本堂 美容系で、優秀な店に通っているんですか?(笑) もしそうだとしたら、教えて下さい(笑)

西村 ないですよ(笑) 服装のセンスは変わっていないのは事実で、それが大きいんでしょう。

花田 昔はゴムサン履いていたもんね。

西村 今も変わりません(笑) ちょっと高価にはなりましたけど、今の大学生が着ている服と、そんなに変わらないものを身にまとっています。

(第7回につづく)

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