【無料記事】スマホ証券「One Tap BUY」に〝マネロン疑惑〟 | イエロージャーナル

 2017年2月のある日、金融関係者が集まった席である人間が「みずほ証券やドコモは分かっているのか、あの会社を……。危機管理はどうなっているのだ?」と眉間に皺を寄せた。

 彼が憂慮したのは、2月14日にスマホ証券「One Tap BUY」にみずほ証券やNTTドコモなどが15億円出資したことを指す。みずほ証券だけでも6億円といわれている。同証券は昨年7月にもソフトバンクから10億円の出資を受けており、合計25億円をスタート時にかき集めたことになる。

 しかし関係者が先行きを危ぶむ理由は2つある。1つは事業が成り立つのかだ。

■―――――――――――――――――――― 【写真】One Tap BUY公式サイトより

(https://www.onetapbuy.co.jp/)

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 インターネット証券は株式売買手数料が自由化した1990年末に相次ぎ設立された。熾烈な手数料引き下げ競争の結果、現在はSBI証券や楽天証券など大手6社で個人売買代金の9割近くを占める。

 手数料は「限界まできている」(ネット証券)こともあり、これ以上引き下げても顧客を既存証券から奪うことは厳しく、そのうえ「手数料だけでは黒字は不可能」ともいわれる。株式取引をする新規顧客が爆発的に増えない限り参入しても成立しないビジネスなのだ。

 もう1つの懸念材料は同社に「マネロン水先案内人」と噂される人物がいることだ。

 マネーロンダリング―――資金洗浄ともいわれる。薬物や人身売買など違法行為で稼いだ資金を租税回避地(タックス・ヘイブン)や匿名口座を持つプライベートバンク(PB)を利用して「きれいなお金」に洗うことをいう。

 この水先案内人で有名なのは、元読売新聞の記者・清武英利氏の著書『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層』(講談社)に登場する桜井剛氏である。

 氏は、バンク・オブ・シンガポールというPBに所属し、タックス・ヘイブンへの資金移転で税金を逃れる「資産逃避ビジネス」を行っている。そのなかにはマネロンに抵触するような「危ないカネもある」と見られている。

 シンガポールへの水先案内人が桜井氏なら、香港への水先案内人がOne Tap BUYにいる。

 仮にA氏としよう。1960年代半ばに生まれ、準大手証券の香港法人などで香港人脈を構築。香港のPBを紹介するビジネスを行っていた。

 その筋では「知る人が知る」存在だった彼が最も有名になったのは「ライブドア事件」である。ライブドア事件では偽計取引において香港のファンドを使った買収・合併案件が多数存在した。そして香港のみならずスイスやリヒテンシュタインのPBまで登場した。その橋渡しをしたのが彼といわれている。

 次に彼の関与が囁かれたのは「AIJ事件」である。主犯のAIJ投資顧問の淺川和彦社長の隠し口座が香港にあったのだが、それを仲介したのが彼だったそうだ。

 いずれも犯罪資金であり、マネロンしようと作為的に口座を開設したものだ。とはいえ、「彼が紹介した時点では犯罪と認定されていたわけではない。その点は割り引く必要がある」と、彼の元部下は語る。

 ただ、「その筋」といわれるブラック人脈では彼の名は知れ渡っており、これから何が出るかわからない。そのような法令順守に懸念のある会社に出資したみずほ証券とNTTドコモ。今後どうなるのか。金融業界は相当に注目しており、捜査機関の本格注視も時間の問題かもしれない。