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目次

  • 前回までのあらすじと登場人物
  • 38巻のネタバレ
  • 感想
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前回までのあらすじと登場人物

慶応三年の年末、京の街は次第に情勢が悪化していき、労咳が進行して動けなくなっていった沖田は、市中の近藤の妾宅に身を隠すようになりました。 伊東甲子太郎を失ったその配下の内海と一派は、新選組への復讐として彼を狙っていたのです。

沖田を慕う神谷清三郎(セイ)は献身的に看病を続け、彼を伏見にいる新撰組の本体に合流させようと苦心していました。

とうとう、沖田の居所を突き止めた内海がある夜斬り込んでくるのですが、身を挺して沖田をかばうセイの姿に、思わず沖田は『この人は女子です!』と叫び、彼女だけは見逃してくれるように、と内海に懇願したのです。

内海は、油小路で討たれた伊藤らの敵討ちのために、新選組、そして近藤らにどうしたら最も大きなダメージが与えられるか、ということを考えて沖田を狙っていたのですが。
脳裏に鮮やかに浮かんだ伊藤の表情に、その瞬間『狙うべきは近藤のみ』と決意し、その場を去るのでした。

沖田らは奇策を用いて伏見へと逃れたのですが、そこで近藤が狙撃され、重傷を負ったという一報が入り、皆が動揺します。
鳥羽伏見の戦いの前哨戦は、小さな火花となってあちこちで炸裂しはじめていたのでした。

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38巻のネタバレ

慶応三年の末には、畳みかけるように京の街を震撼させる事件が続きました。 11月15日には坂本龍馬が暗殺され、その三日後には油小路の辻で伊東甲子太郎とその一派が油小路の辻で惨殺されたのです。

伊藤らは、近藤の招きに応じて新選組に参加したのですが、思想の違いから別派の御陵衛士を名乗り、袂を分かってしまいました。

敵対していった彼らを危険視した新選組は彼らを粛正したのですが、その配下の内海はたまたま不在にしていたことで、同様に逃げ延びた者らが、ちょうど一月後に近藤勇を敵と狙い、伏見で狙撃し…暗殺は失敗したものの、近藤に重傷を負わせることになったのです。

沖田は戦線を離れ、身を隠していましたが、内海に狙われたことから伏見にいる新選組の本隊へと合流します。 その折に、セイたちに手を貸したのが護衛として付き従っていた野村利三郎と相馬主計だったのですが、彼らは後に戊辰戦争の中で翻弄される運命が透けて見えます。

野村は土方について箱館まで渡り、宮古湾海戦で戦死、そして相馬主計は箱館戦争の幕引きに尽力した人物でしたが、その彼らをここに登場させたのは、後のストーリーに反映させてくれるのではないかという予感がします。

近藤と沖田の身を案じ、土方らは彼らを大阪城に移送することにしました。
少しでも安全な所に置いて、療養させたいという気持ちからのことで、医療担当として二人に付き従い、セイも伏見から大阪へと移ったのです。

その頃、新選組にはまだ幼さの残る少年たちがおりました。 関東で募集してきた隊士たちの中に、土方や近藤らの故郷である日野の者たちがいたのですが、その素性は、古参隊士の井上源三郎の甥・泰介と、兄について入隊した田村銀之助です。

彼らはただ、よく言えば子供らしく無邪気、しかしあまりに考えなしにその場にいたのです。

伏見の街は既に一触即発で、薩摩軍も幕府軍も混在している状態でした。
そこに、物見遊山のように繰り出した少年たちはつい『薩摩芋』と、薩摩兵を侮蔑する言葉を発して、既に『官軍』としてそこにいる薩摩兵に聞かれてしまうのです。

本物の兵に敵うはずもなく、危うく殺されるかと思われた瞬間に、助けてくれた女性がいました。

美しいけれど、しどけない下げ髪のその人は、かつて(4巻)新選組のために京の市中の情報を集めてくれていた協力者、“おみの”でした。

彼女は父親と二人で髪結いを営み、そこに監察方の山崎烝が世話になっていたのです。
山崎はおみののことを好いていましたが、いつも彼女にかわされていて、その鮮やかなふるまいで泰助らに襲い掛かっていた薩摩兵を撒き、助けてくれたのです。

山崎は一緒に泰助らを助けてくれたことに礼を言うと、おみのは父親が長州の侍に殺されて首が晒された、と告げました。
長州は禁門の変以来、長きにわたって長州藩の関係者は都に立ち入ることを許されていなかったのですが、その恨みもあって、標的にされたのです。

おみのは、山崎の同志でした。 お互いに『大樹様(徳川将軍家)の為にしか死なへん』という間柄です。

はぐらかしてはいたものの、おみのは彼の想いは知っており、戦の前に山崎は「似合いの夫婦になれるん違うか?」と告白したのです。

そんなさなかでも危機感がない泰助らは再び迷子になり、伏見の街中で先刻の薩摩兵らにまた見つかって、彼らを探しに来た井上らをも巻き込んで騒動になりました。 山崎は薩摩兵らを挑発し、子供たちを逃がそうと画策しましたが、薩摩兵の一人が短筒(拳銃)で彼を狙ったのです。

おみのは迷わず立ちふさがり、山崎をかばって撃たれました。

彼女は山崎のことを『喜助』と呼びました。
まだ、情勢がそれなりに穏やかであった頃、山崎が彼女らの前で名乗っていた偽名です。

その死は、山崎の心に薩長への憎しみを植え付けるには十分な理由となったのです。

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感想

この作品では、伊東甲子太郎とその一派、御陵衛士らのことについてもとても丁寧に描いていました。
ことに、伊東と内海の関係性などは、同志でもあり、師匠と弟子のような、主従のような、そして親友のような、誰にも侵しえない間柄だったのだと表しているのです。

不在にしていたがゆえに、伊東の最期をみとることができなかった内海は、その仇を撃つために、近藤や土方にもっとも打撃を与えるコマとして沖田をつけ狙い、その目論見が外れたら、刀で戦ってきた近藤を鉄砲で狙撃するという手段に出ます。
その傷がもとで、近藤は戦線を離脱し、鳥羽伏見の戦は全面的に土方らに託されることになったのでした。

さて、新選組に似つかわしくない少年らの存在ですが。 彼らの存在は、史実として伝わっています。

心意気だけは立派でしたが、自分らの軽率な行いがもとになり、目の前でおみのが撃たれて亡くなった、その事実はどれほど彼らの心に響いたことか。

慶応三年の年の瀬は、そんな血生臭い気配と悲劇に満ちておりました。
しかし、泰助らが目の当たりにする哀しみは、こんなものでは済まなかったのです。

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