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あらすじ

吉宗が亡くなり、家重がその娘の家治に将軍職を譲った頃、金髪碧眼の吾作は田沼意次によって大奥に御祐筆として奉公することになり、名を青沼と改めました。補佐役として、自らも町方の蘭方医の息子である黒木が御祐筆助としてつき、大奥での日々が始まるのです。

好奇の目で見られ、遠巻きにされる青沼ですが、石鹸で手を洗うことを教え、健康管理の大切さを説いていくことで、周囲からの信頼を得て、仲間が一人二人と増えていくのでした。

そんな時、平賀源内は一人日本中を飛び回り、熊と赤面疱瘡の関係性を紐解いていました。源内が慕う田沼意次とその娘の意知は、家治の治世を懸命に守ろうとしていたのです。

しかし、周囲では幕府の権力と将軍の位を巡って場外乱闘のような様相を呈していました。
吉宗の次女・宗武は己の娘の聡子(後の松平定信)を将軍に据えようと英才教育を施していたのです。

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ネタバレ

青沼が大奥で蘭学の講義を始めたころ、黒木は蘭学が嫌いでした。父の蘭方医としてのもうけ主義と、商家の女性たちとの浮気を繰り返している姿に辟易して跡取りの道を拒絶し、大奥に上がったのです。

そんな彼も、次第に青沼の熱心さに心を開き、オランダ語の習得と、それによる西洋医学の講義に惹かれていったのでした。彼と、青沼に風邪を治してもらった僖助(きすけ)、大奥に退屈していた伊兵衛らが合流し、少しずつ蘭学への理解が進んできたのでした。

そんな時、お大奥にインフルエンザが蔓延します。青沼が配ったサボン(せっけん)で手を洗うということを守っていた高齢の御祐筆、そして黒木らが無事であったことから、将軍家治、そして御台所五十宮(いそのみや)が興味を持ち、蘭学の講義はいきなり人であふれることになりました。

そのサボンの効果を褒めてくれた家治らに、青沼は言うのです。『人はまだ、病を完全に防ぐ術を見つけたことはないのです』

その頃源内は、赤面疱瘡が熊の病気であり、それが人間に広まったのではないか、というところまでたどり着いていたのです。田沼は、いつか赤面疱瘡を撲滅するために、彼らの地道な研究を支援していこう、と決めていたのでした。

さて、そんな前向きな流れがある中で、うつうつとした日々を過ごしていた者たちがおりました。家重の妹、徳川宗武です。

将軍になれなかったけれども、その資質を見込まれた彼女は母・吉宗によって田安徳川家の初代当主とされたのですが、やはりその生涯を通して『自分が将軍になるべきだったのに!』という思いがぬぐえないまま、その怨念のような気持を娘の聡子(定信)にそのまま植え付けていました。

多安徳川家の長女でもない彼女に、将軍になれ、と言い残して宗武はこの世を去ります。15歳の定信は祖母の吉宗に心酔し、黒のお掻取り(打掛)を身につけ、言いたいことをずばずばと言い放って周囲にその鼻息の荒さを心配されているほどでした。

また、吉宗の三女小夜姫こと徳川宗尹(むねただ)は一橋徳川家の初代当主となり、こちらも娘をもうけます。後の徳川治済(はるさだ)です。将軍家治と彼女らは同じく吉宗の孫たちでした。

ひとつ何かが違えば、自分が将軍になっていたのかもしれない、という思いがどこかにあり、ことに定信は母亡きあと、松平家の養子として徳川の家を出されたことからより一層拗らせて闇を募らせていくのでした。

青沼らの研究は少しずつ進んでいきました。源内がある日伴って来たのは蘭方医の杉田玄白。『解体新書(ターヘルアナトミア)』を翻訳した人物です。彼らの研究に興味をもって、その頃御台所の五十宮が講義を聞きに訪れるようになりました。

彼は、青沼に語るのです。京から江戸に下り、徳川家の身台所になったことは不本意でもあったが、巡り合った家治とは良い夫婦になれた。

しかし、そんな自分がありながら、側室との間に姫が生まれる、という現実。将軍という身分、そして徳川家・大奥のやり方は理解するが、どこかに空しさがあったのだ、というのです。

そんな気持ちを唯一忘れられたのが、青沼の蘭学の講義だったという五十宮は、ほどなく病で世を去ります。青沼はその病に感づいていましたが、五十宮は『もう間に合わない、もし蘭方医の治療を受けて自分が亡くなったら、蘭方医のせいにされてしまう』ともいうのです。

彼は、大奥の蘭学の蘭学の火を消したくない、と願い、そんな喜びを与えてくれた青沼に『ありがとう』と言い残すのです。

順風満帆と思われてきた青沼らの蘭学の研究は、しかし出る杭は打たれるの例えのままに、多くの反発を招きました。その急先鋒が松平定信です。

生真面目さ、と融通の利かなさが彼女を暴走させていくのですが、それを後ろで誘導していたのが一ツ橋治済だったのです。

西洋の書物から、痘瘡の方法と効果を知った青沼らは、赤面疱瘡の患者を集めることでその細胞を使い、健康な若者に赤面疱瘡の免疫をつけさせることが可能なのではないかというところまでたどり着いたのです。

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感想

平賀源内は自由人でした。そのフットワークの軽さと好奇心で様々なものを乗り越えていくのです。大奥の中に籠って研究している青沼らのために、その手足となってフィールドワークをおこなっており、その双方から赤面疱瘡のメカニズムの解明と治療・予防へと確実に近づいていきました。

田沼意次はそんな若者たちを支援し、赤面疱瘡を撲滅させるための方策を探っていました。その頃、意次は家治の命によって老中となり、その権勢は妬みの対象となっていたのです。家済や定信だけでなく、幕閣の者たちの思惑も重なり、不穏な空気が満ちてきていました。

名君だったはずの吉宗が残した三人の娘たち、それぞれの血筋から拡がっていった徳川の分家たちは、将軍の跡取りがいなかった場合のバックアップとして機能し始めてはいましたが、それはまた、多くの者たちが将軍の跡継ぎの座を狙う争いが激化していく、ということにも繋がっていったのです。

青沼は、無残な幼児期を経て、いまやっと人のために生きられる幸せをかみしめていたのですが。その純粋さは、後に彼の命を縮めてしまうのです。

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