2017年4月10日

【無料記事】本業減益「ぐるなび」が旅行業に参入

17年4月10日GURUNAVI2017-04-05 16.39.49

 てるみクラブの破産問題が少しは冷水を浴びせたかもしれないが、旅行業界が活況を呈しているのは紛れもない事実だ。訪日外国人(インバウンド)の消費や国内シニア層の旅行熱を狙って、既存の事業会社が旅行業へ続々参入している。

 フジ・メディア・ホールディングスは16年11月に訪日旅行向けサイト・ジャパンインフォを傘下に治めた。2017年2月10日には三越伊勢丹ホールディングスがシニア向け海外旅行代理店・ニッコウトラベルの買収を決めている。そしてグルメサイト運営の、ぐるなびもインバウンド需要を取り込もうと戦略を転換した。

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【写真】ぐるなび公式サイト「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」(中国語=簡体字版)より
https://livejapan.com/ja/
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 これまで同社はグルメサイトから顧客を飲食店に誘導するビジネスを柱にしていた。新規加盟店は増加し、16年12月末で有料加盟店数は60,816店まで拡大。月間ユニークユーザー数も6,100万人にまで増えた。しかし業績は営業利益が減益になるなど苦戦を続けているのだ。

 そこでインバウンド(訪日外国人旅行/訪日旅行)に目をつけた。訪日外国人は16年に2,400万人に達し、さらに今年も増えると見られている。昨夏「ぐるなび」は海外旅行サイト大手の「トリップアドバイザー」と連携した。トリップアドバイザーの外国版サイトからぐるなびの外国版サイトへ誘導する仕組みを開発。日本を訪れた外国人客が飲食店を見つけることをできるようにした。

 背景にはインバウンドの需要の変化がある。15年ごろまでは、外国人客は家電や化粧品など商品という「モノ」を購入していた。しかし昨年春から様相は一変。「爆買い」は消失し、特別な時間や体験など目に見えない価値である「コト」を消費する方向に変わった。そこでぐるなびは考えた。

「『爆買い』は終わった。しかしインバウンドは増えている。モノは買わなくても飲食はする。まだまだ市場はある」

 その結果、トリップアドバイザーとの連携に踏み切った。トリップアドバイザーの外国語版サイトから「ぐるなび」外国語版サイトに誘導。そこに外国語で日本国内の飲食店情報を載せ、訪日外国人を店に送客する流れだ。

 ぐるなびのインバウンド対策はそれだけではない。

 飲食店のメニューにも手を入れた。訪日した中国人や韓国人が店に訪れてもメニューが中国語や韓国語に対応していなければ客は困惑する。そこで中国語や韓国語、英語などのメニュー開発を加盟店営業や巡回スタッフが支援。外国語メニュー作成し提供できるようにした。

 これにより店側も「いま食べて欲しい料理」を勧めることができ単価も上げることが可能になった。また外国人に受ける料理の開発もサポート。インバウンドからの利益の最大化を図ろうとしている。

 今春からは中国の旅行サイト「Ctrip」、台湾の旅行サイト「Kkday」とも連携する。ここでは「無断キャンセル」のリスク軽減で「事前決済型予約サービス」を導入し、「スキッパー(踏み倒し)」防止を進める。これにより店側のキャンセルリスクは減るうえに、ぐるなび側は決済手数料が入るという「一石二鳥」が実現する。

 ぐるなびではメニュー情報を外国語に一元変換するシステムも導入しており、利用する店舗は23,000店を超えた。

 何とかインバウンド需要を取り込もうとする飲食店の期待は大きい。その声に応えることができるか。正念場だ。

(無料記事・了)

2017年4月4日

【無料記事】ソニー平井社長が日経幹部に「FT買収」は失敗と断言

nikkei-ft2017-04-04 13.04.40

 日本経済新聞社の中で、秘かに話題になっているエピソードがある。

 2016年秋、ニューヨークで安倍晋三首相も参加した会合でのこと。ソニーの平井一夫社長が日経の幹部に、英フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収したことを酷評したというのが、その内容だ。

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【写真】日経公式サイトより
http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/
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 日経は15年、FTを約1600億円で取得したが、ソニーも1989年にコロンビア映画(現・を約5000億円で買収したという〝共通点〟がある。

 日経の関係者によると、ソニーがコロンビア映画を買収した際、日経が「戦略性がない」などと批判する記事を相次いで掲載していたことを、平井氏が言及したらしい。

 売りに出されていたほどだから、当時のコロンビア映画は多額の負債を抱えていた。買収総額は想定を超え、48億ドルに膨れ上がったという経緯がある。80〜90年代にソニーを率いた大賀典雄氏も、日経新聞の『私の履歴書』で次のように振り返っている。

<コロンビアの買収はもともと社内でも否定的意見が多かった。私は映像資産の将来価値を確信していたが、買収額と後の評価額との格差を埋めるため、1994年9月中間決算で暖簾代の一時償却など3000億円の連結赤字を計上することにした>

 買収の苦労を率直に綴っているが、それでも最終的には旧コロンビア経営陣を追い出し、立直しに成功している。

 平井社長から「日経には『戦略性がない』と書かれましたが、今、あなたたちに、そっくりそのまま、その言葉を返します」と言われた日経幹部は「返す言葉もなかった」(関係者)という。

 平井社長の大人げない意趣返し──と思う方もおられようが、当の日経社員が指摘は正しいと認める。

「平井さんに言われるまでもなく、社内でも、『いったい何のためにFTを買収したのか』という疑問が充満しています」

 日経はFTグループの株式を取得し、合計発行部数は米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの2倍強になると強調し、「世界的な新聞グループになった」と胸を張った。

 しかしFT関係者によると、日経はFTの記者が買収に反発して会社を去ることを警戒してか、FT紙面にはまったく口出ししてこないという。社員の交流はたまに行われているが、一部の英語のできる記者に限られている。FT関係者はこう指摘する。

 「日経記者とFT記者が連名で1つの記事を書くとの試みもありましたが、長続きしていません。どうも日経には、FTに対する遠慮があるようです。このままでは日経は、FTを手放すことになるだろうとの見方が出ています」

 日経関係者も「平井さん、いいことを言ってくれたと思っている社員は少なくない。経営陣が変わらないと、荒療治はできないでしょうね」とぼやくのだ。

(無料記事・了)

2017年3月27日

【無料記事】みずほ銀行頭取人事は「林解任」が真相

mizuho2017-03-27 14.38.09

 みずほフィナンシャルグループ(東京都千代田区大手町)は1月31日、傘下行トップ・みずほ銀行(同)の頭取として、藤原弘治常務(55)を昇格させると発表した。

 経済ジャーナリズムの中には、「将来トップ候補との呼び声は高かった。文句なしの順当人事」といった報道を行った社もあった。

 だが、関係者からは異論も漏れ聞こえる。

 それによると、今回の人事は藤原新社長の問題ではなく、林信秀頭取(59)の実質的な「解任」と見る方が正しいという。

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【写真】みずほFG公式サイトより
https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html
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2017年3月23日

【無料記事】中国保険大手「安邦グループ」が日本不動産を「爆買」

china hoken 2017-03-23 11.30.57

 中国の保険大手・安邦保険グループが東京や大阪、名古屋、福岡など大都市圏のマンションなど200件もの不動産物件に関心を示し、その買収に向けて約2600億円もの資金を投入していることが、関係筋の話で明らかになった。

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【写真】安邦保険グループの公式サイトより
http://www.anbanggroup.com/index.htm
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 安邦グループは2014年、米国の最高級ホテル、ウォルドルフ・アストリア・ニューヨークを買収したことで一躍、世界的に名が知られる存在となった。

 その最高経営責任者にはかつての中国の最高実力者、鄧小平氏の孫娘の夫のほか、「新中国」建国当時の軍最高指導者の孫も幹部として名前を連ねるなど、中国共産党指導部と密接に関係しており、外交筋からは「日本の資産の中国流出につながりかねない」との懸念が出ている。

 安邦グループは2005年に生命保険会社として、資本金約5億元(約80億円)で創業。10年後の15年には619億元(約1兆円)と、124倍にも膨らんだ。事情に詳しい経済ジャーナリストは「中国政府の強力な支援の下、3500万人もの顧客を獲得したため」と解説する。

 その後、安邦グループは中国政府の意を受け、海外でのビジネス展開を急拡大し、ベルギーなど欧州の金融機関のほか、韓国や米国の生命保険会社を次々と買収。不動産部門にも進出し、米国の最高級ホテルのほか、日本での不動産買収にも強い意欲を示している。

 しかし、安邦グループは2015年、不動産運用会社、シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ(東京都千代田区)の買収に入札したが、日本の大手不動産会社に競り負けている。

 関係筋によると、今回明らかになった、安邦グループが触手を伸ばしている不動産物件群は、中国政府直轄の投資会社である中国投資が9・9%の株式を取得している米大手投資ファンドが所有しているものだという。

 東京や大阪など日本の大都市圏にあるマンションを中心とした200件もの不動産物件で、その部屋数の総計は10000戸以上にもなる見通しだという。

「日本の不動産物件は2020年の東京五輪を控え、価格の上昇傾向が続いている。安邦グループは五輪前の転売による大規模な差益を目論んでいるようだ」

 外交筋は、安邦グループの狙いが転売益にあるとみている。更に外交関係者は「中国政府の外貨資産減少」を背景として指摘する。結局、安邦グループの買い漁りの裏には中国政府の強い指示があると考えられており、監視が必要であると警鐘を鳴らしている。

(無料記事・了)

2017年3月21日

【無料記事】財務省「ウルトラC」人事を官邸が画策

zaimu2017-03-21 20.13.28

 今年夏の財務省人事をめぐり、「ウルトラC」が発動される可能性が出てきた。

 現在の佐藤慎一次官(1980年入省)の後任には、福田淳一主計局長(1982年入省)が順当に昇格するとみられていた。だが、ここにきて、金融庁の森信親長官(1980年入省)を推す声が与党内で急浮上しているのだ。

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【写真】財務省公式サイトより
http://www.mof.go.jp/
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 地方銀行の再編を進める森氏は「辣腕」で知られており、安倍晋三首相からの信頼も厚い。政府関係筋は「安倍首相は財務省改革に向け、森氏を次官として送り込むのでは」との見方を強めている。

 佐藤氏は実に35年ぶりに主税局長から事務次官に昇格したが、官邸との距離は決して近くはない。主税局長時代には、「軽減税率」をめぐって菅義偉官房長官と対立し、次官就任後も「配偶者控除の廃止」で官邸サイドから「待った」をかけられた。消費税増税の実施を求めていたこともあり、留任の芽はまずあり得ない。

 佐藤氏が今夏に退任した後、その後任には財務省ナンバー2の福田氏が昇格するもの、と省内外で当然視されていた。一方で、佐藤氏と旧大蔵省同期入社の森氏は昨年夏に留任していて、今夏の退任が確実である。

 しかし、与党内では、「森氏を財務次官に抜擢すべし」との意見が強まっており、関係筋によると、「官邸も水面下で調整を始めた」という。

 関係筋はこう指摘するのだ。

 「これまで、『金融庁長官』から『財務次官』に横滑りしたケースはありません。ただ、内閣府次官に厚生労働省次官が横滑りで就いたケースがあり、森さんが財務次官に就任したとしても、異例とは言えません」

 森氏は大手銀行や証券会社に対し、金融商品の販売手数料を開示するよう求めているほか、地銀再編を促していることでも知られている。関係筋によると、こうした豪腕を安倍首相は高く評価しており、最近では、経済政策全般について、意見を求めることも多いという。

「首相への面会回数も財務省の福田次官を上回っており、消費税増税を求める財務省を牽制する意味合いも込めて、森さんが次期財務次官に抜擢される可能性は高いのではないか」

 政府筋はそう読む。

 ただ、森氏が次期次官に就いた場合でも、次期局長の呼び声が強かった福田局長は留任させ、来年には次官に昇格させる予定だという。

 財務省の中からは、「人事のバランスさえ守ってくれるのであれば、ワンポイントの森さん起用も納得するしかないか」との声が聞こえてくる。ただ、関係筋によれば、森氏には「将来の日銀候補」との見方もある。このため、今夏の財務省人事には霞が関中から注目が集まっている。

(無料記事・了)

2017年3月15日

【無料記事】東芝「原発損失」の原因「オプション契約」の〝闇〟

toshiba wh2017-03-15 15.02.02

 深刻な経営危機に陥った東芝。屋台骨を揺るがした米原発事業をめぐり、またひとつ、不可解な闇が広がる。米原発事業をめぐり、不可解な「オプション契約」の存在が判明したのだ。

 これは東芝が買収した米原発会社・ウェスチングハウス(WH)が、原発を発注した米電力会社との間で締結したもので、電力会社が一定以上の建設費用の負担を拒否できる内容となっているのだ。

「これではあまりに発注の電力側に有利すぎる」と業界関係筋は疑念を強めており、WH経営陣が何らかの不正をはたらいた疑いも指摘されている。

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【写真】Westinghouse Electric Company公式サイトより
http://www.westinghousenuclear.com/
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 東芝がWHの原発建設事業で7000億円近い損失を被り、今年度は債務が資産を上回る債務超過に転落する見通しであるのは報道の通り。このため、東芝は稼ぎ頭の半導体事業を切り離し、過半数の株式を売却して資金を捻出する方針を余儀なくされている。

 ただ、東芝の内外からは、「経営陣が米原発事業の巨額損失の存在を知ったのは昨年末だった。WHからの報告が遅れたためだが、会社の屋台骨を揺るがす巨額損失がなぜ、突如として発生したのだろうか」と疑う声が根強く残っている。

 東芝や業界関係者の話を総合すると、巨額損失が発生した直接の原因は、WHが米電力会社と締結していた「オプション契約」が行使されたことだった。WHは、この電力会社からサウスカロライナ州で建設する2基の原発を受注したが、電力会社が工事遅延によって発生する損失を抑える契約も追加で結んでいたのだ。

 このオプション契約では、電力会社がWHに支払う金額は最大76億8000万ドルとし、これを上回った金額は全てWH側が支払う――との内容になっている。福島原発事故の発生に伴い、米国でも原発の安全基準が強化され、工事が遅延して建設費や金利が膨れ上がり、WHに巨額の損失が発生したとされる。

 しかし、関係筋は疑念をこう語るのだ。

「疑問なのは、この契約が結ばれたのが2016年5月だったことです。福島原発の事故があって、このオプション契約の時点ではすでに原発工事の大幅な遅延は明らかにわかっていた。なぜWHがこの段階で、わざわざ巨額費用を負担しなければいけなくなるような不利な契約をしたか、意味がわからない」

 東芝関係筋によると、米電力会社側はこのオプション契約を締結するため、約5億ドルをWH側に追加で支払っている。このため、「オプション契約を仲介した米国の金融会社からWH側にバックマージンが支払われた疑いがあるのでは」との見方が東芝内外から出ている。

 東芝関係筋は「会社に損害を与えることを分かってオプション契約を結んだのであれば、明らかな背任だ。あるいは、電力会社と金融会社が組んでWHを嵌めた可能性も捨てきれない」と指摘する。

 東芝をめぐる闇はまだまだ解明しきれていないのである。

(無料記事・了)

2017年3月9日

【無料記事】東芝「会見&広報契約社員募集」の異様

TOSHIB2017-03-09 17.18.50

 創業以来最大の危機に直面する東芝。危機を乗り切るため東芝は本社で記者会見を年末の12月27日と2月14日に開いた。しかしその評判が余りに悪い。メディア関係者は「とにかく異様な会見だった」と口を揃えるのだ。

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【写真】東芝公式サイトより
http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm
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 2016年12月27日未明、NHKが「東芝の米国子会社が巨額減損」と報じた。それを受け同日夕方、東芝の綱川智社長の会見は開かれた。

 東京・浜松町の東芝ビル39階の最上階。大会議室の会見場に着いた記者は不思議な光景を目撃した。

「あれ? 何で1番前の席が空いているの?」

 綱川社長や経営陣が着席する目の前の席である。訝しく思いながら後方の席に座る。会見直前、ある人物が東芝の広報担当に付き添われ一番前に着席した。全てを悟った記者は思わず「はあ」と溜息を漏らした。

 会見終了後「この会見は記者以外にも証券アナリストが出席していた」ことを知る。そして前列の席はその証券アナリストたちのためだったとも理解した。

 あろうことか東芝は、重大な会見だというのに、経営陣へ優しい質問をするアナリストたちを前に座らせ、記者たちと、厳しい質問を行うアナリストは後ろに追いやったのだ。当然、記者たちは抗議した。

「アナリストを同じ会見に呼ぶのまでは許せる。しかし席を用意するのはおかしくないか」
「先着順にすべきだ」

 東芝はこの時点で、米国の原発の減損額を4000億円弱と見積もっていた。この金額なら17年3月期決算の債務超過の転落はないからだ。

 しかし年が明けた1月8日と19日に内部告発が届く。「経営陣による『不適切なプレッシャー』があった」と。ここで事態は急展開。「一気に膿を出さなければ持たない」となり、7100億円の減損に追い込まれ債務超過転落が避けられなくなった。

 その内容を公表予定だった2月14日、東芝は決算発表を延期する。しかし集まった記者からの突き上げもあり同日18時30分に東芝ビルでの会見を設定した。そして会場に到着すると、

「おいおい、また前の席が空いている」

 そう。再びアナリスト向けに一番前の席を用意していたのだ。会社存亡の危機に立っていながら、経営陣への配慮を忘れない。これがビジネスマンの鏡なのか。

 前列に陣取るアナリストたちは一切質問をしない。ただパソコンを打ち、ノートにペンを走らせるのみ。質問は後列の記者とアナリストだけだった。

 会見が終了した2日後、転職情報サイト「DODA」に東芝が広報職の契約社員を募集したことが話題になった。「メディアコントロールできる人材」が欲しいというものだ。この募集を見た記者は会見の異常性を心から理解することができた。結局のところ、東芝は心底、メディアが怖いのだ。

 だから東芝は、この後に及んでもメディアを管理したいと考えている。しかしながら、こういう態度こそが、かえって記者の怒りを買うのだ。広報としての能力はゼロどころかマイナスと言っていいだろう。

 会見に出席した記者は「正直、屈辱を受けた印象だ」と口を揃える。仕切り直しとなった3月14日の決算会見はどうなるのか。興味津々で記者たちは待っている。

(無料記事・了)

2017年3月2日

【無料記事】楽天「ブックス・EC流通鈍化」で「崩壊前夜」の声も

rakuten2017-03-02 19.06.49

 楽天ブックスが2016年度の国内インターネット通販売上高で、7位に沈んだとの情報が飛び込んできた。アマゾンやヨドバシカメラには遠く及ばず、上新電機の後塵を拝す結果だという。

 国内のネット通販の売上高はインプレスが集計して発表している。「自らが仕入れた物品をネットで販売した」結果を集計したものだ。

 そのため、例えば楽天市場なら店舗から徴収する出店料でも稼いでいるが、こうした収益システムは集計に入っていない。楽天ブックスの場合は書籍とCD、DVDの販売が主なカウントの対象となる。

 インプレスが16年12月に発表した『インターネット通販TOP200調査報告書2017』では、15年度の売上高調査がまとめられている。それによると、ベスト10は、

1位 アマゾン         9300億円
2位 ヨドバシカメラ      790億円
3位 千趣会          774億円
4位 ディノス・セシール    570億円
5位 デル           550億円
5位 上新電機         550億円
5位 楽天ブックス       550億円
8位 ニッセンホールディングス 516億円
9位 イトーヨーカ堂      500億円
10位 ジャパネットたかた     470億円

となっていた。

 16年度は発表待ちだが、王者アマゾンは1兆円を超えたことは間違いないという。2位のヨドバシカメラも1000億円に達したそうだ。

 以下、3位・千趣会は800億円、4位・ディノス・セシールは約600億円、そして5位に3社が並んでいたのが崩れてしまった。

 5位はデル、6位は上新電機、そして楽天ブックスは「全く伸びなかった」(関係者)ことから7位に転落してしまったという。

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【写真】楽天市場公式サイトより
http://www.rakuten.co.jp/
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 また楽天ブックスよりランク下となっている企業でも、集計の考え方を変えると、順位が変わるものがある。

 8位のニッセンホールディングス、9位のイトーヨーカ堂、そして20位のセブン-イレブン・ジャパンは、いずれもセブン&アイ・ホールディングスのグループ企業だ。3社を合計すると15年度でも約1300億円に積み上がる。

 そして16年度は1500億円に迫る勢いだとの情報があり、これが事実だとすれば、実質的にはアマゾンに次ぐ2位。楽天ブックスの3倍に達する。

 ユニクロの通販も年率25%超の高い伸びを見せ、16年は400億円を超えたと推測されている。まったく伸びなかった楽天ブックスの550億円──これも同じように推定額ではあるのだが──を抜くのも時間の問題かもしれない。あと1~2年後には10位に転落する可能性も決して低くないのだ。

 ちなみに調査報告書の『2014』では、楽天ブックスは450億円で9位だった。それを『2017』で5位にしたのだから、つい最近まで売上を伸ばしていたのは事実だろう。

 だが、他社がいまだに右肩上がりの成長を示す中、楽天ブックスだけが鈍化傾向にあり、取り残されているのは間違いない。

 では楽天ブックスが「凋落傾向」だとして、それは本体たる楽天市場にどれだけ影響を与えるのだろうか。

イメージとは異なり「楽天市場」の厳しい台所事情

 本題に入る前に、これまで他社が行った報道を見てみよう。例えば『東洋経済オンライン』は16年2月『成長続いた楽天、海外事業で減損の「誤算」』との記事を掲載した。
http://toyokeizai.net/articles/amp/105383?display=b

 その記事では、

・減損損失は全部で381億円に上り、営業利益を大きく押し下げた。
・10年に買収した仏ECサイト運営の「プライス・ミニスター」と、11年に傘下に収めたカナダの電子書籍企業「コボ」の2社が大きく、減損額の6割超を占めた。

などとマイナス要因を指摘したが、

・国内EC(電子商取引)事業や金融事業は、ともに成長を続けている

とも指摘。事業における国内>海外のアンバランスの是正を訴えるにとどめた。

 その1か月前には、経済系ニュースサイト『ビジネスジャーナル』が、『楽天の危機…停滞鮮明で成長「演出」に必死、ヤフーの猛攻でトップ陥落』との記事を掲載した。
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13136.html

 こちらは、楽天に厳しい内容が多い。中でも興味深いのは、

・証券関係者が首を傾げたのは、国内のEC総額にそれまで含まれていなかった宿泊予約サイト、楽天トラベルが追加されたことだ。市場では「国内のEC総額が伸びていると見せるため」と受け取られた

との部分だ。

 では、この2つの記事を踏まえて、楽天本体の状態を読み解いてみよう。原点に戻れば、楽天ブックスの成長鈍化は、本体にどれだけ影響を与えているのかという問題だ。

 楽天ブックスという「一部門」の不調が、全体に影響を与えたとしても限定的だとするのが常識だろう。だが、関係者に取材すると異なる答えが返ってくる。「全体の流通総額もやばいのです」と声を潜めるのだ。

 例えば楽天は2月に16年12月期の決算を発表した。そこには「国内EC流通総額」として「3兆円」という数字が書かれている。

 ただこれは「市場」「トラベル」などに加え、「Edy」「カード」という金融ビジネスも加算した数字だ。では「市場」の真の数字はいくらなのか。

 楽天は15年6月期まで真面目に市場の「EC流通総額」を掲載していた。金額は5341億円だ。ところが15年9月期決算で楽天トラベルと合算した数値を出す。6836億円だった。

 ここから市場の真の数値を弾いてみよう。15年6月期のトラベルは予約を含んで1978億円。9月期は「宿泊のみ」のため20%減の1700億円と推定する。そこから市場は前四半期を下回る5100億円だったと見る。とすると、この時点で実は、楽天の伸びが止まっている懸念が生じてくる。

 その後16年9月期までは市場とトラベルを合算した数値が発表されていたが、16年12月期にカードなど金融事業を加えた数値に変更される。ただ前述の「国内EC流通総額3兆円」は年間累計だ。

 関係者によると「四半期は2兆4000億円程度」。そのうち金融が1兆6000億円を占めると見られる。そこから市場とトラベルの合算は約8000億円という線を導きだしてもいいだろう。

 トラベルは年率15%近く伸びているため約2000億円は超えるに違いない。とすれば市場は5000億円の後半になる。やはり15年6月期からほとんど伸びていないのだ。いや横ばいか減少している可能性もある。

 数字より本質を示すのが人事だ。こういう状況だからこそ、責任者だった高橋理人常務執行役員が16年7月に解任され、三木谷浩史社長自らが責任者となったのだ。

 楽天は一般的なイメージと異なり、それほど開かれた企業ではない。表面的な数字を追えば「楽天全体は好調であり、特にトラベルが利益を牽引している」と分析するのが普通なのだが、少し視点を変えれば、違った姿が見えてくる。

 そのため最も厳しい見方を示す関係者は「凋落傾向という言葉でも物足りない。このまま冴えない状態が続くのなら、崩壊の前夜と表現しても、過言ではない」とステークスホルダーなどに警鐘を鳴らす。

(無料記事・了)

2017年2月28日

【無料記事】今春上場予定「旅行代理店」の「実力鑑定」

tabi2017-02-27 17.54.15

 東京証券取引所マザーズ市場に、さる旅行代理店が上場間近なことがわかった。

 東証は今年1月から審査を始めており、早ければ4月にも上場する。ただ2016年は上場した83社中10社が上場後すぐに業績見通しを下方修正する「上場ゴール」が多発。「信頼に疑問符」(市場関係者)がつく状況だ。

 では今度の旅行代理店はどうだろうか。その実力を見定めてみよう。

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【写真】旅工房社公式サイトより
http://www.tabikobo.com/tabikobo/
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 その旅行代理店は「旅工房」という。1994年4月に設立。1996年5月から高山泰仁氏が代表となり現在に至る。資本金は9千万円、従業員は363人(16年4月時点)。「オンラインによる申し込みが主」の中堅海外旅行代理店である。

 主力取引銀行は三井住友銀行池袋支店と三菱東京UFJ銀行西池袋支店だ。今回の上場の主幹事は大和証券。監査法人も決まっている。

 16年の訪日外国人客は前年比21.8%増の2400万人に達するなど「インバウンド」は盛り上がっている。一方、「アウトバウンド」の日本人の海外旅行は減少傾向だ。観光庁によると2015年度の海外旅行の取扱高は8.4%減の2兆1、800億円。600を超える業者がひしめく旅行業界のなかで同社は「オンラインによるオーダーメイド旅行」を売りにする。

 たとえば、ナイアガラの滝を観る旅行を計画する。ネットで旅行代金を比較。予算にあるツアーが同社にあった場合、申し込む。通常はそこで完了するが、同社は違うのだ。

 すぐさま、同社の専門コンシェルジュがお礼のメールを送信。さらなる要望がないか確認して電話してくる。そこで「ホテルの部屋は滝が見えるところがいい」と頼むとそれに応える。

 このように「価格は他社と変わらないがかゆい所に手が届く」サービスが強みで、「細かい要望の多い中高年層がターゲット」である。

 業績は現段階では非公開だが、調査会社によると、取扱高は13年度が187億円、14年度が218億円、15年度が222億円と順調に伸びている。15年度の当期利益は9,000万円と14年度の1億5,000万円より減少しているが、これはリアル店舗を増やしたためだろう。

 とすると、減少傾向が続く海外旅行業界のなかでは健闘しており、市場関係者は「それなりのエクイティストーリー(成長戦略)を示せばいい株価がつく」と評価する。

 株式市場では16年3月31日に東証マザーズ上場の旅行会社・エボラブルアジアと比較すると予想される。

 エボラブル社は、公募時の時価総額は96億円だったが、上場時の初値は公募価格を33%上回る2,670円をつけ時価総額は143億円になった。その後、株式を3分割して現在の株価は3、700円前後。時価総額は公募時の6.5倍の626億円に拡大した。

 エボラブル社の直近16年9月期の業績は、取扱高が277億円で当期利益が3億4,000万円。取扱高でいえば旅工房は同水準。あとは利益が伸びる成長戦略を示すことができるかだ。

 旅工房の公募時の株価(時価総額)がどう設定されるか。それを見れば「売り」か「買い」か判断できる。さてどうなるか、楽しみだ。

(無料記事・了) 

2017年2月27日

【無料記事】孫正義が狙う「NVIDIA」人工知能を〝独占〟

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 米国で最も注目されている企業、をご存じだろうか。NVIDIA Corporation(エヌビディアコーポレーション)が、それにあたる。カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカーだ。

 創立は1993年4月、従業員は9,000人と中堅レベル。だが、昨今話題の人工知能(AI)の心臓部・演算処理装置(プロセッサ・ユニット)の設計を主業務にしており、大きな注目を集めている。

 そして、この会社を、孫正義氏が率いるソフトバンクが狙っているのだ。

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【写真】NVIDIA公式サイト『ディープラーニングとAI』より
http://www.nvidia.co.jp/object/deep-learning-jp.html
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 NVIDIAの創業者はジェン・スン・ファン(黄仁勲)氏。台湾・台北市で1963年に生まれ、アメリカへ移民。オレゴン州立大学、スタンフォード大学などを経て、NVIDIAを起業。まさに立志伝中の人と言っていいだろう。

 3次元画像を高速処理するプロセッサ・ユニット(GPU)の開発が原点。当初はパソコン用が主体であり、インテルやAMDの後塵を排していた。しかしAI技術の進展に伴い、同社のGPUが注目されるようになった。

 最近のAIを支える技術はビッグデータと深層学習=ディープラーニングだ。大量のデータを高速で処理するとともに、分析したデータをさらに深く掘り下げ精度を高める。その結果、囲碁や将棋でプロと対等に戦えるようになった。

 しかしそのためには高速処理が可能な高性能コンピュータが不可欠であることは言うまでもない。複数台のネットワーク接続で高速処理は実現できるが、それでもコンピュータの演算処理能力は高いほうがよい。

 さらに最近、画像や音声認識をAIで実行する分野も発展してきた。それら環境の変化もありNVIDIAのGPUへの関心が高まった。

 NVIDIAのGPUは3次元の画像処理が中心だ。ということは、高速処理が得意なのである。AIといえばIBMの「ワトソン」やグーグルの「アルファ碁」が有名だが、どんなに優秀なソフトウェアがあってもそれを高速に処理する高性能コンピュータとその心臓部プロセッサ・ユニットがなければ話にならない。

 そしてNVIDIAには高性能コンピュータ(提供チップセット=Tesla)からゲーム(同GeForce)、モバイル(同Tegra)、果てはドローン(同Jetson)や自動車(同PRIVE PX)まで対応可能な製品がある。

 日本では工場用ロボット製造のファナックが提携しているが、世界ではグーグル、フェイスブック、マイクロソフト、中国・百度が採用するなど、その高速処理能力をAI分野に生かそうと各社競っている。

 注目度が高まったここ一年、上場している米ナスダック市場でも株価は3倍以上の100ドルを超え、時価総額は500億ドル(約5兆円)に達した。まさに昇り竜の勢いだ。

 そのAIの心臓部を担う〝昇り竜〟にソフトバンクが目をつけた。

 すでに2,000億円を用意して秘かに市場で買いつけを始めている。さらに追加の資金が必要な場合は、サウジアラビア政府と提携して発表した総額10兆円の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を活用する。そのうえで資本提携または買収を狙う。

 ソフトバンクは2016年、英国の半導体設計大手のARMを3兆3,000億円で買収した。ARMはスマートフォン搭載のプロセッサを展開しており、モバイル市場では85%という圧倒的シェアを誇る。

 このモバイルの心臓部を握るARMとAIの心臓部を司るNVIDIAを手中にすることで、未来の覇者になろうという青写真だ。NVIDIAは、今後発展が見込めるIoT──モノのインターネット分野──のプロセッサ・ユニットも有し、単なるAIチップメーカーではない。ソフトバンクにとって垂涎の的なのだ。

 この一年でNVIDIAの時価総額は大きく跳ね上がった。ARM買収より大きい買い物になることは必至である。ソフトバンクの次の一手に目が離せない。

(無料記事・了)

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