2017年8月4日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー③

2017-08-04 14.57.05

 詐欺の疑いが濃厚な「シナジーブックス」という異業種交流会の被害者インタビュー。第3回は、いよいよ被害者が現金を用意し、詐取される場面だ。

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【写真】国税庁公式サイトより、源泉徴収票
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/23100051.htm
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(承前)
──次のステップは、向こうは何をしてくるのですか?

被害者男性(以下、被害者) 銀行から借り入れようということになって、「いくら借りましょうか」という相談と、「借り入れを行うためには源泉徴収票が必要なので用意して下さい」という説明がありました。

 そのため年末調整で会社から送られてくる源泉徴収票が自宅にあったので、それを写メで撮影し、無料通話アプリのLINEで送りました。

 すると、私はサラリーマン時代の給与が低かったので、源泉徴収票を見た向う側が「これだと、あまり借り入れられませんね。大きく運用できないですね」と言ってきたんです。

 そのため、最終的には向こうが源泉徴収票を偽造して、私の給与を増やしました。

──これは立派な有印私文書偽造罪ですよね?

被害者 私は詳しいことは分かりません。

──源泉徴収票を偽造するための費用を、何かの理屈で請求されませんでしたか?

被害者 いえ、びた一文、要求されていないですね。

──偽造した源泉徴収票を持って、どこに行くように言われましたか?

被害者 メガバンク2行です。いつの時点か記憶はありませんが、向う側が「消費者金融も使えるけど、あなたの信用情報は綺麗だし、先々のビジネスを考えると銀行の方がいいだろう」と言っていました。

──結局、審査は通った?

被害者 通りました。1行で200万円、1行で100万円の借り入れを依頼したんですが、私の口座に振り込まれました。

──偽造された源泉徴収票は今、どこにありますか?

被害者 済んだら返して下さいと言われて、返しました。

──振り込まれたお金は、どうしたんですか?

被害者 口座から出金して、現金を椿屋珈琲店に持っていきました。

──これまでに投資をされたことはありますか?

被害者 証券会社を通じて株を買ったことがあります。3、4年前だと思います。

──もともと、投資に興味があったんですか?

被害者 興味はありました。投資についての知識を多少は持っていると思っています。

──知識があったなら、向う側の説明に疑問を感じたりしなかったんですか?

被害者 完全に信じていたわけではないんです。引っかかった場面も、何回かありました。向う側も強引に説き伏せてきたわけではありません。それでも騙されてしまったというのは、やはり独立の不安から、「定期的に現金が入ってくるなら、それは助かるな」と期待してしまったというのは大きいと思います。

──今のような冷静な精神状態だったら、詐欺だと気づきましたか?

被害者 だと思います。

(第4回につづく)

2017年7月28日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー②

2017-07-28 9.04.21

 詐欺の疑いが濃厚な「シナジーブックス」という異業種交流会の被害者インタビュー。第2回は、被害者が「信用情報」を自分で取得させられるプロセスを詳述する。

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【写真】全国銀行個人情報センター公式サイトより
(https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/)
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(承前)
──勉強会に参加するためには、入会書のようなものは必要だったんですか?

被害者男性(以下、被害者) 必要があったかは分かりませんが、私は書いていません。

──あくまでサークルだから、入会書のようなものはないという感じですか?

被害者 そうだと思います。

──向こうが要求する入会金とは、幾らだったんですか?

被害者 20万円です。

──すぐに払えと、要求されたりするんですか?

被害者 いえ、「今すぐ払わなくても、別にいいですよ」というスタンスでした。

──なるほど。では、勉強会の次は、どうなるんですか?

被害者 その勉強会の中で、「実はライフコンサルというのもやっているんです」という話が出てきたんです。

──ライフコンサル?

被害者 それが投資の話になっていくんです。

──具体的には?

被害者 シナジーブックスとして資金を運用しているというんですね。そこに現金を預ければ、運用益が支払われて、仕事や生活の援助に充てられますよ、という話だったんです。

──相手が初めてカードを切ってきた。これまでは常に人脈の紹介であって、そういう資金援助という話はなかったんですよね?

被害者 私の記憶は、それに近いですね。ライフコンサルという単語は、もっと前から出ていたのかもしれませんが、そこに焦点を合わせた説明はされていません。

──少なくとも記憶には残っていないわけですね。では、ライフコンサルという単語が出てきた時、最初にどんな印象を持たれました?

被害者 お金が定期収入として入ってくるのであれば、すごくありがたいな、というのと、実のところ「でも本当かな?」と疑ってもいました。

──シナジーブックス側は、どの程度、売り込んできましたか? これまでは全くがつがつするところがなく、淡白な関わり方で、それが彼らの信頼性を高めていたようですけれど。

被害者 淡々としていました。「興味がありますか?」「お金を預けてもらっても、預けなくてもいいですけど、どうしますか?」ぐらいの話です。面接の時も「やってもやらなくてもいいですけど、どうしますか」という感じでしたから、トーンは一定しています。パワーポイントで資料を見せられたんですけれど、ライフコンサルも、たくさんある説明の中の1つという感じで、熱心に売り込んでくるようなことはありませんでした。

──向こうは熱心に勧誘しなかったわけですが、どうしました?

被害者 結局、「興味はあります」と答えてしまったんですね。シナジーブックス側は「じゃあ、改めて別の人間にライフコンサルの話を聞いて下さい。進めていけるかどうか確認しましょう」と言うにとどめたんですが、ただ、その時に「信用情報に問題がなければ、銀行から借りたお金でも運用できますから、手持ちの現金が少なくとも大丈夫です」といった説明はされたという記憶があります。

──その「別の人間」が出てきたのは、いつぐらいですか?

被害者 いつだったかなあ……。

──面接が1月、勉強会が2月、となると、3月ぐらいですか?

被害者 まだ相当に寒かった記憶はあります。また、それほど待たされなかったという印象も残っていますね。

──ありがとうございます。では、そのライフコンサルの話が、どのように持ちかけられたか、教えて下さい。

被害者 勉強会の後、ランチ会のようなものが開かれたんです。経営者の人たちといった数人で、渋谷の居酒屋のような場所で、昼食を食べました。

──この時点では、一応は「人を紹介します」ということはしているんですね。

被害者 この段階では、そうでした。

──勘定は割り勘ですか?

被害者 この時点までは、向こうが全額、出してくれていました。

──その昼食会を挟んでから、ライフコンサルの担当者に会ったんですね?

被害者 昼食会で会った女性も、ライフコンサルの担当者に会うということで、では一緒に会いましょうということになったんです。その後、JR新宿駅の改札で待ち合わせをするように言われて、当日に出向くと、1人の男性がいました。ちょっと強面な印象の表情をしていました。

──女性はどうだったんですか?

被害者 後から来るということで、では先に私の方をやってしまいましょうということになりました。

──喫茶店かどこかで、ライフコンサルの説明を受けたのですか?

被害者 いえ、違います。新宿にはCIC(編集部註:割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)の首都圏窓口があるんです。そこに行って手数料を払うと、私が金融機関から借金をしているか、何かのローンを組んでいるか、という情報が開示されるんです。その強面の男性から、そうした説明を受けて、まずはCICに行きました。

──結果はどうだったんですか?

被害者 車のローンと、後は携帯電話の分割支払いが出てきました。

──回答を拒否されても結構ですが、消費者金融からお金を借りたことはありますか?

被害者 一度もありません。

──強面の男は、情報の開示を求めている際、一緒にいるんですか?

被害者 そもそも同席はできないんです。私が手数料を払い、情報を取ってくるのを待っていました。

──信用情報を入手して、どうしました?

被害者 場所の記憶が曖昧なんですが、新宿にあるホテルの喫茶コーナーに行った覚えがあります。そこにライフコンサルの「担当者」が待っていました。最初に改札で会った強面の男性は、この担当者の部下だったようです。

──昼食会で会った女性は、結局は来たんですか?

被害者 後に来ました。

──その女性と、ご自身は、最終的には別々にさせられたんですか?

被害者 はっきりとした記憶はありませんが、僕の話が進んでいる時も、女性は同席していたはずです。

──信用情報の開示とか、最大級の個人情報の話がされているにもかかわらず、ですか?

被害者 その女性は、色々と問題があったみたいなんです。担当者たちが「別のやり方を考えないといけないので、また改めてやりましょう」というようなことを話し合っていました。

──それに対して、こちら側は信用情報に問題がないことが分かった。向う側は、どうしてきましたか?

被害者 私の方は信用情報に問題がないので、「進められますよ」ということになりました。「金額は、どうしますか?」という具体的な話も出てきたと思います。

──女性は、いましたか?

被害者 いたと思います。

──何か引っ掛かりますね。女性は退席してもよさそうですけど……。女性の信用情報は見ていないですよね?

被害者 私は見ていないですね。

──安心感を与えるため、サクラの女性を同席させた気がするんですが……。それはともかくとして、この時点では「ライフコンサルをやります」とは言っていないんですね?

被害者 はい、そうです。

──いつの時点で、ライフコンサルに出資しようと決断したんですか?

被害者 その会合中に、最終的に「やります。お願いします」と言ってしまいました。

──振り返られて、即断即決をされたんですか? それとも向こうの粘りに根負けしてしまったとか、どんな感じだったんですか?

被害者 強引に説得された、ということはありません。私は相当に迷っていて、それを放置してくれていました。最終的に、自分で決めたんです。

──となると、自分で自分の背中を押したんですね。その理由は、今から考えると何だったと思いますか?

被害者 日銭が入ってくる、という期待は大きかったのかもしれません。

──まだ会社員でしたか?

被害者 会社員でした。

──独立のことを考えると、不安だったわけですね。幾らぐらいのリターンを保証されていたんですか?

被害者 月利5%だったと記憶しています。

──資料のようなものを提示されたんですか?

被害者 一切、ありません。私がメモを取りました。

(第3回につづく)

2017年7月21日

【無料記事】交流会詐欺「シナジーブックス」被害者インタビュー①

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 交流会詐欺という悪徳詳報、いや、犯罪行為をご存じだろうか。

 異業種交流会ならば、知っている方も多いだろう。自分が働く「業界」で、自社・他社での出逢いが重要なのは言うまでもない。しかしながら、どうしても似た〝世界〟を背負っているのも事実だ。

「井の中の蛙」の喩えを使うなら、「井戸の中における出逢い」だけでなく、「井戸の外」で働く人々と知り合いになりたい。

 少なくとも刺激になるのは間違いない。場合によってはルーティーンと化した仕事に新たな発見が生まれる可能性があるし、何より人脈が広がれば最高だろう──。そのような動機から、交流会に参加する人は跡を絶たない。

 だが、見知らぬ人同士が出逢う場所は、詐欺師にとっても絶交の場所だ。真面目な異業種交流会に詐欺師が紛れている場合もあるが、詐欺グループが交流会を開いているケースもある。

 手口も多種多彩だ。例えば異業種交流会を利用するケースなら、参加して美人局を狙うグループもあれば、悪質なマルチ商法に勧誘する連中もいる。

 この連載で取り上げるのは、交流会そのものが詐欺グループによって運営されているケースだ。具体的には主に渋谷で活動する「シナジーブックス」という異業種交流会は、詐欺の疑いが濃厚なのだ。

 検索エンジンに「シナジーブックス」と入力すれば、「詐欺」の被害を訴えるサイトが多数表示されることが、深刻な被害を物語っている。

 弊誌は被害者男性の接触に成功し、詐欺がどのようにして行われるのか、その詳細な内容をインタビューすることができた。全てをノーカットでお届けしよう。

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【写真】シナジーブックス公式サイトより
(http://synergybooks.tokyo/)
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──「シナジーブックス」と接点ができたのは、どんなきっかけだったのですか?

被害者男性(以下、被害者) 私は大学を卒業してから、外食産業を中心に勤務してきました。そして数年前から独立を模索するようになったんです。

 既に独立を果たした知人もいます。そこで、最初は知人に相談したんです。「何から始めたらいいんだろう」とアドバイスを求めると、「まずは人脈を広げるべきだろう。異業種交流会が盛んなようだから、参加してみたら?」と提案してくれたんです。

 インターネットで探してみると、交流会の情報サイトを見つけました。チェックして、「ここに行ってみよう」という会を選んだんです。「カフェでこじんまりやっています」といった触れ込みでした。

 2014年の冬でしたか、カフェに行ってみると、他のメンバーの方々は参加できなくなったとかで、カフェ会の運営をしている方と、2人きりで話をさせてもらいました。

 私が独立の話をすると、その運営をしている方が「それなら会わせたい人がいる」と紹介してくれたのがMという男でした。このMがシナジーブックスのメンバーだったんです。

 翌15年に、秋葉原のカフェでMと会いました。

 Mはアパレル関係の会社を経営しているといい、年齢は30代半ばぐらいでしょうか。営業マンやフリーランスといった人脈を必要とする人に、人を紹介するのが「ライフワーク」と言っていました。

 その言葉に嘘はなかったんです。最終的には20〜30人を紹介してもらいました。

 会社の名前に頼らず、自分の力で頑張っている方々とお話をさせてもらうと、やっぱり勇気が出ます。独立に至る具体的な道筋も教えてもらいましたし、私の事業計画にアドバイスを頂くなど、非常に有益な体験がたくさんできたことは事実でした。

 次第に私も「サラリーマンを辞めて独立しても、何とかなるのではないだろうか」と考えることが増えていきました。

 当時の勤務先が、非常に閉塞感の強い職場だったことも大きかったでしょう。給与も満足できる額ではなく、何よりも将来の展望が全く描けませんでした。生きているのか死んでいるのか分からないというのが正直なところだったんです。

 ですので、「これなら失敗してもいいから、独立にチャレンジしてみよう。そうすれば、死んでいる自分の時間も、再び生き返るだろう」と気持ちを固めたんです。 

 そうすると、Mが「あなたのように頑張っている人を応援する団体というか、サークルのようなものがあるんです。そこでも相談してみてはどうですか」とシナジーブックスについて切り出してきました。

 Mは「自分は創設初期からシナジーブックスに関わっているけれど、正規メンバーではない時期もあった。今は正規メンバーだけれども」と言い、シナジーブックスはメンバーが多く、社会的に成功している人も少なくない。

 ただ、誰でも入会できるわけでもない。面接があり、それに合格する必要がある、とのことでした。そしてMは「まずは面接だけでも受けてみたらどうですか?」と誘ってきました。

──シナジーブックスに何を期待しましたか?

被害者 団体としての規模が大きく、パーティーも開催しているという話だったんです。ならば参加することで、最終的にはパーティーに自分のサービスを提供できることになったらいいな、と考えました。

──「うちに来れば儲かるよ」といったような露骨な誘導はなかったんですか?

被害者 この時点で、それはなかったです。「何かの助けになるかもしれません」という以上のことは言わなかったですね。お金についての具体的な話は、面接を受けてからですね。

──とはいえ、いきなり「面接」という単語が出てきたわけですよね。違和感はなかったですか?

被害者 ありましたし、実際に「面接ですか?」と訊きました。

──Mは何と答えたんですか?

被害者 単なるサークルだけど、あまり変な人は入れたくない。ある程度、人を見るためにやっているので、という説明でした。

──「あなたはちゃんとした人ですけれど、そうではない人もいるので、面接をしているんです」という理屈ですね?

被害者 その通りです。

──実際の面接は、どうでしたか?

被害者 シナジーブックスは伊藤大智氏が代表ということになっていますが、いきなり、その伊藤代表が出てきました。

──オフィスみたいなところがあるんですか?

被害者 私の知る限りでは、オフィスのようなものは持っていないようです。渋谷の喫茶店に居座っていて、そこをメンバーが出入りしているんです。

──喫茶店で面接になったんですね?

被害者 はい。

──伊藤代表を含めて、何人ぐらいいましたか?

被害者 10人ぐらいいたと思います。店の一角を占めているんですが、特に迷惑をかけているという印象はなかったですね。むしろ常に飲み食いしていますから、店側からすれば非常にありがたい常連客だということになると思います。

──伊藤代表の面接というのは、どんな内容でしたか?

被害者 シナジーブックスについての説明と、私に対する「何をやっている人なんですか、将来は何を目指しているんですか?」という質問ですね。

 その上で、「シナジーブックスは様々な形でメンバーを応援しています」「メンバーではビジネスで成功している人がいます」「フリーランスの人もたくさんいます」という話が続きました。

 他にも「イベントを定期的にやるので、ビジネスマッチングのように、メンバー同士がつながって発展していきます」「研修制度もあり、勉強会が開かれています」という話もありました。

──伊藤代表は、シナジーブックスを、どう説明したんですか?

被害者 基本的にはMの説明と同じでした。シナジーブックスは「これから何かを頑張りたい人を応援する団体」で、「入会金が発生するけれど、後払いでもいいし、最終的には払わなくてもいい。お互いの信頼感や相手を応援したいという気持ちだけで成り立っている団体だから、後々成功した時に払えるようになってくれればいい」などと言っていました。

──入会金は、具体的な額を言いましたか?

被害者 ちょっとうろ覚えなのですが、20万とか50万とか、それぐらいだったと思います。

──書類とか、マニュアルのようなものを見ながら、説明するんですか?

被害者 説明の時には何も見ていませんでした。後で書類のようなものを、タブレットで見せられましたけれど。パンフレットのようなもので、「入会した場合、以下のことは守ってもらいます」ということを言われました。

──守ることとは、具体的にはどういうことが書いてあったんですか?

被害者 常識的なことがずらずらと書いてあった印象です。「人を信じよう」とか「まず自分から他人を助けましょう」とか、そんな内容ですね。

──面接時間は、どれぐらいでしたか?

被害者 2時間ぐらいだったと記憶しています。

──総体としての印象は、いかがでしたか?

被害者 その時の私は、独立するなら、人脈をもっと広げなければならない、顧客を確保しなければならない、資金を回せるようにならなければ、と焦っていました。なので思い切って「とりあえず、参加させてもらいましょう」と言いました。

 シナジーブックス側も「来て下さい」とは言いませんでしたね。「参加を認めますけど、あなたはどうしますか?」というスタンスだったんです。

「あくまでも決めるのは、あなたです」という話に終始しました。ただ、それが「結果的には入るでしょ」ということを遠回しに伝えてきたのかな、とも感じましたけど。

──「ぜひ入って下さい」と言わないのは、相手側のテクニックという感じがします。

被害者 そうだと思います。話は善意のものなんだという印象が強まりました。

──20万とか50万という入会金の話も、逆に正直な印象を与えるのでしょうか?

被害者 金額的に大きいと思いましたけど、「最終的には払わなくてもいい」と言っていましたから、なら参加しようかという感じでした。とにかくシナジーブックス側は一歩引いているというか……。

──ガツガツしていない?

被害者 そうですね。ただ、団体としての力を持っているなとは思わされました。うまくいけば自分のサービスを買ってくれるかもしれないという期待や、人脈を紹介してもらえそうだという希望は大きかったですね。

──伊藤代表の喋り方というのは、どんな感じですか?

被害者 ちょっと引いた感じなんですが、自信を持っているなという印象を与えますね。あと、どちらかと言えば、聞き上手です。

──面接に合格して、「入ってもいいよ」とOKが出ました。とりあえず「入りましょう」ということになったわけですが、そうすると向う側はどんなアクションを起こしてくるんですか?

被害者 その後、「シナジーブックスに関する勉強会をやっています」と紹介されて、2月1日に出席しました。

──場所は、どこでしたか?

被害者 渋谷の椿屋珈琲店ですね。

──勉強会の内容は、どんなものだったんでしょうか?

被害者 『シナジーブックスの2年』というものもありました。こういう背景で、人を応援していくんです、と教わるわけです。創業が佐藤謙一郎氏で、「サトケンと呼ばれている人間がシナジーブックスを最初に作り、それが今はこういう形で広がっています」という話をされました。

 組織内部が色んな部門というか、グループに分かれているという説明で、広報とか、イベント開催とか、そういう仕事を担当するグループがあって、参加者の強みや弱みを勘案しながら、部署を活動させているということで、組織図のようなものも見せられました。

──組織図はiPadで見せられるんですか?

被害者 iPadですね。パワーポイントのようなものが表示されました。

──この勉強会も、伊藤氏が説明したんですか?

被害者 この時は別人です。男2人が講師役で、出席者も全員が男性でした。Mも同席したんです。

──Mも来たんですか? 久し振りの再会になりますね。

被害者 いえ、説明するのを忘れていたんですが、面接の時もMは同席していたんです。

 私に「この人が伊藤さん」とシナジーブックスの人間を紹介する役割でした。シナジー側の人間は3人いて、私を入れて4人で話をするわけです。

 そして勉強会もMと、他に新しい講師役の2人の男、そして私の4人で行われました。

──自分たちはNPOなのか、NGOなのか、株式会社なのか、そんなことは何も説明しないんですね?

被害者 はい。

──団体のメンバー数なんてことは言うんですか?

被害者 一応、「何百人が参加しています」という話はあったと思います。

──広告塔的な有名人の名前とかは出ましたか?

被害者 そういう人名は出てこなかったです。「不動産業で成功している人がいます」という話や、サクセスストーリーというわけではないんだけれど「こういう活動をしている人がいます」という内容でした。

 パルクールという、「忍者スポーツ」とも呼ばれるような運動をご存じですか? 屋根の上を走ったり、ビルから回転しながら落ちて着地したりするんです。そのパルクールに打ち込んでいる人の話が出たりしました。

──実名なんですか?

被害者 一応、「何とかさん」という名前は出ていたはずです。けれど、結局は会っていないので、どこまで本当だったのかは分かりません。

──iPadで成功者の顔写真が出たりということは?

被害者 それはありませんでした。

(第2回につづく)

2017年5月16日

【無料記事】「共謀罪」でも防げぬ「複数パスポート所持」の大問題

2017-05-14 12.58.20

 日本が工作員天国と言われて久しい。この背景の1つとして、先に民進党・蓮舫代表の「二重国籍」があるのをご存じだろうか。

 世界には、国内出生者には自動的に国籍を付与する「出生地主義」を採る国が存在する。具体的にはアメリカ、カナダ、ブラジ、アルゼンチン、などといった国々だ。

 例えばアメリカでは、たとえ両親が日本人国籍であり、2人の親類縁者にさえアメリカ国籍を有した人間が存在しなくとも、妻がニューヨークで出産すれば、子供にはアメリカ国籍が与えられる。

 これを利用すれば、パスポートを2つ有することが可能になるのだ。

「そんなはずはない」と誰しも思うだろう。テロや不法移民の対策で、入管の規制はかつてないほど厳しくなっている。複数のパスポートを手に入れた瞬間、捜査機関に目を付けられないほうがおかしい──。

 だが先頃、池袋のパスポートセンターにこんな珍妙な問い合わせが寄せられた。

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【写真】法務省公式サイト「国籍の選択について」より
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html
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「友人に子供が生まれたのだが困っている。池袋のパスポートセンターで申請した子供のパスポートを取りにいきたいのだが、子供が海外にいて取りにいけない。子供が窓口に行かずになんとか受け取れる方法はないか?」

 パスポートは本人確認での手渡しが原則だ。乳幼児だろうと例外は認められない。やむなく本人が入院中であるなどの理由がある場合は、担当者がそこまで赴き、手渡しすることになっている。

 ところが、この子供はパスポートを所持していないにもかかわらず、海外にいるというのだ。どうやって日本を出国したのだろうか。海外で生まれた子供なら、領事館など現地の日本在外公館で申請し、受領するという方法がある。だが、この子供は池袋で申請したというのだ──。

 調査の結果、ミステリーの謎が解けた。この「友人」は、かつて中国籍を持ち、日本に帰化していたのだ。

 そして親は中国と日本のパスポートを2通所持。子供は中国のパスポートだけを持っていた。親の帰化に伴い、子供にも日本のパスポートを与えようと池袋で申請したのだが、事情があって中国に帰る必要が生じた。そのために親は日本のパスポート、子供は中国のパスポートで出国した。

 国籍法に詳しい関係者は、「2国のパスポートを持つことを合法とは言えませんが、違法というわけでもないのです」と説明する。

「日本人を例にとりましょう。アメリカで生まれた日本人は、アメリカと日本の二重国籍になります。22歳までに国籍を選択する必要がありますので、日本国籍を選んだとします。ではアメリカのパスポートを返納しなければ、日本のパスポートを取り上げられるかというと、そんなことはありません」

 蓮舫代表のケースでも垣間見えたが、そもそも二重国籍の人間が、国籍を1つに選ぶのはまだしも、もう1つを「離脱」する手続きを行うかは任意というのが実態だ。

 ちなみに検索すれば、二重国籍だった日本人が、外国籍を離脱した経験を綴ったブログを見つけることができる。相当に大変な作業のようだ。これで怖気付く人がいても、全くおかしくない。

 話を元に戻せば、少なくとも日本において、2つのパスポートを保有していることの法的罰則は存在しない。国籍法で「日本国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言」を行えと定めているだけだ。日本とアメリカで連絡を取り合い、「2つのパスポートを所持していないか」などとチェックするシステムも存在しない。

 よって、二重国籍の人間なら、2つのパスポートを取得することは比較的、容易なのだ。それにしても、これだけテロ対策で世界的に入国管理が厳しくなっているご時世に、ずいぶんと世界はザルな制度を運用しているものだ。パスポートというシステムが制度疲労を起こしていると見ることは可能だろう。

 それにしても、ある時は中国人、ある時は日本人、と成り済ますことが可能なのだから、スパイにとっては──民間ベースの産業スパイであっても──極めて優先順位の高い関心事となる。

 更に深刻なのは偽造パスポートの問題だ。偽造において最重要なのは、パスポートの素材だ。複数のパスポートが容易に発行しうる状況では、完全な本物という、またとない素材が闇市場に流出するリスクを増加させてしまう。

 実例もある。1987年に発生した大韓航空機爆破事件で、金賢姫ら北朝鮮籍の実行犯らが日本の偽装パスポートを所持していたことは記憶に新しい。彼らがどのようにして偽装パスポートを作成したかといえば、本物を無断借用したりしている。

 スパイという極端なケースでなくとも、特に日本との二重国籍は〝権益〟に喩えられるほど旨みがあるという。フィリピンやタイなど、東南アジアに詳しい関係者が指摘する。

「日本国籍が憧れの対象となっているのは、日本の医療制度が充実していることも大きい。最先端の医療が、これだけ安い値段で受けられる国は、世界のどこを探しても他にはない。つまり日本人であることは、世界一幸せだということを意味する」

 日本人と結婚し、帰化を目指そうとする動きが生じるのも納得だ。おまけに国籍法が禁じているとはいえ、母国の国籍を喪失しなくても済む可能性さえ残されている。チャレンジする価値は充分にあるだろう。
 
 更に驚愕の事実もある。さるブラジルの邦字新聞の社長は次のようにして現地記者を確保しているという

「ブラジルで就労ビザはなかなかおりない。だから、うちの記者は日本から来て、現地の女の子と結婚して子供をつくっちゃうんだ。子供はブラジル国籍が取れるから。そうすると、親もブラジル国籍が取れる。就労ビザよりもそれが一番早い」

 これも日本国籍を喪失しないという安心感があってのことなのは間違いない。

 再び〝スパイ〟の話に戻れば、先頃、暗殺された金正男氏も、ずいぶんと偽造パスポートで日本に入国していた。日本における不法入国の「水際対策」に疑問を抱かれても不思議はない。共謀罪やらテロ対策を声高に謳う前に、まずは足下のガードから守ってはどうだろうか。

(無料記事・了)

2017年5月15日

【無料記事】PTA役員「人材難」で「入学式軟禁事件」多発中

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 大阪出身のAさんは、在京の一部上場企業で広報部に在籍している。子供が通う、ある中学校のPTA会長まで務めている。

「ほとんどPTAの会議には出られませんね。最初は母親たちから半ば押し付けられる格好だったんですが、長男の内申点にもそれなりの影響があることがわかり、次男が卒業するまでは引き受けるつもりです」

 相当に邪な動機で会長職を続けるAさんだが、何があっても出席する必要がある行事は入学式だという。

「会社には『入学式だけは、どうか……』とお願いして、時間を確保しています。ただ、どうにも気が重いのは、会社で半休を取ることではないんです」

 入学式の時期といえば、働く人間にとっても年度初めだ。半休といえども取得には気を使いそうだが、それよりも大変なことなどあるのだろうか?

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【写真】『平成28年度優良PTA文部科学大臣表彰被表彰団体一覧』より
http://manabi-mirai.mext.go.jp/assets/files/H26PTAjirei/syouchuu.pdf
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「うちの中学校では入学式が終わったその場で各クラスのPTAの役員決めをするんですが、終わるまで逃げられないように体育館の扉を閉めてしまい、役員が決まったクラスから入学式の記念撮影をするんですよ。いわば、子供も親も軟禁状態にするんです。こんなやり方、あまりにも稚拙で、ほとほと嫌気が差すんですが、お母さん役員からは『こうでもしなければ役員は決まらない』『先に入学式の写真を撮ってしまったら、仕事を理由に親たちは逃げてしまう』などなど理由をならべ、一向に改善されないんです」

 Aさんの子供が通う中学校は、世田谷区に隣接する郊外に建つ。しかしながら、これはAさん周辺の話ではなく、全国の〝スタンダード〟となりつつあるという話だそうだから、驚きだ。

 どんなに多忙な親でも、子供の入学式だけは調整してやって来る。その時とばかりに体育館に軟禁し、役員が決まるまでは入学式の写真を撮らせないという作戦。賢いと言えるのかもしれないが、今や戦後70年。国際化教育の必要性が叫ばれる日本社会で行われている〝儀式〟と考えれば、親でなくとも泣けてくる。

「でも、その作戦が成功すればいいですけど、失敗することも少なくないんですよ。結局は何十分も全員が押し黙ったままということも珍しくありません。その時は『じゃあ、くじ引きで選びましょう』と提案するんです。だったら最初からくじ引きでやればいいだけの話じゃないですか」

 そもそも論で言うのなら、PTAの参加は任意だ。それが体育館に軟禁するという乱暴さはPTAの精神からはあまりにもかけ離れている。

 PTA会長たるA氏も、それで憤りを感じている。ならば、PTA会長らしく、この悪慣行を是正すればいい。いや、是正するべきだ──そう問うと、A氏はこう答えた。

「子供の内申点に響きますから、それは無理ですね。私はお飾りでいいんです。子供も生徒会長ですしね。公立校への進学には、とにかく内申点確保が最優先ですから。そつなく、波風を立てず、流していけばいいんです。そもそも母親役員に担ぎ上げられているだけで、会長をやりたくてやっているわけでもないですしね。全ては子供の進学のためです」

 かつてのPTA会長といえば大学教授だったり、地元の名士だったりと、それなりの人物が就くことも珍しくなかった。だが、こんな世界にも「人材難」の波は押し寄せ、今では上場企業に勤務する普通のサラリーマンでもありがたがられる時代だという。

 そして、なぜ人材難が発生したのかという根本理由について、A氏は声を潜めながら解説する。

「そもそもですね、社会的に立派な人のお子さんは、私立の中学に通っています。公立には少ないですよ。近所の小学校なんかじゃ、不動産屋など自営業の父親とか、時間を融通しやすい人ばかりがPTA会長に祭り上げられていますからね」

 昨今、PTAが必要か、不必要かという議論も盛んなようだが、もう結論が出ているような気がするのは弊誌だけだろうか。

(無料記事・了)

2017年5月10日

【無料記事】「明治の墓」も「個人情報保護法」の対象にした「谷中霊園」

yanaka2017-05-09 11.36.30

 東京・谷中霊園は、都内有数の桜の名所として知られる。上野公園からも至近という霊園は、今春も並木道ではソメイヨシノが満開となり、往来の目を楽しませた。

 霊園としての知名度や〝格〟は雑司ヶ谷や青山と並ぶ。いずれも東京都が管理しているが、実際の業務は都の外郭団体である公園協会に任せられている。各霊園で働いている現場職員は、東京都公園協会の職員、というわけだ。

 例えばゴールデンウィークの陽気に誘われて、谷中霊園の付近まで散策したとする。その時、「そういえば、ここに恩師の墓があったんだ」「遠い親戚だけど、墓は谷中霊園じゃなかったっけ?」と思い出したとしよう。

 中に足を伸ばしてみると、霊園は広大だ。どこに目指す墓があるのか、皆目検討もつかない。とすると、多くの人々が管理事務所に向かうのではないだろうか。

 だが訊ねてみても、職員の回答は決まっている。「お教えできない決まりになっております」なのだ。理由は「個人情報保護の観点」だという。作り話ではない。筆者自身が実際に経験したことだ。

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【筆者】下赤坂三郎
【写真】都立霊園公式サイトより「谷中霊園・園内マップ」
https://www.tokyo-park.or.jp/reien/park/map073.html
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「故人」の墓が「個人」情報の保護とは……ダジャレはこれぐらいにして、個人情報保護とは対応を面倒に思った窓口が口実に使ったのかと思いきや、所長でも回答は同じだった。

「私どもはあくまでも東京都から管理を委託されていますので、東京都の指示があればお墓の有無はお教えできます。東京都と交渉していただけませんか」

 筆者が「なぜ教えられないのですか?」と質問しても、結局のところ公園協会が明白な回答を用意しているはずもない。精一杯苦悩し、最後は東京都に下駄を預けてしまった。

 都庁の幹部に問い合わせると、次のような回答だった。

「情報開示請求を行って頂けませんか。開示の決定が出れば、対応せざるを得ません」

 結果は、案の定。存否応答拒否──。東京都では国が定めた個人情報保護法に準拠した運用準則によって、故人の墓が霊園にあるかどうかさえ、ないかどうかさえ、答えない、というわけだ。

 筆者にとって墓参は仕事というと大げさだが、取材の一環として訪ねたいと思っていたのだ。都の対応が、あまりにも興味深いので情報開示請求を行ってしまったが、改めて墓参を希望する理由を説明してみた。

「私が情報開示を求めたのは、谷中霊園ができた直後、明治時代に建てられたお墓ですよ。すでに亡くなって100年以上が経っている方の墓があるかないかが個人情報保護とはどういう了見でしょうか?」

 意味ある回答を都が行うはずもないので、先に進もう。では都立霊園をはじめとする公営霊園は、墓の有無や所在地を教えるケースはあるのだろうか。答えは1基の墓につき1人の問合せだけには応じる。それは墓の管理者だ。

 墓の管理者とは要するに、管理費を納入する者のことだ。具体的には故人の子供か孫といったところだろう。この管理者以外は、たとえ故人の妻だろうが、きょうだいだろうが、全ての問合せに対して「存否応答拒否」と決まっている。

 公営霊園では現在、管理者と連絡の取れなくなった墓の整理が喫緊の課題となっている。団塊の世代など第1次ベビーブーマーが急速に高齢化し、墓地の供給が追い付かないのだ。

 その一方で、たとえ管理者も死亡して連絡が取れなくなったとしても、せめてきょうだいや親類縁者からの問合せに開示するようにすれば、無縁仏・無縁墓の増加に歯止めがかけられるはずだ。

 だが現実は、血の繋がったきょうだいでも、親類でも、問い合わせても答えない。なのだから、管理者と連絡が取れなくなったら、親戚を探そうなどと考えてもいないのだ。これでは本来、無縁ではない墓でさえ、無縁墓と化していくのは当然の流れだろう。

 皮肉なことに、都立霊園の管理事務所は「存否応答拒否」を貫く一方で、霊園に眠る著名人の墓所一覧は用意している。私は厭味の質問を、都庁の課長にぶつけてみた。

「この著名人名簿は、個人情報保護法が成立する前から用意しておられましたよね。故人の生前に、掲載の許諾は得られたんですか?」

 課長は「ご遺族からはもらっているはず、ですが……」と答える。私は質問を重ねる。

「そうでしたら、承諾書の有無だけを情報開示請求してみましょうか。あると仰ったのですから、当然ながら存在するという回答になると思いますが」

 課長は黙して答えない。私は続ける。

「谷中霊園の著名人一覧には、ここに、ある殺人事件の犯人の墓も紹介されていますね。当時は世相を賑わしたということですが、となると殺人事件の犯人遺族からも承諾書を取った、ということになりますね?」

 やはり課長は黙して答えない。

(無料記事・了)

2017年5月9日

【無料記事】日中「貧富逆転」で「中国人妻」離婚急増

china2017-05-09 11.30.07

 群馬県のある農家で起きた悲劇である。今年、70歳になる野菜農家の主は、突如、妻からこんな罵声を浴びせられた。

「わたしのほうが貧乏になっちゃったじゃない」

 農家としての経営は悪くはない。農閑期には旅行にも行き、結婚してから25年、女房孝行はそれなりにしてきたつもりだった。国際結婚。女房は中国の農村から出てきた。それなりに幸せな家庭を築いてきたつもりだった。

 当初は日本語が不自由だった女房も、子供が産まれて保育園に預けるようになった頃から、子供と同じペースで日本語も上達し始めて、細かな意思のやりとりもできるようになっていった。

 やはり周辺に嫁いできた中国人花嫁やフィリピン人の花嫁ら外国人女房たちとも適度に交流し、すっかり日本での生活も板についたはずだった。

 変化が訪れたのは数年前──。

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【写真】中華人民共和国の国旗
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 中国にいた女房の家族らが時折、東京や福岡に「爆買い」ツアーに来るようになった。結婚当初はずいぶんと仕送りもして、電化製品なども折に触れて送っていたが、いまや中国の経済成長は著しく、ついに日本人消費者をしのぐ経済力を蓄えるに至ったのだ。

 かつては十人単位で遊びにきたことがあった女房の親兄弟たちも、今となっては来日しても群馬まで立ち寄ることはなくなった。ツアー旅行のゆえに自由行動ができないためだと思っていたが、女房の叫びを聞けば、事情は違っていた。

「うちが貧しいからよっ。こんな貧しい農家に嫁いだってバカにされてるのっ」

 そこで初めて、中国の農家であった女房の親兄弟は、農村開発によって土地成金となり、いまや都会並みの豊かな暮らしをしていることを知ったのだった。

 あるとき以来、女房はことあるごとにこう言い出す。

「あたしばっかり貧しくなっちゃったじゃない。あたしばっかり貧しいじゃない。こんなに貧乏になっちゃったじゃない」

 もちろん、農家ゆえの労働の辛さがあるとはいえ、決して貧しくはない。トヨタホームで建てた二重サッシの我が家に、家内専用のクラウン アスリートもある。農家としては豊かなほうだと思ったが、中国からの成金ぶりを知らせる便りに、女房はすっかり、日本の農家での生活を「都落ちした貧しいもの」と見るようになってしまったのだった。

 今年に入り、突きつけられたのが「離婚」だった。

 女房はまだ50代だが、夫はすでに70歳。再婚などは、もはやかなうまいと考え寂しくなったが、子供はすでに独立して東京で暮らしている。いずれは農家も自分の代で終わりにしようと考えていたので、なじられ続けるのにも疲れ、同意した。

 日本での生活がすっかり板についていた女房が最後に口にしたのは「ザイサンブンヨ」なる言葉だった。

 結婚してから25年間、働いた分として貯金の半分を寄越せといわれ、しぶしぶ、3000万円を渡すと、女房は去って行った。

 東京にいる子供からの連絡で、その後「元」女房は中国に帰り、株への投資などで大もうけしていると知った。

 その後、あるときのことだった長野の総合病院に行った折、かつてやはり中国人花嫁をもらった農家の主人と偶然にもロビーで顔を合せた。

 聞かれる前にと思い「実は離婚して」と切り出すと「こちらも」という話になった。聞けば、当時、中国に出向いて見合いしたうえで嫁いできたもらった中国人花嫁たちが、今、大挙して故郷・中国へ戻っていっているのだという、そんな話を聞かされた。

 彼女たちのなかでは、ついに「豊かな中国、貧しい日本」になり、かつて日本に来たときのように、富める場所へと移動していったのだろうと納得した。

 中国人花嫁も今は昔。日本を捨てて去って行く。残されるのは、ひとり、年上の日本男子ばかりなり。

(無料記事・了)

2017年4月12日

【無料記事】沖縄で「ハブ&コブラ」の「琉球コブラ」誕生の恐怖

okinawa2017-04-10 11.20.39

 熱帯の楽園・沖縄で、初めてその恐怖の報告がもたらされたのは1992年。場所は本島北部──。

「沖縄島の本部半島東部では、1992年から1994年にコブラ属Najaのヘビが出没し、地域住民に恐怖をもたらしている。」(沖縄生物学界誌98年)

 沖縄県衛生環境研究所ハブ研究室を中心とした大規模な、しかし密やかな捕獲調査の結果、実際にタイコブラ(Naja kaouthia)が捕獲されたことで、沖縄県でも北部の、とりわけ山間部の住民たちは、やはり、と恐怖に震えたのである。

 その危険性を、観光を主要産業に据える沖縄県が大きく訴えることはなかった。

「県はいわんさー。観光客が怖がるからねー。ただでさえ観光客が減ってるのに、怖がることはいわんさー。でも、ハブなんかは怖くないさー。怖いのはコブラとか、台湾ハブとか。血清がないのさー。それに、どうも混血がおるのよー」(地元関係者)

 コブラの生息が確認されてから25年が経ち、沖縄北部の山中では、沖縄産のハブと、台湾産コブラの自然交配が懸念され、ついに新種の琉球コブラが誕生したというのだ。別の関係者が言う。

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【写真】沖縄県公式サイト「ハブ対策の方法」より
http://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/hoken-chubu/eisei/kankyoeisei/33habu/habu.html
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「あれは、ハブではないよ、絶対に。わしらはハブは見間違えんからさ。沖縄のハブは奄美と比べても大きくて、緑が強いんさ。それで、緑色で大型で、それでクビをあげとるんよ。卵みたいに広がった襟みたいなのに、白っぽい模様もあったからさ」

 ハブの展示やコブラのショーなどを行う沖縄ワールドの担当者によれば、通常、ハブの攻撃範囲は体長の1・5倍。ただ、トグロを巻いていない状態では飛びかかれないため、攻撃態勢にないハブは、首さえ押さえてしまえば扱いやすい。

 だが、かま首をもたげたコブラは「ハブと違って、視覚を使って攻撃してくる」ので、素人では捕獲が難しいのだ。

 ハブとマングースの戦いは、現在、動物愛護法の改正で禁止され、沖縄本島では、ハブの最大生息地とされる北部の山間部で、蛇の駆徐目的で持ち込まれたマングースそのものが大量に繁殖しているとされる。

 ところが、マングースは、天敵であるべきハブや、そしてもっともその対抗効果が期待されるコブラに対して、自然界ではまったく向かっていかないのだという。

 現地でタクシー運転手をしながら、2年近くに亘って、このハブラの行方を追い続けている人物が話す。

「住民らも、4月の田芋を植える季節になると、あったかい気候で活発になったハブを相当目撃するんさ。でもそれに紛れて、首の立ったハブとコブラのあいの子見たいなのを目撃しとるんさ。北部ではハブラみたいな混血が相当、数が増えとるのは常識さ。でも、沖縄のひとは蛇には慣れとるからね。訊かれなければなんもいわんさー」

 地元住民のA子さんに連れられ、琉球コブラと遭遇した場所まで案内してもらうことにした。

 場所は、沖縄県による過去の調査でも、もっともコブラの目撃例が多かった、本部半島伊豆見地区。かつて日本軍と、上陸してきた米軍との激しい戦闘に見舞われたその山中で、今は人知れず、血清のない琉球コブラが繁殖しているというのだ。

 咬まれたときのダメージを防ぐため、新聞紙をまるめて、すねに巻きつけ、その上にGパンを履いた。そのためか、足取りは重い。

 目撃したというガマ(洞窟)は、すでに夏場に差し掛かり、背丈ほどに伸びた下草にその行く手を阻まれ、容易に近づくことができない。

 その草の合間、どこから台湾産のコブラ、そして2メートルにも達する沖縄産の巨大ハブ、そしてその2種が混合した、生物兵器さながらの猛毒蛇がこちらを睨んでいるともしれない。

 あと100メートル……50メートル……斜面の脇には小さな水の流れがあり、下草はその湿潤な環境で、さらに丈を伸ばしている。

 先導する地元住民のA子さんは「咬まれても血清はないさー」と呪文のように小さな声で呟きながら、黙々と先へと進む。

 からだ全体を覆う緑色の草の下には、陽は届かない。直射日光を嫌う蛇にとっては、日差しの強い沖縄の日中を過ごすには最適の場所だ。そして、川沿いのじめっとした空気があごをなでる。

 いつ咬まれてもおかしくない──片道30分。目撃の地点まで、これまでの人生でもっとも時間の流れが遅く感じられたのだった。

 捕獲に向け、北谷の大型釣り具店「シーランド」へと向かった。

 数々の網を物色し、もっともヘビ捕獲に適していると目をつけたのが、大型のアナゴ捕獲用の網だった。

 そこに、豚肉など餌を入れて設置しておけば、おそらくコブラが活動するといわれる夜間に捕獲できるに違いない。いまだかつて多くの目撃例はあれども、誰も捕獲に成功したことのない琉球コブラである。

 猛毒性であることは間違いないが、しかし、その牙や体の形状など、不明なことばかりだ。

 かつての県のコブラ捕獲調査でも、従来のハブ捕獲用の器具では対応できないという指摘もあった。網の設置そのものにも恐怖が募る。

 それに、あの高い草が生い茂る恐怖の湿地帯に再び踏み込むのはどうしても避けたい。長い10メートルロープの束をいくつか抱えてきた。

「これに結んで、草むらに入らずに、放ればええねんな」

 かくして、夕方、日暮れときに、作戦は決行されたのだった。どんな餌を好むのか、それさえ不明だった。川べりでティラピアの腐肉を呑みこんでいたという情報もあった。
 
 魚の肉を好むのかもしれない。できるだけ臭いの強いものをと、小間切れの豚肉と、そしてサンマのぶつ切りを網に放り込み、そして、ロープをくくりつけて、川岸沿いの湿潤な場所に放り込んだ。

 翌朝、おそるおそるロープを引き上げてみると、網には何も入っていない。2日目、成果なし。3日目、成果なし。

 結局、捕獲どころか、対面さえ叶わなかった。それにしても、いったい、このコブラの繁殖と、そして、コブラとハブの合体を許した原因は何なのか。ある研究者の次の言葉が背筋を凍らせる。

「80年代から90年代にかけて、観光客のためにマングースと闘わせようと持ち込まれたコブラが、観光業者のところから逃げだしたのが原因だと言われています。業者のところではコブラ同士の繁殖も行われていて、それで、輸入された個体数以外に逃げだした個体数が把握できないんです」

 地元ホームセンターでは、住民たちの命を守るための兵器、ハブノックなる商品が棚に並んでいるが、このハブノック、5メートル先まで直線で殺蛇成分が噴霧されるツワモノだ。しかしながら、人類にとっての〝最終兵器〟さえ、琉球コブラに効果があるのかは未だ不明である。

(無料記事・了)

2017年3月30日

【無料記事】「GI保護制度」「地域団体商標制度」意外な〝危険性〟

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 GIマークというものを、ご存じだろうか。

 非常に簡略化して説明すれば、「地域の特産農作物などで、国が本物だと保証するマーク」ということになる。

 地域で長年培われた独特の生産方法や、気候・土壌・風土などの生産地特性を背景に、高い品質や評価を獲得するに至った農作物や商品が、全国には数多くある。その名称などを知的財産として保護していこう、というわけだ。

 わが国では2015年6月から施行された「地理的表示法(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)」に基づき、農林水産物・食品に係る地理的表示、つまりGIマーク制度の運用が開始されている。

 具体的には「あおもりカシス」「丹波牛」「神戸ビーフ」「夕張メロン」「鳥取砂丘らっきょう」「三輪素麺」など、20品目以上が登録済みだ。

 マークは写真の通り、大きな日輪を背負った富士山と水面をモチーフに、日本国旗の日輪の色である赤や伝統・格式を感じる金色を使用している。

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【写真】農林水産省公式サイトよりGIマーク
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/gi_mark/
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  この制度における特徴は、不正使用の事案が確認された場合、農林水産大臣から除去命令等の措置命令が発出されることだろう。

 実はGI制度自体は中国、韓国、インドなど100か国以上が導入しているという。日本は保護国との輸出入において、互いに産品を保護する方向を目指している。農水省は3月、タイと法規や保護運用などの情報交換を実施すると発表した。

 一方で、地域団体商標制度という似たものがあることもご存じだろうか。

 こちらの管轄は特許庁。ブランド産品などを保護しようと2006年4月より実施されている。地域ブランドの育成に際し、比較的早い段階で商標登録を受けられるようにしたのが主な特徴だ。

 特許庁発刊の「地域団体商標事例集2017」によると、「十和田湖ひめます」「横浜なまこ」「鴨川温泉」「小豆島オリーブオイル」など、2016年末現在で598件が登録されている。

 とはいうものの、農作物などで〝村おこし〟を目指す人々には、正直なところ、「どっちも似たように見えて、よく分からない」と悲鳴を上げてもおかしくないだろう。そこで地域ブランドの知的財産権問題に詳しい、白坂一・弁理士にGI制度と地域団体商標との違いについて解説を依頼した。

「GI制度は、地域の共有財産を保護する制度であり、地域団体商標制度は地域ブランドの名称を『商標権=出所表示』として登録し、その名称を独占的に使用できるようにしたものです」

 キーワードは「独占的」だ。そのため地域団体商標を取得し、更にGIマークを申請するとなると、要注意の重要ポイントがあるという。

「地域団体商標を取得した組合などは、独占的な権利を有しているわけです。一方で、GIマークの取得をすると、そのブランド産品は地域の共有財産となってしまいます。せっかく地域団体商標で得た商標権の行使が不可能になってしまう危険性があるのです」

 GIマークの申請時には、もう1つ〝罠〟があることも肝に銘じなければならない。

「どのような製造、または加工が必要か、その特色を的確に記載して申請しなければ、どんな地域でも、どんな人でも生産できてしまいます。保護してもらうつもりが、逆に参入障壁を下げてしまう結果になりかねません。申請書類の作成は、慎重の上にも慎重を期す必要があるでしょう」(同・白坂弁理士)

 なんのことはない、GI制度には、地域団体商標で取得した権利を弱体化させる側面も存在するのだ。

 しかしながら、こうした問題点を生産者に対処させるのは、本来的には間違いだ。日の丸ブランドを効果的に保護するためにも、国の〝交通整理〟が求められている。

(無料記事・了)

2017年3月29日

【無料記事】「レギンス騒動」の「ユナイテッド航空」が「映像選択ミス」

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【写真】機内で上映された硫黄島の戦いに関する映像(関係者撮影)
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 米ユナイテッド航空が3月26日、レギンスパンツを着用した複数の少女(※編集部註 3人や2人などの報道あり)の搭乗を拒否したため、ソーシャルメディア上で炎上。海外メディアを中心に報道が相次ぐ事態となっている。

 AFPやワシントン・ポストなどによると少女たちはコロラド州のデンバー国際空港で行きの飛行機に乗ろうとしていた。そこで、搭乗口の女性職員が少女らに対し、レギンスを着替えるかレギンスを覆う服を着なければ搭乗を拒否すると伝えたという。レギンスをはいていた別の少女1人は着替えた(※同 5人のうち3人が着替えたとの報道もある)ため搭乗を許可されたという。

 なぜ、レギンスを履いたら駄目なのか?

 ユナイテッド航空の担当者はワシントン・ポストに対し、「一般の乗客はレギンスやヨガ用のズボンをはいていても搭乗は拒否されない」としながらも、「従業員向けの特典の利用者は規則に従う必要があり、レギンスのような服装は規則で認められていない」と説明したという。だがソーシャルメディアではユナイテッド航空に対し性差別的な措置だとの批判も上がっている。

 ユナイテッド航空といえば、実は弊誌の関係者も、なかなか興味深い〝騒動〟に巻き込まれている。利用したのは25日。便名はUA873。関係者が登場したのは成田からグアムの間だ。関係者が呆れ顔で言う。

「離陸後、シートの全面に設置されているモニターを見ると、映画などの映像コンテンツが、たったの3番組しかありませんでした。おまけに、それらの番組は全て、硫黄島での記録映像だったんです」

 内容は、アメリカ軍の戦闘記録。関係者が首をかしげながら再生してみると、しばらくするうちに映像は生々しくなっていったという。

「日本人兵士が捕虜となる映像、日本人兵士がバラバラ死体となっていたり、焼け焦げたりする映像など、相当にショッキングなものが、延々と流されていました。成田発ですから当然ながら、乗客の日本人率は決して低くありません。にもかかわらず、映像コンテンツに関しては選択の自由がなく、硫黄島の戦闘記録を延々と見せるわけですから、明らかに常軌を逸したサービスでした」

 ユナイテッド側も問題を把握したのか「機械の都合で、3本の映像しか見せられない」と釈明の機内アナウンスを行った。しかしながら、次はグアムという行先から、日本人の老夫婦や子供の乗客も目立っていた。彼らは機器の操作に慣れていないため、停止方法が分からず、延々と映像を見続ける姿も見受けられたという。

「周囲を見渡したのですが、日本人乗客は不快な表情を隠そうとしていなかったですね。なぜ、アメリカに向かう飛行機の中で、米軍に日本人兵士が殺される姿を、3時間半にもわたって見せられなければならないのだ、と」(同・関係者)

 レギンス騒動と重ね合わせると、ユナイテッドに何か〝異変〟が起きている気がするのは弊誌だけではないはずだ。サービス面の劣化だけでも利用者は不快だろうが、これが安全面に波及するとなると──考えただけで恐ろしい話となる。

(無料記事・了)

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