【無料記事】「共謀罪」でも防げぬ「複数パスポート所持」の大問題 | イエロージャーナル

 日本が工作員天国と言われて久しい。この背景の1つとして、先に民進党・蓮舫代表の「二重国籍」があるのをご存じだろうか。

 世界には、国内出生者には自動的に国籍を付与する「出生地主義」を採る国が存在する。具体的にはアメリカ、カナダ、ブラジ、アルゼンチン、などといった国々だ。

 例えばアメリカでは、たとえ両親が日本人国籍であり、2人の親類縁者にさえアメリカ国籍を有した人間が存在しなくとも、妻がニューヨークで出産すれば、子供にはアメリカ国籍が与えられる。

 これを利用すれば、パスポートを2つ有することが可能になるのだ。

「そんなはずはない」と誰しも思うだろう。テロや不法移民の対策で、入管の規制はかつてないほど厳しくなっている。複数のパスポートを手に入れた瞬間、捜査機関に目を付けられないほうがおかしい──。

 だが先頃、池袋のパスポートセンターにこんな珍妙な問い合わせが寄せられた。

■―――――――――――――――――――― 【写真】法務省公式サイト「国籍の選択について」より

(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)

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「友人に子供が生まれたのだが困っている。池袋のパスポートセンターで申請した子供のパスポートを取りにいきたいのだが、子供が海外にいて取りにいけない。子供が窓口に行かずになんとか受け取れる方法はないか?」

 パスポートは本人確認での手渡しが原則だ。乳幼児だろうと例外は認められない。やむなく本人が入院中であるなどの理由がある場合は、担当者がそこまで赴き、手渡しすることになっている。

 ところが、この子供はパスポートを所持していないにもかかわらず、海外にいるというのだ。どうやって日本を出国したのだろうか。海外で生まれた子供なら、領事館など現地の日本在外公館で申請し、受領するという方法がある。だが、この子供は池袋で申請したというのだ──。

 調査の結果、ミステリーの謎が解けた。この「友人」は、かつて中国籍を持ち、日本に帰化していたのだ。

 そして親は中国と日本のパスポートを2通所持。子供は中国のパスポートだけを持っていた。親の帰化に伴い、子供にも日本のパスポートを与えようと池袋で申請したのだが、事情があって中国に帰る必要が生じた。そのために親は日本のパスポート、子供は中国のパスポートで出国した。

 国籍法に詳しい関係者は、「2国のパスポートを持つことを合法とは言えませんが、違法というわけでもないのです」と説明する。

「日本人を例にとりましょう。アメリカで生まれた日本人は、アメリカと日本の二重国籍になります。22歳までに国籍を選択する必要がありますので、日本国籍を選んだとします。ではアメリカのパスポートを返納しなければ、日本のパスポートを取り上げられるかというと、そんなことはありません」

 蓮舫代表のケースでも垣間見えたが、そもそも二重国籍の人間が、国籍を1つに選ぶのはまだしも、もう1つを「離脱」する手続きを行うかは任意というのが実態だ。

 ちなみに検索すれば、二重国籍だった日本人が、外国籍を離脱した経験を綴ったブログを見つけることができる。相当に大変な作業のようだ。これで怖気付く人がいても、全くおかしくない。

 話を元に戻せば、少なくとも日本において、2つのパスポートを保有していることの法的罰則は存在しない。国籍法で「日本国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言」を行えと定めているだけだ。日本とアメリカで連絡を取り合い、「2つのパスポートを所持していないか」などとチェックするシステムも存在しない。

 よって、二重国籍の人間なら、2つのパスポートを取得することは比較的、容易なのだ。それにしても、これだけテロ対策で世界的に入国管理が厳しくなっているご時世に、ずいぶんと世界はザルな制度を運用しているものだ。パスポートというシステムが制度疲労を起こしていると見ることは可能だろう。

 それにしても、ある時は中国人、ある時は日本人、と成り済ますことが可能なのだから、スパイにとっては──民間ベースの産業スパイであっても──極めて優先順位の高い関心事となる。

 更に深刻なのは偽造パスポートの問題だ。偽造において最重要なのは、パスポートの素材だ。複数のパスポートが容易に発行しうる状況では、完全な本物という、またとない素材が闇市場に流出するリスクを増加させてしまう。

 実例もある。1987年に発生した大韓航空機爆破事件で、金賢姫ら北朝鮮籍の実行犯らが日本の偽装パスポートを所持していたことは記憶に新しい。彼らがどのようにして偽装パスポートを作成したかといえば、本物を無断借用したりしている。

 スパイという極端なケースでなくとも、特に日本との二重国籍は〝権益〟に喩えられるほど旨みがあるという。フィリピンやタイなど、東南アジアに詳しい関係者が指摘する。

「日本国籍が憧れの対象となっているのは、日本の医療制度が充実していることも大きい。最先端の医療が、これだけ安い値段で受けられる国は、世界のどこを探しても他にはない。つまり日本人であることは、世界一幸せだということを意味する」

 日本人と結婚し、帰化を目指そうとする動きが生じるのも納得だ。おまけに国籍法が禁じているとはいえ、母国の国籍を喪失しなくても済む可能性さえ残されている。チャレンジする価値は充分にあるだろう。  

 更に驚愕の事実もある。さるブラジルの邦字新聞の社長は次のようにして現地記者を確保しているという

「ブラジルで就労ビザはなかなかおりない。だから、うちの記者は日本から来て、現地の女の子と結婚して子供をつくっちゃうんだ。子供はブラジル国籍が取れるから。そうすると、親もブラジル国籍が取れる。就労ビザよりもそれが一番早い」

 これも日本国籍を喪失しないという安心感があってのことなのは間違いない。

 再び〝スパイ〟の話に戻れば、先頃、暗殺された金正男氏も、ずいぶんと偽造パスポートで日本に入国していた。日本における不法入国の「水際対策」に疑問を抱かれても不思議はない。共謀罪やらテロ対策を声高に謳う前に、まずは足下のガードから守ってはどうだろうか。

(無料記事・了)